長崎の教堂会とキリスト教信者の島々や集落、そして信仰者たちを撮った写真展を見た。
世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」をテーマにした写真展。
世界遺産の数々を丁寧に追いかけ、穏やかなカラー写真に活写。写真家のプロ意識と信仰への畏敬が1枚1枚に滲んでいる。
JR長与駅ホールで写真展を開いているのは地元在住の写真家、池田勉さん。
1942年生まれで、三菱造船で働きながら写真を趣味とし、数々の公募展で受賞歴がある。日本写真家協会会員。「長崎街道」「肥前百景」など写真集も多い。会社退職後は人生を写真活動に絞りプロ宣言。内面表現が多彩になった。被写体が生き生きと訴えてくるものは情念が切り取った自然崇拝の顕現した様々な容姿だ。
同世界遺産関連の写真集はあまた市中の書店に出回っている。池田さんら県内で活躍する写真家だけではなく、国内外を駆け回る名のある写真家たちもそれぞれの視点で禁教期の潜伏キリシタンの歴史を今に伝える遺跡や教会群、キリシタン集落などを撮っている。
今回の写真展には「原城跡」「春日集落」「中江ノ島」「天草の崎津集落」「外海の大野教会」「出津教会」「久賀島の旧五輪教会」「大浦天主堂」などなど、多彩な被写体を巧みな構図で切り取り、それぞれの置かれた自然環境と長い歴史を表現。写真家の意図だけではなく、自然な心の在りようまでが読み取れて、見飽きない写真展となっている。
池田さんはカトリック信者ではない。だが、画面に信仰の息吹が静かに漂よう。これは被写体が発するアニミズムの気と交感する写真家の素朴な心が作品に定着しているからだろう。
潜伏キリシタンが信仰したのは八百万の神のひとつであり、カトリックでは、もはやなかった。日本古来の多神教の中で形成された独特の神であり信仰だった。その大もとをたどれば、自然信仰・アニミズムに行き付くのだろう。
日本人の信仰の歴史、在りようを考えさせる写真展でもある。
〝古里の写真家〟池田勉が撮った今回の世界遺産写真展だが、鑑賞者の興味は彼の撮った他の被写体ー街道や古民家、自然や民家の風景にも及ぶ。
長い写真家人生、お疲れ様。
プロとなった記念の写真展を近いうちに開いていただき、ぜひ、長与のファンの励ましの集いを開いてほしいのものだ。本写真展は24日まで。無料。