変な夢を見た。
都会に住んでいた男が趣味を生かすべく、地方に移住し猟師となったが生活は不安定。
そこで狩猟教室を開いて、指導料を取ることを思いついた。
目論見は上手く行った。都会から生徒を呼び寄せて、宿泊と研修を行い、猟師のスキルを伝授する。これで研修を受けた人は猟師になれるはずだ。受講生が来ると研修を、来ない人は狩猟をやり、男の経営は安定した。
その後、地元の人がそれを見て受講を始めた。研修が終わると、受講生たちは狩猟で生計を立てようとしたが、やはり不安定だ。
ちょっと考えたら分かるだろう。そんなに狩猟で楽に稼げるのなら、狩猟採集主体の縄文時代から農耕主体の弥生時代に移行することはなかったはずだ。
ましては現代では猶更だ。いくら自然が豊かな町でも食料として販売できる野生動物がそれほどいるわけがないではないか。
やがて狩猟家となった人達は男を見習って、同じように都会の人相手に狩猟教室を開き、指導料を取ることを始めた。男が受講生を増やすために巧みなセールストークをすることで競争相手を作り出してしまったのだ。
数に限りがある野生動物と異なり、アウトドアブームの今、都会には狩猟に憧れる人が多いから、仕事は容易に取れた。
こうして村には狩猟そっちのけにして狩猟教室を開く業者が乱立するようになったという話である。
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不思議な夢だったが、この夢には面白い寓意が含まれている。
事業コンサルタントなる者が巷に溢れているが、何故そのような素晴らしいノウハウを持っているのなら、コンサルタント本人が事業をしないのかという疑問だ。
結局は事業がレッドオーシャンだから知識を生かして事業コンサルをやった方が稼げるだけではないからではないか。
これに気付いた受講生も事業そのものよりも事業コンサルタントになる道を選び、世の中はコンサルタントだらけになってしまうというオチだ。
事業は狩猟と変わらない。努力しても報われるわけでないし、直ぐに市場は飽和状態になってしまう。他方、事業コンサルという知識産業は起業に憧れる人や不振企業が要る限り有望である。
事業経験がなくてもコンサルタントになれてしまう不思議。それが別にいけないとは言わない。商業高校の教師だって商売の経験がないのに商業を教えているではないか。
だが高校教員が商売の理論を教えるのに対し、コンサルタントは商売のノウハウを教える点で異なっている。商売そのものをやったことのない者が教えて受講者の経営が上手くいくのかという疑問が出てくる。
コンサルタントが大企業出身者でそこで得たノウハウを中小零細企業家に教えるのなら価値があるかというと、必ずしもそうとは限らない。
大企業と中小企業とでは置かれている環境が違い過ぎるし、施策を実行できる人材の差も大きいからだ。コンサルタントが折角ノウハウを教えても絵に描いた餅になる可能性がある。
このように考えるとコンサルタント業自体も狩猟のようなものである。指導した企業が成長してコンサルタントと同じレベルになると依頼をする必要がなくなるため、コンサルタント氏は焼き畑農耕のように新しい客を常に探し求めるかもしれない。
これを回避する方法は商業高校の教員のように素人のみを対象に理屈を教えるだけの業務に特化することだ。相手は企業家でなく、一般人の素人だから幾らでも希望者がいる。頑張れば貴方も企業家になれますよと夢を見せてあげるのである。
こうして起業コンサルタントが乱立し、事業経験のないコンサルタントばかりになるというオチで終わる。