写真付小説 【東京空区】 1-5 | 東京深夜舞台オフィシャルブログbyアメブロ

写真付小説 【東京空区】 1-5

【 東京空区 】

第1話-第5話

◆出演◆ 高山猛久 / 増田修一朗 / 西沢仁太 / 若林謙

◆脚本◆ 増田修一朗




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この世には

なにもないと思っていた。



毎日が退屈で仕方がない。


ただ、バイトに明け暮れる毎日。


世間でいう 【 ニート 】 という存在だ。




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今から三年前、

環境の変化を求めて東京に出てきた二人。


それは余りにも非現実的で

夢の中にいる様な感覚であった。


自分たちの未来は一気に膨らんで、

【 期待感 】 【 心の高揚 】 が止まらなかった。




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そんな三年前の夢は今は簡単に打ち砕かれ、


高校を卒業と共に、

【 東京進出 】 と二人で胸を張り、

地元の友人に自慢気に言って出てきたものの、


二人を待っている現実が

彼らの希望を失わせるのに、

そう時間はかからなかった。




ここで僕らの自己紹介をしよう。


これが僕!




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僕の名前は 遠藤佑二、24歳。



今は居酒屋で

バイトの日々に明け暮れている。




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田舎には両親と兄がいる。


兄はもう結婚していて、

父の仕事の ' 跡継ぎ ' として将来は決まっている。


僕は

" そんなレールの上に乗っかった人生はつまらない " と、

親に反抗して意気がって東京に出てきたものの、

この有様。




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兄の様に、

素直に自分の人生に向き合い、

全うして生きていくのも選択の中にあったと思うが、

そこが ' 長男 ' と ' 二男 ' の違いであるのかもしれない。



僕は未だに定職にも就かず、

親に心配をかけている。


心の隅で

' いずれは・・・・・' と思いながら、

未だにバイト以外何もしていない。



何かをしなければならない事を

わかっておきながら。




そして

僕の隣にいるのが

勇猛果敢に理由なき反抗、根拠なき自身を抱え、

' 東京に行く ' と言って付いて来てくれた、 横山一也、24歳。

僕とは幼馴染だ。




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家が近かった事から、

何をするのも一緒だった。




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お互い知らない事は無いくらいだ。



彼も定職には就かず、

日々の時間のほとんどを

バイトに使っている。


東京に出てきたばかりの頃、

彼は ' イラストレーター ' になりたいと

仕切りに言っていた。



確かに一也は、

昔から絵を描いたりするのが好きだった。


授業中などには

よく教科書の隅っこに漫画みたいなものを

描いては僕に見せてくれていた。



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僕は、

一也の描いた絵を見るのが好きだった。



小学生とは思えないレベルの絵を、

ものの数分でスラスラ描く様は、

子供の頃の僕には魔法の様に思えた。



僕が好きな漫画のキャラクターを

一也に描いてみてよと授業中に頼むと、

彼は黙々とドリルの裏に描いて、

ドリルごと僕にその絵をくれたりしていた。



そんな時、

彼がビックリするくらい優しい表情を見せるのを、

クラスで僕だけが知っていた。



しかし、

どこか引っ込みがちな彼は無口で、

学校の休み時間などは外で遊ばず、

一人で絵を描いたりして、

本を読んだりしていた。



そんなある日、

一也を苛める連中が現れた。




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クラスのリーダー格の奴が、

一也がノートに描いた漫画に

いたずら書きをしたり、

教科書をビリビリに破いたのだ。



僕はそれが許せなかった。



それを見た瞬間、

頭の中は真っ白になり、

僕はキレた!!



『 うわーーー!!!』 っと

リーダーの男子に突っ込んだ。



その時だった。



同時に一也も、

『 うわーーーー-!!!』 っと叫んで

彼に突っ込んで行ったのだ。



一也のそんな表情を見るのは

その時が初めてだった。



正直その顔を見たとき、

僕は驚いて尻込みしそうになったが、

僕が出そうとしている右ストレートは止まらなかった。



よく見ると、

一也も左ストレートを繰り出そうとしている。



次の瞬間……



2つの拳が、

リーダー男子の顔面にクリーンヒットし、

そのままそいつはぶっ倒れた。


周りにいたいじめっ子連中は

ただ啞然としていた。



予想外余りにも予想外の

出来事が起きたからだ。



その止まった時間を僕は動かした。



『 ヨッシャー! 』 と大きな声で叫び、

一也にハイタッチを求めると、


彼も、

『 ヨッシャー!! 』 と、

左手を何のためらいもなく

僕の右手にぶつけてきた。



一也の本当の笑顔を見たのは、

あの時が初めてだった。



それ以来、

僕と一也はどこに行くのも一緒だった。


苛められる事も無く、

むしろクラスの中心に僕たち二人がいた。


一也も明るくなった。




その後、

中学に進学した僕らは、

地元ではちょっと有名な不良になった。


【 二中の佑二一也 】 と聞いて知らない奴はいない、

いわゆる青春時代を送った。




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あの頃の自分たちの 【 夢 】 は無限だった。



形のない未来が

輝いている様に思えた。



それが今はどうだ。




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夢!? 希望!? 


ないない!!


現実を見ろって!? 


あまりに無力……。




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ところがどっこい、

そんな退屈な僕の人生は、

今日という日を最後に

終わりを迎える事になる。



・・・to be continued