都知事候補者の中にそういう主張をしている者がいた。
金持ちを優遇することで、投資や消費を喚起する結果、経済のパイが拡大し、結果として庶民に恩恵が回るという主張だ。
この方法は実行が簡単だ。例えば累進課税から比例課税にするとか、相続税の廃止、法人税率の半減などを行うだけでよい。
勿論、短期的には税収は大きく減る。穴埋めは国債発行でするか、中流層に課税強化するかのどちらかしかない。国債を大量発行する金利が上昇するため、金融市場や事業、住宅取得に影響が大きいので、中流層課税になるであろう。
中流層は大変だが、政治はこう言えばいい。「今は苦しいが、我慢すれば経済のパイは拡大するので、貴方がたは必ず幸せになります」。
さて結果はどうだろう。勿論、金持ちは益々金持ちになる。彼らの敵である税金が減る訳だから、手取りが増えるからだ。
では経済のパイは拡大するかというと・・・・残念ながら無理だろう。幾ら金持ちが伊勢丹や三越で高級品を買ったとしても、一般庶民の消費金額には敵わない。消費の多くは食費、日用雑貨、光熱水費、家賃などで占められているのだ。庶民に対して増税すると、確実に消費金額は減る。金持ちはお金が余っているので、一部しか使わず、後は投資か貯蓄に回す。
だから金持ち優遇で景気拡大は無理なのだ。できるとすれば、ドバイのように外国から資金を引き入れるぐらいだ。日本でそれができるだろうか?日本人はフィデリティやブラックロックなどの外資系投資信託を買ってアメリカ等に投資しているぐらいだから、金持ちの投資も日本企業にされるとは限りませんよ。成長する国に投資した方がリターンがいいですからね。
ま、結局はヘリコプターマネーと一緒で百害あって一利なしということだ。仮に効果があっても何年先になるか分からない。いつ来るかやってくるか分からないのを待てますか?先に寿命が尽きているかもしれませんよ。
金持ち優遇の主張をしても資金の循環サイクルまで言及しないと単なる絵空事だ。これって将来の売上増加を前提に予算を作成する企業と同じです。不確かな将来を何の具体策もなく当てにするという不思議。唐揚げ屋や餃子屋が毎年10%成長するという事業計画書を作って銀行に融資の申し込みにいく人と似てますね。