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民間企業の給与水準への政府の介入
アベノミクスでは、インフレターゲットを定めて、
政労使の話し合い、すなわち、政府の介入により、民間企業の給与水準を引き上げようとしています。
ところで、
資本主義では、マーケットに対して自由な活動と競争を確保することが、政府の役割となります。
政府は、マーケットに対して、何も干渉しないというのが原則です。
しかし、
一方で、市場のマーケットメカニズムの失敗が発生した時点では、
政府は介入し、マーケットメカニズムの機能を再生させ、市場競争を維持する必要があります。
なぜなら、
自由な市場競争という仕組みこそが、
資本主義の国々が成長を続けることができる原動力となっているからです。
これが、平等と中央計画経済の仕組みが特徴の、
社会主義の国々より勝ることは、歴史的に証明されているわけです。
それは、
自由競争により、切磋琢磨し、工夫し、努力して、結果を出した人が、報われるというシステムが、
人々が、頑張ろうとするインセンティブにつながるからにほかなりません。
政府がすべきことはマーケットメカニズムの導入では?
民間企業の給与水準の引き上げに、政府が力技で介入したところで、
その企業の収益構造が改善できなければ、給与を上げることは、
経営者にとってもかなり難しいことであると考えられます。
株主側から考えても、
人件費が増大すれば、企業パフォーマンスが下落することとなるため、株価が下落することとなり、結果として、日本企業の株価が全体として下がってしまうという事態にもなりかねません。
結局、
同一業界の同一企業に人材がとどまっていれば、
国民全体としての給与水準が上昇するということは、非常に難しいことなのではないかと考えています。
したがって、
国民の給与水準を引き上げるには、収益構造の固定化した、既存の業種から、
高収益構造をもつ、成長産業への人材の移動が必要になるのではないかと考えています。
では、どうするべきなのか?
考えれる一つの方法は、
比較的、収益率の悪い企業から、収益率が良く、給与水準を高く設定できる成長業界の企業へ、
人材が容易に流動化できる、人材マーケットのしくみを政策的に構築することです。
つまり、マーケットが機能していないのであれば、
政府が主導でマーケットを構築してしまう方が良いと考えています。
日本の転職市場について考えてみると、
転職マーケットにおいては、
市場メカニズムが成り立っておらず、より良い給与や条件を求めて転職するというしくみや、
カルチャー自体が確立されていないと考えています。
これは、いまだ、年功序列、終身雇用、中途採用者の社内キャリアの劣位といった、
日本の伝統的な人事制度を企業が採用しているからだと考えられます。
ここで、企業経営者側も
人材がマーケットで流動化し、良い人材の採用が需給で決まるとなれば、
給与水準や処遇をできる範囲で、ぎりぎりまで引き上げざるを得なくなると考えられます。
特に、今後、少子化で労働者人口の減少する日本では、
求職者という需要側と、採用者という供給側の力関係が逆転する可能性さえあるのです。
良い人材をできるだけ自社に引き留めたいと考えるのなら、
他社と比較して良い処遇が必要となると考えられます。
以上まとめると、
① 成長戦略により、今後成長が見込まれ、収益構造の高い新業界・業種の育成
を行うとともに、
② 収益構造の固定化した伝統的な業界から、成長産業への人材流動化マーケットの構築
③ 転職者に対する日本企業の人事制度やカルチャーの変革
といった施策を行うことが、
国民全体の給与水準の向上のために、必要になってくるのではないかと考えています。
つまり、
景気が良くなり、インフレになれば、
人材の転職マーケットが主導して、自然に、国民の給与水準が上昇してゆくというような
マーケットメカニズムを構築することが、カギとなるのだと考えています。
p.s.
米国ではこのような転職マーケットのメカニズムが機能していて、
景気がよくなり、インフレぎみになると、社会全体の給与水準が上昇してゆくのだと考えています。
p.s.2
このようなマーケットメカニズムにより、より良い条件を求めて、
特に若い世代が、派遣労働者から、正規社員へと転職が進むことは、
日本の人口問題を解決する上で、非常に重要だと考えています。
というのは、日本の人口減の根本的な原因を考えてみると、
出生率の減少 ← 婚姻率の減少 ← 若年層の経済力の低下 ← 派遣労働者の増加
といったところに根があるのではないかと考えているからです。
これが、人口減少の問題の本質、主要因だと考えると、
結婚して、子供がすでにいる家庭だけに、子供手当を出しても、
問題の本質を解決できないのは、明らかです。
そして、このことは、若年層の消費の増加にもつながり、
ひいては、国内消費市場の活性化にもつながるのです。