写真付小説 【東京散歩】 26-30
【 東京散歩 】
第26話~第30話
◆出演◆ 高山猛久 / 増田修一朗 / 西沢仁太 / 若林謙 (以上 東京深夜舞台)
◆脚本◆ 一雫ライオン (東京深夜舞台)
![26-1 142small](https://stat.ameba.jp/user_images/19/99/10073306378_s.jpg?caw=800)
【 カキーン!・・カキーン!・・ 】
バッティングセンター独特の、
一定のリズムで投げだされる白球を、
一生懸命、そして小気味よく打ち返す少年。
そんな少年を、
横須賀さんは何も言わず見つめていた。
何分も何分も。
その視線は温かく、
とても悲しそうだった。
そんな彼にかける言葉を、
僕は持ち合わせていなかった。
心の中のカエラがいない僕は、
余りにも無力だった。
『 ・・・表出ようか。
新鮮な空気吸いたなったわ。 』
『 はい。・・・・・・・ 』
![26-2 009small](https://stat.ameba.jp/user_images/cc/ee/10073306379_s.jpg?caw=800)
『 ・・・・大丈夫ですか? 』
『 何がや? 』
『 いや、・・肘、痛そうだから・・・。 』
『 ・・ああ、
さっきな、久し振りにバット振ったら、
肘いわしてもうたわ!
・・ハハッ、
もうランディ・バースみたいには打てへんの~!
ハハハハ・・・・・・。 』
『 ・・・良い天気ですね。 』
『 ・・おう
・・ほんまやな~、
アホみたいに晴れくさって。
・・神様もとことん意地悪やで、
嫌でもあの日を思い出すわ。 』
『 ・・・あの日? 』
![26-3 047small](https://stat.ameba.jp/user_images/65/53/10073306380_s.jpg?caw=800)
神様は意地悪。
その通りかも知れない。
神様はいつだって無邪気で、
平等で、気まぐれで、子供で、
自分のしている事の意味さえ
分かっていないのかも知れない。
青空を見て人は幸せを感じる。
生命を感じる。
その青の果てに。
でも青空を嫌いになってしまった人もいる。
この横須賀さんみたいに。
その青の果ての、
終わることの無い暗闇を知って。
思えばこの時からかも知れない。
僕がこの人に、
もう1度、
青い空の美しさを知ってもらいたいと思い始めたのは。
思えばこの人と出会ってからなのかも知れない。
僕が本当の意味で、
【 生きる 】、という事を真剣に考え始めたのは・・・。
![27-1 040small.jpg](https://stat.ameba.jp/user_images/73/0b/10073393174_s.jpg?caw=800)
『 大学の野球部入って、
そら死にものぐるいで練習したわ。
何しろ、
全国の野球の上手い奴らが
推薦で入って来てるからの~、
競争は半端やなかったで。
でも俺は負けんかった。
他の奴が夜寝てる間も
バット振り続けた。
・・・おかげで、
2年の春にはレギュラー取れての・・・ 』
『 凄いじゃないですか!! 』
『 プロ野球にスカウトされる事しか
考えてなかったからな・・・・
試合でバッターボックス入ってる時もな、
ピッチャーが投げてくるボールを、
ボールと思って打ってなかったなぁ・・・
一球、一球、
【 この球打ち返したら、
母ちゃん楽に出来る !!
だから絶対打ったるんや !! 】
って、バット振り抜いてな・・・ 』
『 ・・・・・・・。 』
『 必死すぎて、
苦しかった事とか、
よう覚えてへんけど・・・・
【 母ちゃんの為に !! 】
って思ってたあの時が一番、
楽しかったのかも知れんな・・・。 』
![27-2 074small.jpg](https://stat.ameba.jp/user_images/44/66/10073393310_s.jpg?caw=800)
『 ・・・・そんな順調だったのに
どうして?
・・その、
・・・・・・。』
『 ヤクザになったのか?って
聞きたいのか?』
『 ・・・はい。 』
『 ハハハハッ・・・・・
お前カリスマ占い師やろ!?
そんぐらい当ててみぃ?』
『 ・・・えっ?
・・・・・。』
![28-1 041small.jpg](https://stat.ameba.jp/user_images/ce/65/10073393616_s.jpg?caw=800)
『 どうした、浦無?
・・・はよ占ってみぃ・・・・。 』
『 ・・・いや
・・その・・・・ 』
謝ろう・・・
嘘ついてましたって、
正直に謝ろう・・・。
『 ・・横須賀さん!
・・・実は僕・・・ 』
『 嘘やて~!!
いかん!いかん!
こんなしょうもな~い人間の過去、
カリスマさんに占ってもろうたら罰あたるわ!! 』
『 あの !! 』
『 ええて、ええて。
自分で話すから。
・・・大学2年の秋やった・・・・ 』
『 ・・・・・・・・
話聞けっつーの・・・・。 』
『 ああん !!
何か言ったか、ワレ !? 』
『 なななな、
何も言ってませんよ~
・・・お聞き違いじゃございませんこと?』
『 なんで女言葉やねん!?
