写真付小説 【東京散歩】 26-30 | 東京深夜舞台オフィシャルブログbyアメブロ

写真付小説 【東京散歩】 26-30

【 東京散歩 】

第26話~第30話

◆出演◆ 高山猛久 / 増田修一朗 / 西沢仁太 / 若林謙 (以上 東京深夜舞台)

◆脚本◆ 一雫ライオン (東京深夜舞台)




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【 カキーン!・・カキーン!・・ 】


バッティングセンター独特の、

一定のリズムで投げだされる白球を、

一生懸命、そして小気味よく打ち返す少年。


そんな少年を、

横須賀さんは何も言わず見つめていた。


何分も何分も。


その視線は温かく、

とても悲しそうだった。


そんな彼にかける言葉を、

僕は持ち合わせていなかった。


心の中のカエラがいない僕は、

余りにも無力だった。



『 ・・・表出ようか。

 新鮮な空気吸いたなったわ。 』



『 はい。・・・・・・・ 』




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『 ・・・・大丈夫ですか? 』



『 何がや? 』




『 いや、・・肘、痛そうだから・・・。 』


『 ・・ああ、

さっきな、久し振りにバット振ったら、

肘いわしてもうたわ!

・・ハハッ、

もうランディ・バースみたいには打てへんの~!

ハハハハ・・・・・・。 』



『 ・・・良い天気ですね。 』



『 ・・おう

・・ほんまやな~、

アホみたいに晴れくさって。


・・神様もとことん意地悪やで、

嫌でもあの日を思い出すわ。 』



『 ・・・あの日? 』



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神様は意地悪。


その通りかも知れない。



神様はいつだって無邪気で、

平等で、気まぐれで、子供で、

自分のしている事の意味さえ

分かっていないのかも知れない。



青空を見て人は幸せを感じる。


生命を感じる。


その青の果てに。



でも青空を嫌いになってしまった人もいる。

この横須賀さんみたいに。


その青の果ての、

終わることの無い暗闇を知って。



思えばこの時からかも知れない。


僕がこの人に、

もう1度、

青い空の美しさを知ってもらいたいと思い始めたのは。



思えばこの人と出会ってからなのかも知れない。



僕が本当の意味で、

【 生きる 】、という事を真剣に考え始めたのは・・・。




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『 大学の野球部入って、

そら死にものぐるいで練習したわ。


何しろ、

全国の野球の上手い奴らが

推薦で入って来てるからの~、


競争は半端やなかったで。



でも俺は負けんかった。



他の奴が夜寝てる間も

バット振り続けた。



・・・おかげで、

2年の春にはレギュラー取れての・・・ 』



『 凄いじゃないですか!!



『 プロ野球にスカウトされる事しか

考えてなかったからな・・・・


試合でバッターボックス入ってる時もな、

ピッチャーが投げてくるボールを、

ボールと思って打ってなかったなぁ・・・



一球、一球、


この球打ち返したら、

母ちゃん楽に出来る !!

だから絶対打ったるんや !!


って、バット振り抜いてな・・・ 』



『 ・・・・・・・。 』



『 必死すぎて、

苦しかった事とか、

よう覚えてへんけど・・・・


母ちゃんの為に !!


って思ってたあの時が一番、

楽しかったのかも知れんな・・・。 』



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『 ・・・・そんな順調だったのに

 どうして?


 ・・その、

 ・・・・・・。』



『 ヤクザになったのか?って

 聞きたいのか?』



『 ・・・はい。 』



『 ハハハハッ・・・・・


お前カリスマ占い師やろ!?


そんぐらい当ててみぃ?』



『 ・・・えっ?

 ・・・・・。』




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『 どうした、浦無?


・・・はよ占ってみぃ・・・・。 』



『 ・・・いや

・・その・・・・ 』



謝ろう・・・


嘘ついてましたって、

正直に謝ろう・・・。



『 ・・横須賀さん!

・・・実は僕・・・ 』


『 嘘やて~!!

いかん!いかん!

こんなしょうもな~い人間の過去、

カリスマさんに占ってもろうたら罰あたるわ!! 』



あの !!



『 ええて、ええて。

自分で話すから。


・・・大学2年の秋やった・・・・ 』



『 ・・・・・・・・

話聞けっつーの・・・・。 』



ああん !!

何か言ったか、ワレ !?



『 なななな、

何も言ってませんよ~


・・・お聞き違いじゃございませんこと?』


『 なんで女言葉やねん!?

