移動食品スーパーは根付くか? | 猫好きのブログ

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 徳島発の移動食品スーパー事業、とくし丸が凄い勢いで伸びている。

 

 過疎地だけでなく、大都市の住宅街にも出現している。それだけ買い物難民が増えているということだ。

 

 大都市は意外な感じがするが、車社会を前提に郊外に家を建てた人は、高齢で運転しなくなると生活が不便になる。それほど郊外でなくても首都圏には坂道が多く、買い物袋をもって歩くのは大変だからやはりニーズがある。

 

 全国の大手、中堅スーパーがとくし丸を活用している。この事業は配達する者が自営という形で専用トラックを運転して、運営会社と提携しているスーパーから食品を仕入れて、売りに行く。

 

 何を仕入れるかはドライバーの自由で、売れ残りは返品できる。経費を引くと年間300~600万円ぐらいの所得が見込まれるそうだ。

 

 スーパーでも本来買い物に来れない人に販売できる訳で、しかも食品だから購買頻度が高く、まとめるとかなりの売上になる。

 

 良いこと尽くめのようだが、スーパー従業員の口コミを読むとそうでもないようだ。

 

 ドライバーが積み込む前に店の商品をピックアップするが、店員が立ちあい、伝票処理を行わなければならない。現地で販売すると機械で売上集計できるものの、売れ残り(結構多いそうだ)を再び売場に戻し、ここでも伝票処理を行う必要がある。店頭に比べると作業が煩雑なのだ。

 

 品目だけで300、商品の点数は1200~1500点にもなるそうだ。これだけの商品のコードを端末機でスキャンし、バーコードのない商品(野菜等)は手作業で入力する訳だから店員にとってはかなりの負担だ。

 

 宅配と異なるのは売れるかどうか分からない点にある。宅配は注文を受けてからピックアップするので一度の作業で済むが、移動スーパーはこうはいかない。しかもドライバーは社外の人だから、どうしても手続きが必要となる。

 

 返品といっても、品痛みもあるだろうから、一品ずつ確認する手間も発生する。ドライバーの不注意によるものなのか、時間経過による劣化なのか等。

 

 

 しばしば高が●●(この場合では、高が配送、高がピックアップ)という言葉が出ることがあるが、自分の家の中だけで完結するものと異なり、他人の手を通すと、高がでは済まないものだ。

 

 例えば本件の場合だと、生鮮食品を扱うので鮮度劣化の問題がある。冷蔵車を使っていても販売時点では炎天下の中、客が商品を手に取る訳だから、かなり気を使う。

 

 TV番組を見ると、おばあちゃんが運転手が来たことを喜び、ドライバーを孫か子のように扱っているが、運転手はお客の相手と商品状態のチエックを同時にしなければならない。

 

 お菓子や缶詰なら兎も角、肉や刺身までも販売しているのだ。しかも移動スーパーだから客も数十人集まるかもしれない。

 

 スーパーの店員の書き込みを読むと平気で返品しやがってという意見があったが、商品というのは面白い性質があり、絞り込んでスカスカにすると逆に売れなくなるものだ(客の殆どこない個人食品店には散見される)。

 

 だから見せ筋としての商品が必要になる。また選択肢が多い方が客に喜ばれる。果物がバナナ1種だけだと客は欲しいと思うだろうか?毎回バナナですよ。移動スーパーもスーパーである限り、ある程度の幅のある品物揃えが必要になる。

 

 もし返品制度がなければ、ドライバーのリスクが大きくなり、商品を絞り込み→売上の低下→所得の大幅な低下→廃業→移動スーパー事業の頓挫 ということになるだろう。