アウトレットモールの鑑定評価 | 猫好きのブログ

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 日本のアウトレットモールは大都市近郊の市街地に立地していることが多いが、本来、アウトレットモールは地価の低い場所に作られるものである。

 

 場所が悪くても一流品を低価格で購入できるということで吸引力が高いからだ。それに日常空間から遮断された方が、レジャーの場になりやすい。

 

 言わばアウトレットモールは立地創造型不動産なのだが、不動産鑑定を行うに当たっては問題が生じることになる。

 

 例えば原野の一角にアウトレットモールが出来たとしよう。土地の単価は非常に安く、建築費も平家の簡素な建物なのでこれも安い。従って原価法で求めると価格が低く出るはずだ。

 

 他方、収益還元法では高く求められる可能性がある。賃料を売上歩合、定額制のいずれとしても周辺の家賃水準よりは遥かに高額だからだ。

 

 仮に

積算価格  20億円

収益価格  56億円

 

 と出たら最終的な評価額を幾らにすべきだろうか?

 

 まず収益還元法から見てみよう。アウトレット事業が失敗した場合、周辺が原野だと地価は原野価格に戻るだけであるから、この点で市街地立地とは異なる。市街地の場合、他の用途に転用できるため、機会費用が価値の下支えをしているのに対し、原野のアウトレットモールは機会費用がゼロに近い。更に建物取り壊し費用も多額になるため、価値がマイナスになる可能性すらある。

 

 このリスクを還元利回りで反映すれば、一般的な商業施設よりもかなり高くなるであろう。

 

 仮に家賃が年間坪4万円、賃貸面積10000坪とすれば、年収は4億円、経費を30%とすると、純収益が2.8億円、商業施設の平均李的な還元利回りを5%とすれば、収益価格は56億円となる。

 

 だが原野のアウトレットの場合、空室が増えだすと崩壊が進むリスクが非常に大きい。何故なら中小のファッションテナントが集積することでパワーを持つため、集積が低下するほど吸引力が下がり、更なる空室を発生させるからである。

 

 現在堅調であってもこのようなリスクを持つために利回りに織り込む必要がある。恐らく利回りは倍の10%になるであろう。とすれば収益価格は28億円。

 

 

 

 

 次に原価法を見てみよう。

 

 原野の相場から土地価格を5億円、建築費を15億円としよう。ここで考えなければならないのはディベロッパーの利潤だ。この種の事業は立地創造型なので、ディベロッパーが関与するものであり、ディベロッパーの利潤が土地に付加される。

 

 どのようなコンセプトにすればよいか、ターゲットは誰か、業種構成はどうか、具体的なテナントをどうするか、どのように誘致するか、オープン後の運営をどのようにするか等だ。

 

 地権者は通常、これらのノウハウを持っていないから、専門業者に依頼することになり、恐らく企画からオープンまで億単位で掛かるであろう。既成市街地だと地価が高いのでディベロッパー報酬の割合は低いだろうが、本件の場合、ディベロッパー報酬が地価を上回る可能性がある。

 

 仮にディベロッパー報酬を5億円とすれば、

 

 土地 5億円 + ディベロッパー報酬 5億円 +建築費 15億円= 25億円 となる。

 

 

 修正すると

・積算価格  25億円

・収益価格  28億円

 

 修正前は倍以上の差があったが、結構接近した。最終的には25と28億円の間に収まるだろう。

 

 

 

 では次にオープンして盛況だったことを想定してみる。その場合、鑑定評価額はどうなるか?

なお、説明の便宜上、建物に経年減価はないものとする。

 

 まず原価法だが、土地価格は周辺の原野価格とは異なっているはずだ。何故なら都市的な土地利用収益が既に顕在化しているからで、土地価格を類似事例の取引価格から直接求めることができる(勿論、素地価格+ディベロッパー報酬からでも可能)。この場合、10億円を越える土地価格になる可能性が高い。その結果、積算価格は30億円、35億円になっていくかもしれない。

 

 次に収益還元法だが、投資家は施設経営が堅調なことを確認すると彼らの投資リスクは低下し、還元利回りも低下する。市街地のショッピングセンターを基準に考え、その結果、8%となったとしよう。

 

 収益価格=純収益2.8億円÷還元利回り8%=35億円 と収益価格も上昇する。

 

 実際は、施設ごとの個別性の反映、データ収集上の問題、利回りの十分な説明の難しさがあり、こんな簡単にはいかないものだ。いずれは生成AIが解決してくれるだろう。