写真付小説 【東京空区】 6-10
【 東京空区 】
第6話-第10話
◆出演◆ 高山猛久 / 増田修一朗 / 西沢仁太 / 若林謙
◆脚本◆ 増田修一朗
『 一也…… この後バイト何時から?』
『 今日ははいってないよ。 佑二は?』
『 俺は後ちょっとしたら行くよ。』
『 そっか……。 俺、暇になっちゃうな。』
『 俺らは基本的には暇だろ。』
『 佑二より俺の方が暇だな……。
佑二はこの前まで彼女いたじゃん。
俺いたことねーもん…。』
『 アイツの話はするな……。
思い出したくもない。』
僕らはこのファミリーレストランで
たわいもない会話をするのが習慣になっている。
二人ともバイトは大体週5-6回で、
お互いの生活は何の刺激も無く、
日々の生活の大半をバイトという、
半分暇つぶしのような事に時間を費やしている。
『 ほんじゃあ、俺バイト行ってくるわ。
俺のドリンクバーも払っといて。
じゃあな… 』
『 おいおい、ちょっとまたかよ。
この間も俺がお前の分も払っただろ?
今日はお前が払って行けよなーーー!!』
『 おいおい、
何だ頭がおかしくなったのかい!?一也君!?
昨日、君の自転車修理してくれたのは誰だっけ!?
ありがとうがまだないな~~。』
『 分かったよー。』
『 じゃあ、行ってくんな。』
『 はいよ。』
バイトに向かって歩いていると…………!!
道の真ん中に人が飛んできた…
…というより降ってきた。
僕は突然の出来事に、自分の目を疑った。
何がなんだか分からなかった。
黒いコートを身にまとった 【 それ 】 が、
空から、いやどこからともなく降ってきたのだった。
気づいたときには
僕は反対側に向かって走り出していた。
' パニック ' っていう言葉が相応しい。
僕は立ち止まって振り返ってみた。
息はひどく上がっていた。
しかし 【 それ 】 は
もう自分の視界から消えていた。
慌てて一也に電話しようとした。
誰かに話さずにはいられなかった。
携帯をポケットから出そうとした時、
【 それ 】 は僕に接触してきたのだ。
『 ねえ……遠藤佑二君 』
はっと後ろを振り返ると、
【 それ 】 は僕の後ろに立っていた。
訳が分からなかった。
前方にいたはずのものが、
自分の後ろに瞬間移動したのだ!
何がなんだか解らず、
気づいたときには叫んでいた。
『 なんだてめーーー!!』
今思うと情けないが、
只単純に怖かった。
弱い犬程よく吠える、
負け犬の遠吠えならず、負け犬の近吠えだ。
【 それ 】 は僕の心を見透かしていたのだろう、
笑っていた。
【 それ 】 を直視出来たのは、その時だった。
よく見ると 【 それ 】 は人だった。
普通のどこにでもいるような、
中年のおっさんだった。
今までこいつに心底びびっていたのを忘れてしまうほど、
そいつは優しく笑って、僕に向かってこう言った。
『 遠藤佑二君。 君は選ばれました。 』
『 はっ!?
何言ってんだてめえは!?
何だてめエーは!?』
また吠えてしまった……。
この男の正体が解るまでは、
僕はずっと怖かった。
次の台詞を聞いたとき、
すっかりその恐怖はさめた…
…というより引いた!!
『 私は天使。 神の使いです。』
『 はっ!?何言ってんだてめえーは。
頭がおかしいんじゃねえのか?
天使!?
何ふざけた事抜かしてんだ!』
『 私はふざけていません。 天使です。』
『 その顔で天使!? ふざけろ!』
そういって僕は踵を返して歩き出した……。
『 待ってください。
仕様がないな……もう……。』
無視して歩き続けた
次の瞬間………。
体が動かせなくなった。
ぴくりとも動かせない……。
…まるで金縛りにあったようだった。
『 まずは私の話を聞いてください。』
そういいながら男は僕に近づいてきた。
彼が僕の正面に来た時、
気がつくと体が動かせる様になっていた。
『 何した!?何なんだオメエーは!!』
『 だから先ほども言った通り、
私は天使です。』
何も言い返せなかった。
この信じられない出来事を、
このたったの数分で受け入れてしまっている自分がそこにいた。
『 何なんだよ!?』
『 君は神に選ばれてのです。
ですから私は、君の仕事のサポートをさせて頂きます。』
『 仕事のサポート!?
必要ねーよ、そんなもん!
大体、何に選ばれたんだよ!?俺は!?』
『 使者に選ばれました。
私がサポートするのは
その使者の仕事のサポートです。
今の君の仕事のサポートではありません。
こんな道の真ん中では何なので、
座って話しませんか!?
ね、すぐそこのベンチで!』
『 そんなゆっくり話してる時間はないよ、
俺今からバイトに行かなきゃなんないしよ。』
そういって彼の手を振り払い
再び歩き出した。
今度は体は動いた。
そいつは僕の事を止めようとはしなかった。
振り返らず進む中、
自分の心が不思議と高揚していた。
それもそうだ。
あんな不思議な出来事を体験したのだ。
恐怖がいつの間にか好奇心へとかわっているのが解った。
またあの男と話がしたいと思った瞬間、
再び彼が目の前に現れた。
そしてこう言った。
『 そうですか、お話しする気になってくれましか。』
『 えっ……。
あっー…は…はい!
あっ、
でもバイトが終わった後にしてもらえませんか!?
今日の今日でバイト休めないし……。』
『 はい、かしこまりました。
それでは後ほど………。』
そう言って彼は歩いて行ってしまった。
彼を引き止めたい気もしたが、
なぜかそうしなかった。
何の約束もしてないけれど、
不思議とバイトが終わったあと、
彼が又ひょっこり現れる気がしたからだ。
この短時間で、
僕は彼を少し信用していた事で
何の違和感もなくバイト先に向かっていた。
バイト先に向かう途中、
救急車やらパトカーなどが通りを塞いでいた。
なにやら公衆電話に一台の車が突っ込んでいる。
運転手らしき男が、
警察官に事情を話している様子が見て取れた。
何度も頭を下げ謝っていた。
居眠り運転でもしてしまったのだろうか……。
・・・to be continued