過剰敷地の土地評価 | 猫好きのブログ

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 ショッピングセンター敷地があったとしよう。土地が有効利用されているように見えず、半分の土地が空閑地になっている。これは最有効使用と言えるだろうか?

 

 そもそも何のため、企業が無駄な用地を取得しているかを考えなければならない。結論から述べると企業は将来の増床を見込んでいる訳だ。

 

 店が繁盛して必要になった時に土地を追加で買うとしよう。この時、地価は上がっているかもしれないし、既に他の用途に利用されていて、売って貰えないかもしれない。

 

 企業は最初から土地をフルに利用するのはリスクがある。販売不振だと建物はスクラップになるからだ。建物を少しずつ増床していけば損失を抑えられるし、不要の敷地部分を切り売りすることができる。

 

 この考えは金融工学のオプションに通じるもので、実物を原資産とするためにリアルオプションと言われる。

 

 一般に不動産鑑定では需要があるにもかかわらず土地の有効利用が低いと最有効使用ではないと判定するが(例.高層マンション街の中のアパート用地)、将来の先行きが不透明のため、敢えて投資を控えている場合は、必ずしも最有効使用を欠くとは言えない。

 

 駅前でビルを建てた方が賃料が入るのに月極駐車場にしている土地も同じだ。今ビルを建ててしまうと、空室リスクを恐れ、リスクの低いアパートを建築してしまうかもしれない。もし経済環境が変わり、マンション需要が高まると高層マンション向きの土地に変わるが、建替えとなると取り壊し費用が掛かる上に残債の全てが損失になってしまう。だから月極駐車場で模様眺めして、経済の方向性が見えてから建築する方が合理的ということである。

 

 そのように考えると更地の最有効使用は低収益の駐車場というのは納得いくであろう。年利数%で回し、高層化可能な経済環境になった時に建築に着工する。ならなければ、駐車場を解約して更地のまま売却する。

 

 勿論、その間、地価水準が下がれば損失が発生するかもしれないが、損失額は低く抑えられる一方で、高層化により大きな収益を得ることが出来る。

 

 ただあまりにも長い期間保有すると含み損が発生し、売れるに売れなくなる可能性もあるので要注意だ。地方の工業団地には売れたにもかかわらず、ペンペン草が生える無駄に広い土地があるが、あれは将来の拡張用に確保したのであろう。

 

 ところが、海外への工場移転や国内工場への集約が進み、国内の工業地が余ってしまい売るに売れなくなった。その結果、塩漬けになっているのであろう。

 

 ついでながらもう一つ。過剰敷地でも切り離し売却が容易なケースだと減価はないだろうが、敷地の真ん中に建物が鎮座している場合、分割が難しく、しかも自社で拡張する予定もないとすれば、死に地となるので、大きな減価が発生するだろう。鑑定評価基準で言う、敷地と建物の不適応というやつだ。