美術作品であれ文芸であれ音楽であれ、作品を楽しむということはじっくりと何度も鑑賞(観賞)することではないか。で、じんわりとでも感銘が生まれてくれば、次には「どうして、どこに感銘したのだろうか」と納得するまで、また鑑賞を繰り返す。自分と個別作品との関係が生まれてくる。
芸術作品を、押し頂いて見たり聞いたり、読んだりは、芸術を楽しみ感受する姿勢ではない。自由な心で鑑賞すること、鑑賞とは主体性が生み出す行為であり、まさに作品と個人が一体となる瞬間である。
作品には「無題」なる名も含めて作家によるタイトルがあるが、感銘をつかんだ鑑賞者こそが、その作品のタイトルを付す資格を有するのだ。タイトルが生まれるまでの経過こそが、「鑑賞」から「解釈」への質的転換、鑑賞者の鑑賞者としての高まりだろう。
美術展で私は可能な場合、こっそりと作家に提案している。鑑賞者に作品のタイトルをつけてもらったらどう? 作品名を募集しようよーと。芸術を楽しむひとつの方策ではないだろうか。以上、無料の画廊、古本屋めぐりを趣味とする私からの提案でした。