図1 保険を引き受けてネガティブガンマのポジションをとる
保険を引き受けてみる
前回のブログで、オプションを下落時の保険として利用する方法を考えてみましたが、
オプションは、逆に保険を引き受けて、プレミアム収入を受け取る側に回ることができるという
特徴があります!!
オプションを売って、変動リスクを引き受けることになるわけですが、
これは、さまざまなポートフォリオのポジションが考えられます。
いちばん、簡単なのは、保険を引き受ける側は、保険をかける側と全く反対のポジションをとることです。
今回は、
上図のチャートで示すように、比較のため、前回の保険をかける側と全く反対のポジションである、
ネガティブガンマのポジションを例に考えてみましょう。
想定するポジション
保険をかける側 : デルタニュートラル・プロテクティブプット (先物1枚買い、ATMプット2枚買い)
保険を引き受ける側 : ネガティブガンマポジション (先物1枚売り、ATMプット2枚売り)
ネガティブカンマのポジションは、
デルタニュートラル、ガンマショート、ベガショート、セータロングのポジションです。
損益曲線
ここで、
前回のブログと同様に、想定される状況は、下記の現在の米国株のような状況のときを考えます。
① 日経平均先物ラージ1枚を運用中
② そろそろ、金融緩和が終了するので、近く、資産の調整下落が予想される。
③ しかし、マーケットは依然として、不自然なブル相場が続き、まだ上昇するかもしれない。
そして、原資産レートが想定通りに動けば、
① ボラテリティーが跳ね上がり、損益曲線が赤色の点線のように跳ね下がる。
② ガンマがマイナスなので、レートが下がるにつれて、損益曲線のデルタが、どんどんマイナスに傾く。
ということで、明らかに、保険を引き受ける側のほうが
不利だということがわかります!!
したがって、
保険を引き受ける側は、参入タイミングを検討しなければなりません!!
参入タイミングを考える
図2 ネガティブガンマのポジションでボラテリティーが低下する場合
それでは、今回の例のポートフォリオの場合、どのような場合に、保険を引き受ける方が、
保険をかける方より、有利になるのでしょうか?
① ベガショート → ベガが跳ねあがった後に下落してゆくタイミング
② ガンマショート → 値動きが少ないタイミング
③ セータロング → タイムディケイが大きくなる権利行使日にできるだけ近いタイミング
すなわち、これらから考えられるのは、
原資産の調整下落がひと段落して、谷底付近で、ヨコヨコの相場が始まろうとしている状態で、
いちばん期近の限月で参入するのが、ベストタイミングということになります!!
上図の損益曲線は、
実線が、ボラテリティーが30%に上昇した時の損益曲線
点線が、ボラテリティーが20%に低下した時の損益曲線です。
すると、保険を受ける側の損益は、
① ボラテリティーが徐々に低下し、損益曲線が赤色の点線のように盛り上げって、収益になる。
② レートの動きが少なければ、そのまま毎日少しづつタイムディケイが獲得できる。
という状況となり、収益が確保できます。
しかし、
ここで、もし、想定外にレートが大きく動いてしまえば、
③ ガンマがマイナスなので、損益曲線のデルタが、どんどんマイナスに傾いてしまう。
といった、状況が発生してしまいます。
このガンマがマイナスというのは、、運に任せるしかないのでしょうか?
いや、ガンマがマイナスで、レートが動くにつれて、デルタが刻々と、マイナスへの変化する状況は、
ある程度コントロールすることができます。
それがダイナミックヘッジという方法です。
ダイナミックヘッジ
図3 ネガティブガンマのポジションで先物を買い増してデルタを調整する場合
ダイナミックヘッジとは、
原資産(先物ミニなど)を追加で、売買を入れてゆくことで、デルタニュートラルを
維持するオペレーションです。
上図3の損益曲線は、図2のポジションの、レートが15000円から、15375円付近に変動したため、
先物を0.5枚買い増しして、赤色点線の損益曲線のデルタをニュートラルに調整した場合の
損益曲線です。
このように、保険を引き受ける側のポジションは、ガンマがマイナスとなるのですが、
ダイナミックヘッジにより、デルタを常にニュートラルに維持することで、
運用を続け、毎日少しづつの保険プレミアム収入を受け取り続けることが可能となるのです!!
まとめ
ダイナミックヘッジで保険を引き受けるポジションの優位性
このポジションは、
① デルタと、ガンマは、先物を売り買い調整して、常にデルタニュートラルにする。
② ボラテリティー(ベガ)とタイムディケイ(セータ)からは、収益獲得を狙う。
という、ポジションです。
デルタニュートラルを維持するために、原資産を追加で売買するというのは、
慣れるまで、かなり難しいオペレーションとなるかもしれませんが、
このような方法で、継続的にプレミアム収益を獲得できるのは、オプションのみですので、
これは、明らかに、オプション取引の優位性と言えるのではないでしょうか!!
また、
常にデルタニュートラルを維持することにより、ボラテリティーの急上昇がなければ、
原資産レートが上がろうが、下がろうが、関係なく収益を上げることが可能というのも、
オプションで、保険を引き受ける側の取引の、特徴だと思います!!
もちろん、
上級者で、原資産レートの変動からも、収益を獲得したいという投資家は、相場の状況を読み、
デルタを傾けることで、さらなる収益を獲得することも可能です。