「マチネの終わりに」の終わりに | 東京夜時

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宇都宮秀男によるコラム。月木更新。

フルタ丸「梟の服」50分ワンカットの幕が降りた。
特別な朝だった。

午後から機材手配など準備が始まり、終わったのは早朝だった。

見慣れたはずの下北沢の景色も、この日ばかりは特別に見えた。

みんなが撤収作業をしている最中、ふと1人、外に出てみると夜明けの光がまっすぐに道の向こうから差してきた。



フルタくんも同じ構図でその空をTwitterにアップしていた。

100人近い支援者のおかげで生まれたフルタ丸の挑戦。

「美女が出演して、その美女からの何かリターンがあるわけでもないのに・・・」
とクラファン向きではないさまざまな条件もあったが、
フルタくんは最初から自信に満ち溢れていた。

「こういう大事な時って、うまくいく自信があるんです」と。

その言葉どおりだった。
途中何度も心折れそうな場面はあったが、
50分役者もスタッフも一度もミスを犯せない難条件を突破した。

僕はモニターを見ながら最後のほう泣きそうになっていた。
フルタくんのむき出しのエネルギーを見たからだ。

大人のむき出しのエネルギーってカッコいいんだ。

僕はプロデューサーなので撮影までの準備が全てであり、撮影時はむしろスタッフのみんなを信じて見守ることしかできなかったけど、その奇跡を間近で見ることができて、幸せだった。

ソワレなのかマチネなのか分からない
誰もいない、そしてこれから世界が目撃していく
1つの公演を終えて、
その終わりに、諸々の撤収作業を終えて
一番最後に残ったのが僕とカメラマンの各務真司くんだった。

何を話したのかも覚えてないくらい朦朧としていたが、
データのバックアップ作業をとりながら話していた。
何というか、いい時間だった。

最後に握手したのは覚えている。
やって良かったと本当に思った。

もちろん、これで終わりではないので、
またポスプロ作業を頑張りたい。



ちなみに昨日、映画「マチネの終わりに」を観た。

ストーリー展開上のいろいろなツッコミどころはあるものの、
ラストの石田ゆり子の駆けていくシーンがあまりに美しすぎて
それを観ただけで満足したところはあった。

そして、その夜、実は同じ回に石田ゆり子さんも来ていたことがわかった。


(本人のInstagramより)

なんてことだ。石田さんの2つ後ろの席で観ていたとは。



宝くじに当たったような、外れたような不思議な気分だ。

でも「未来が過去を変える」という本映画のテーマのように、
まさに急に特別な映画鑑賞の時間になった。