企業潜入取材 | 猫好きのブログ

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資格試験とその応用

 ジャーナリストの横田増生さんという人がいる。アマゾンやユニクロにバイトで潜り込み、働きながら現場の実情を本にした人だ。週刊誌共々ユニクロに名誉棄損で訴えられ、最高裁まで争い、横田さん側が勝訴した。

 

 この種の潜入取材は日本では殆どないという。欧米では大手メディアの記者が交代で潜入取材していているのだが、日本ではずるい、卑怯だという文化的価値観があるのが理由だと言う。

 

 1970年頃、鎌田慧さんがトヨタ工場に潜入して期間工として働いた体験を書いた「自動車絶望工場」は非常に話題になった(今でも増版されている)。

 

 大竹壮一賞の候補にもなったが、正々堂々と取材した訳でないからといって候補から外されたとのこと。

 

 だから日本のメディアは表向きの情報でしか分からず、見て見ぬ振りになりやすいのだろう。勿論、ネットではブラック労働環境の体験談があちこちに出ているが、所詮は匿名だし、検証も出来ない。恐らくそういうものだろうと思っても、大企業を相手にするためには、それなりの証拠が必要なので、材料不足のまま書くと訴えられかねない。

 

 こうして放置している内に犠牲者が増え、行政当局が動いたり、裁判が起きたりする中で実情が明らかになっていくケースがある。

 

 でもそれは氷山の一角に過ぎず、大抵は泣き寝入りになる。一言でまとめると、真実はどうかよりも力関係で決まるということだ。

 

 そういう意味では横田さんの潜入取材は価値があると思う。彼はそこそこ名前が知られているので、奥さんと偽装離婚し、苗字を変えて潜入取材したそうだ。今の時代、名前はネットで検索するとばれてしまうからだ。

 

 なるほど。自称桐島容疑者もそうだが、この管理された情報社会でも抜け道は色々あるねえ。とはいえ、そこまでやる人は殆どいないだろうが。