二等立地の複合業態店 | 猫好きのブログ

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資格試験とその応用

 戦後の東京でコタツの建具メーカーがカニ料理店に業態転換して成功した。

 

 場所は工場の跡地。商業地でないため、平凡な飲食店なら集客が難しいということで、来店目的性を高めるためにカニ料理店にした。当時、カニ料理店は非常に珍しかったため大人気となり、この会社は多店舗展開を始めた。

 

 この会社は土地を取得して店舗展開をしたが、東京の地価が高くなりすぎて、二等立地であってもカニ料理店単独では採算が厳しくなってきた。

 

 そこで会社は建物を高層化し、下層階をカニ料理店、上層階を別業態の飲食店にしようと考えた。

 

 その後、どうなったのかのは分からない。この種の論点は現代にも通じるものであるので検討に値する。

 

 建物に別業態を入れても二等立地なので、カニ料理店のような来店目的性の強い業態にしなければ、赤字になりかねない。不動産鑑定の言う最有効使用は主に土地の効率的利用の観点から検討されることが多いが、実際は業種、業態の適合次第では高層化すると逆にマイナスになりかねない。

 

 最適業態があったとしても、事業者にそれを実現する能力がなければ上手くいかないものだ。自分で出来なくても強力テナントを誘致する力があれば良いのだが、これも中々難しい。

 

 一等地であるならば市場参加者はディベロッパー、家主、テナントいずれも実力者なので、実力があることを前提に土地利用計画を立てることが出来るが、二等立地でしかも土地所有者に業態展開・誘致能力がないと机上の空論で終わってしまう。

 

 

 だから物理的に高層化可能でも低層建物を選択してしまいやすい。では地価はそれほど高くならないのではないかという疑問が出るが、他の用途、例えばマンション需要が大きければ、競合により地価は高くなってしまう。また将来の発展可能性があると、現状の収益性が低くても土地を高く買い進む者が現れ、それに対抗するために事業者は高い土地を買わざるを得なくなる。

 

 このカニ料理屋は1978年当時に書かれた本によると、東京で最大規模を誇り、日本全体でも大坂のかに道楽に次ぐとあるが、検索しても出てこない。倒産したという情報もある。