・・・お前気持ち悪いなぁ・・・。 』


『 どうぞお気になさらないでラブラブ


・・・・お話、続けて下さい! 』



『 ったく・・・


大学2年の秋やった・・・ 』





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『 10月やっていうのに、

バッカみたいに暑い日でな。


太陽ギラギラして、

空は青くて・・


ちょうど今日みたいな日やった。 』



『 ・・・・・。 』


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『 2年先輩にいけすかん先輩がおっての、

 薮田っちゅう奴やった。


そいつはレギュラーにもなれず、ふてくされて、

後輩いじめるのが生きがいみたいな奴やった。


まぁ、

もとから性格ひん曲がってたんやろうけどな・・・。


そいつがよ~、俺の連れいじめててな・・

田中ってゆうやけど、そいつはただ野球が続けたくて、

頑張って、勉強して大学入ってきた奴でな。


・・・どうやったってうちの野球部についてこれる実力はなくて、

ボール拾いとか、洗濯とか、雑用だけの毎日や・・・。 』



『 ・・・・・・・・。 』



『 それでも文句も言わずに

 いつも楽しそうにしててな・・


俺は友達おらんかったけど

田中だけは馬が合って・・・


唯一、心休まる存在やった。 』



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『 そんな田中を薮田はよ~苛めててな。

ずる賢いから俺のおらん時に。


みかねた俺が薮田に文句言おうとすると

田中がな、


【 あんな奴は何処に行ったって必ずいる、

 放っておけばいい。

 

 それよりあんな下らない奴相手にする暇あったら、

 横須賀は練習してくれ!

 

 だってプロに行かなきゃいけないんだろう!? 】


って言ってな・・・。 』



『 ・・・優しい人ですね・・・ 』




『 そして事件は起こるわけや・・


 くだらん事件が、

 

 2年の秋、

 遠征で山梨行った時に・・・。 』





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『 宿舎でのミーティングが終わった時や、

薮田が話ありますって手挙げてのぅ、 』



『 ・・・・・・。 』


『 【 遠征費が盗まれた!】 って言うんや。 』



『 ・・・・・・。 』



『 嫌な予感はしたな・・・


何かこんな事昔あったなぁ、

っていう嫌な予感。


そしたら案の定、アホの薮田がな、 』



【 横須賀が盗んだところ見た 】



『 そう言うたんや。


・・・はめられた~って一瞬で思うたな。


・・冷た~い視線で、

みんな俺の事見てたわ。』



『 でも横須賀さん盗んでなかったんでしょ!? 』


当たり前や


・・・今はともかく、

昔は人様の銭に手つけるほど

根性曲がってなかったわ・・・・・。



『 ・・・で、どうなったんですか?・・・。 』



2



『 もちろん


【 盗ってない!!って言ったわ。


でも皆、

俺が貧乏なのは知ってたからのぅ、


・・ハハッ

・・今一、説得力なくてのぅ、そのうち薮田が、』


【 横須賀のカバンの中を調べよう 】


『 って言いだしての・・・。 』



『 ・・・・・。 』


『 もう展開は読めたやろ!?


・・・案の定、

俺のカバン開けたら、

遠征費ががっぽり出てきてチャンチャンや。 』



でもそんなの・・・・



『 浦無・・・


人生なんてそんなもんやて。


過去は消えんし、イメージは変えられん。


どんなに野球に打ち込んでても、

昔の俺を知ってる奴は、影でいくらでも噂しよる。 』



『 ・・・・・・。 』


『 キャプテンは


【 横須賀はそんな事はしない。 】 って言ってくれての、


取りあえず様子みる感じになったんや。


みんな、それぞれ部屋に帰ってのぅ・・・。 』



『 そんなの絶対、

その薮田って奴が仕組んだんでしょ


それなのに・・ 』



『 浦無・・


そんなの当たり前や。


そんな事解ってる奴がほとんどやったと思うで。


ただな、大切な事は


俺のカバンから金が出てきた 】 って事と、


薮田にはめられたんだろうって思われながらも、

俺を庇う人間が誰もいなかった】 って事や ・・・ 』



『 ・・・・・・。 』



『 一匹オオカミみたいに

生きてきたからの・・・


そら、

俺の事面白く思ってない奴は多かったやろ・・・


仲間の信頼を得てなかった、

俺にも原因はあるんや・・・。 』



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『 でもな・・・

俺も元々はこんな人間や・・・。


どうしても納得いかなくてのぅ・・


薮田とさしで話そう思うて、

あいつの部屋に行ったんや。


そしたら部屋にはおらんでの、

あちこち宿舎さがしたら・・・。』


・・・to be continue

重要なお知らせ

 7/2(水)・3(木)

'渋谷RUIDOK2'にて、

第2回舞台公演決定

・OPEN  22:00

・START 22:30

 (~23:30終了予定)

すべて当日券のみ。

¥2,000(1ドリンク込)

皆さま、是非お越し下さい!

詳細はPCトップページよりご覧頂けます。。