自動車ディーラー営業所の鑑定評価 | 猫好きのブログ

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資格試験とその応用

 不動産としての取引は非常に少ない。どちらかというとM&A(株式売買)を通じてであろう。

 

 鑑定評価手法としては原価法と賃貸収益還元法になるが、両方ともに問題がある。

 

 まず原価法。

 

 新築か築浅なら妥当性が高いだろうが、築10年を超えると心もとない。取得コストや物理的劣化以外の要素が出てくるからだ。

 

 仮に土地2億円、再建築費3億円(耐用40年)とすると、築10年だと幾らになるだろうか?

 

 土地2億円+建物3億円×残存30/40=4.25億円

 

 収益性の裏付けがないため、これが妥当な値段か分からない。

 

 

 

 次に賃貸収益還元法

 

 ディーラー営業所は整備工場、ショールーム(店舗)、事務所に分かれているので、賃貸することを想定し、周辺の各用途の賃料を面積案分すると、賃料が分かり、これから運営経費を控除し、利回りで還元すると収益価格を求めることができる。

 

 だが周辺の各用途の建物とディーラー営業所との間で代替関係がなければ、この理屈は成立しない。周辺のオフィス相場が坪1万円でも他業種の企業がディラー営業所を借りる候補としなければ、賃料が異なる可能性がある。

 

 例えば商店だと整備工場は不要なので、いくら自動車ディーラー営業所の賃料が安くても借りようと思わないはずだ。

 

 このよう考えると単純に合成賃料とすることは出来ない。問題は物件に対してどのようなニーズがあるかであろう。

 

 とすれば自動車ディーラー営業所のユーザーの第一は同業者のはずであり、他は整備の必要なレンタル業者、工場部分を倉庫に転用可能な卸売業者等が候補に上がろう。勿論、自動車ディーラー用に作られた建物なので、同一用途を前提とした価値が最も高いと考えられる。

 

 次に考えることは、果たして自動車ディーラーとしての事業が成立するかだ。不動産評価では直接経営診断に踏み込むことはないが、一般的な知識はあった方がよい。

 

 近年の自動車販売業はセールスマンが訪問するよりも来店型が多いと思われる。今の時代、7割の家庭が共稼ぎなので、日中、家にいない人が多いため、プッシュ型セールス効率は良くないからだ。

 

 それよりも休日に家族揃って店に来店して貰い、試乗したり、現物を見せて説明した方が成約しやすいであろう。

 

 とすれば、自動車ディーラー営業所も商圏、立地が重要になり、小売店舗と同様な売上想定が可能になる。

 

 具体的には商圏内の潜在的な購買力を計算し、次に同業者との力関係を分析する。立地産業は概ね同業者との関係でポジショニングが決まって来るので、推定売上が分かる。後は売上に応じた経費を計上して、負担可能な賃料を計算すればよいだろう。

 

 これが周辺用途の相場賃料よりもずっと低ければ相場で借り手が現れず、ずっと高ければ相場と関係なく高い賃料でも借手があるはずだ。代替性が乏しい物件は相対的な関係で数値が決まってくるものだ。

 

 なお細かく検討する箇所は色々ある。例えば整備用の駐車スペースはどうか?想定売上に比べて整備工場の能力は十分か?顧客が認知できる場所か?敷地への出入りの便はどうか?展示車両のスペースは十分か?車両動線が重ならないか?(顧客用、整備車両用、試乗車用等)。

 

 敷地、建物条件の変更は難しいので、制約条件が売上、費用の構造に影響を与えることになる。