・・・お前気持ち悪いなぁ・・・。 』
『 どうぞお気になさらないで
・・・・お話、続けて下さい! 』
『 ったく・・・
大学2年の秋やった・・・ 』
![28-2 052small.jpg](https://stat.ameba.jp/user_images/96/fa/10073393874_s.jpg?caw=800)
『 10月やっていうのに、
バッカみたいに暑い日でな。
太陽ギラギラして、
空は青くて・・
ちょうど今日みたいな日やった。 』
『 ・・・・・。 』
![29-1 074small](https://stat.ameba.jp/user_images/2a/08/10073972218_s.jpg?caw=800)
『 2年先輩にいけすかん先輩がおっての、
薮田っちゅう奴やった。
そいつはレギュラーにもなれず、ふてくされて、
後輩いじめるのが生きがいみたいな奴やった。
まぁ、
もとから性格ひん曲がってたんやろうけどな・・・。
そいつがよ~、俺の連れいじめててな・・
田中ってゆうやけど、そいつはただ野球が続けたくて、
頑張って、勉強して大学入ってきた奴でな。
・・・どうやったってうちの野球部についてこれる実力はなくて、
ボール拾いとか、洗濯とか、雑用だけの毎日や・・・。 』
『 ・・・・・・・・。 』
『 それでも文句も言わずに
いつも楽しそうにしててな・・
俺は友達おらんかったけど
田中だけは馬が合って・・・
唯一、心休まる存在やった。 』
![29-2 035small](https://stat.ameba.jp/user_images/50/9a/10073972262_s.jpg?caw=800)
『 そんな田中を薮田はよ~苛めててな。
ずる賢いから俺のおらん時に。
みかねた俺が薮田に文句言おうとすると
田中がな、
【 あんな奴は何処に行ったって必ずいる、
放っておけばいい。
それよりあんな下らない奴相手にする暇あったら、
横須賀は練習してくれ!
だってプロに行かなきゃいけないんだろう!? 】
って言ってな・・・。 』
『 ・・・優しい人ですね・・・ 』
『 そして事件は起こるわけや・・
くだらん事件が、
2年の秋、
遠征で山梨行った時に・・・。 』
![1](https://stat.ameba.jp/user_images/08/e5/10074222440_s.jpg?caw=800)
『 宿舎でのミーティングが終わった時や、
薮田が話ありますって手挙げてのぅ、 』
『 ・・・・・・。 』
『 【 遠征費が盗まれた!】 って言うんや。 』
『 ・・・・・・。 』
『 嫌な予感はしたな・・・
何かこんな事昔あったなぁ、
っていう嫌な予感。
そしたら案の定、アホの薮田がな、 』
【 横須賀が盗んだところ見た 】
『 そう言うたんや。
・・・はめられた~って一瞬で思うたな。
・・冷た~い視線で、
みんな俺の事見てたわ。』
『 でも横須賀さん盗んでなかったんでしょ!? 』
『 当たり前や!
・・・今はともかく、
昔は人様の銭に手つけるほど
根性曲がってなかったわ・・・・・。 』
『 ・・・で、どうなったんですか?・・・。 』
![2](https://stat.ameba.jp/user_images/88/76/10074222719_s.jpg?caw=800)
『 もちろん
【 盗ってない!!】 って言ったわ。
でも皆、
俺が貧乏なのは知ってたからのぅ、
・・ハハッ
・・今一、説得力なくてのぅ、そのうち薮田が、』
【 横須賀のカバンの中を調べよう 】
『 って言いだしての・・・。 』
『 ・・・・・。 』
『 もう展開は読めたやろ!?
・・・案の定、
俺のカバン開けたら、
遠征費ががっぽり出てきてチャンチャンや。 』
『 でもそんなの!・・・・ 』
『 浦無・・・
人生なんてそんなもんやて。
過去は消えんし、イメージは変えられん。
どんなに野球に打ち込んでても、
昔の俺を知ってる奴は、影でいくらでも噂しよる。 』
『 ・・・・・・。 』
『 キャプテンは
【 横須賀はそんな事はしない。 】 って言ってくれての、
取りあえず様子みる感じになったんや。
みんな、それぞれ部屋に帰ってのぅ・・・。 』
『 そんなの絶対、
その薮田って奴が仕組んだんでしょ!
それなのに!・・ 』
『 浦無・・
そんなの当たり前や。
そんな事解ってる奴がほとんどやったと思うで。
ただな、大切な事は
【 俺のカバンから金が出てきた 】 って事と、
【 薮田にはめられたんだろうって思われながらも、
俺を庇う人間が誰もいなかった】 って事や ・・・ 』
『 ・・・・・・。 』
『 一匹オオカミみたいに
生きてきたからの・・・
そら、
俺の事面白く思ってない奴は多かったやろ・・・
仲間の信頼を得てなかった、
俺にも原因はあるんや・・・。 』
![26-3 047small](https://stat.ameba.jp/user_images/65/53/10073306380_s.jpg?caw=800)
『 でもな・・・
俺も元々はこんな人間や・・・。
どうしても納得いかなくてのぅ・・
薮田とさしで話そう思うて、
あいつの部屋に行ったんや。
そしたら部屋にはおらんでの、
あちこち宿舎さがしたら・・・。』
・・・to be continue
■重要なお知らせ■
7/2(水)・3(木)
'渋谷RUIDOK2'にて、
第2回舞台公演決定!
・OPEN 22:00
・START 22:30
(~23:30終了予定)
すべて当日券のみ。
¥2,000(1ドリンク込)
皆さま、是非お越し下さい!
詳細はPCトップページよりご覧頂けます。。