写真付小説 【東京散歩】 16-20

【 東京散歩 】

第16話～第20話

◆出演◆　高山猛久 / 増田修一朗 / 西沢仁太 / 若林謙 （以上 東京深夜舞台）

◆脚本◆　一雫ライオン (東京深夜舞台)

人・・人・・人・・・。

金・・金・・金・・・。

自由・・自由・・自由・・・。

俺はいつからこんなに煮詰まっちまったんだろう。

東京・・東京に出てきて何年になるんだ？

・・・・ちょうど10年か。

最初はきらびやかに見えたな・・

ネオンとか、人混みとか、

目に入るもの全てがかっこ良く見えた。

でも今はこの街を見て何でこんなにイラつくんだ？

・・18で東京に出てきて、

その時は目指すべきものがあって、

そのうち目指すべきものを失って・・・、

途方に暮れて、

流されて、

気がつけば今の稼業だ。

自分で望んだのか望まれたのか、

それすら俺にはわからない。

人生のレールがあるなんていうが、

これが俺のレールだとしたら、神様はそうとう意地が悪い。

昔は良く神に祈ってたもんだ。

【 神様お願いです、どうかこのピンチを切り抜けさせて下さい 】

・・・ばからしい。

どーでもいい。

人生なんて。

クソみてーな生き方しちまってんだ、

どうせ死ぬ時もクソみてーな死に方だろう。

だったらとっととピリオド打ってくれりゃいいじゃねーか神様。

それすらしてくれねーのか？

だったらあんたは最低だ。

優しさも慈悲の心もねぇ、エゴイストだよ。

宇宙の果てから笑ってろよ、この野郎。

甘えてる訳じゃねぇ。

俺に甘える時間がもうねぇって事は神様、

あんたが一番わかってんだろう？

組の金を盗んだ。

４０００万。

うちの組がやっている、裏カジノのその日のあがり分だ。

４０００万。

大金だと思う。

でも追われねぇ。

誰にも追われねぇんだ。

覚悟していた。

とんずらした瞬間から電話バンバン鳴って、

組の奴らに東京中追われて隠れて・・・

そんなドラマチックな事になると思ってた。

でも現実は違った。

電話が何回か鳴って、

留守電に 『 連絡よこせ 』 ってメッセージが吹き込まれて、

無視していたらそのうち電話も鳴らなくなって、

街を歩いていても刺される事もない・・・。

なぜだろう？

たまらなく空しい。

追われない空しさ。

探す価値もねぇと思われているのか？

４０００万は奴らにとって大金じゃないのか？

俺が起こしたこの行動すら神様、意味がねぇって言うのかよ？

浦無一輝・・・

へっ、面白い奴だったな。

カリスマ占い師なんて言われてるから、

チャラチャラした奴だろうと思って会いに行ったら・・・

予想以上にチャラチャラしてやがった　（笑）

でも、普通じゃねぇ力があるんだろう。

何となく目見てわかった。

うらやましい。

天から与えられた才能のあるあいつが。

俺は才能を潰しちまった。

自分の手で。

いとも簡単に、くっだらねぇ事で。

さっきは少し脅しすぎたかも知れない。

東京湾に人なんか沈めたこともない。

ましてや本当の俺は関西弁でもない。

すべて憧れ。

こんなヤクザになりたいという俺の憧れ。

本当の俺は秋田出身のしがないチンピラだ。

４０００万盗んでも、組から追われもしないしがないチンピラだ。

今は兄貴に会いたい。

会って話がしたい。

謝りたい。

その為には浦無・・お前だけが頼りだ。

頼む・・・

俺の兄貴を見つけてくれ・・・。

『 ちょっっちゅね～・・・・。 』

『 ちょっっちゅね～・・・・。 』

駄目だ・・。

具志堅洋行のモノマネをしても全然テンションが上がらない。

俺のモノマネはちょいちょい古い。

古き良き時代、８０sを愛しているんだ俺は。

だから具志堅さんと言うより、

具志堅さんの真似をしている鶴太郎さんのモノマネだ。

最近テレビでやってくんないなこのモノマネ・・・

絵ばっかり描いて・・

鶴太郎さんのいけず・・・。

『 はぁ・・・・・ 』

そんな事はどうでもいい。

大事な事は他にあることぐらいわかっている。

横須賀一郎、４８歳・・

この人を見つけなくてはいけない。

見つけなくてはいけない状況に追い込まれた。

何だか逃げても無駄な気がする。

沈められるとか、されないとか、そりゃ凄っ・・ごく重要だけど、

何かあの横須賀さん・・

同い年だけど、

同い年に見えないあいつから逃げちゃいけない気がする。

逃げてしまったら、

本当に俺は駄目になってしまう気がする。

【 気がする 】 ・・・これは重要な事だ。

全ての根源は 【 気 】 で出来ている。

これは間違いない。

僕らは日々の雑踏の中で気づきにくくなっているが、

今でも僕らの周りは 【 気 】 が溢れている。

【 偶然は必然 】 この言葉もそう。

偶然起こっている出来事、

例えば人との出会いもそう、別れもそう、ふとした瞬間発した言葉もそう・・

そこには必ず 【 必然 】 という未来と過去からのメッセージが含まれている。

それに僕らは気づきにくくなっただけ。

昔の人、と言ってもそんな昔じゃない俺らのおじいさんやおばあさんの世代の人は

自覚せずそれが解っていた。

感じていた。

だから、昔の人は 【 勘 】 が良い。

俺らの時代は全ての事に 【 意味 】 を求めた・・・

はぁ・・

もういいや、

言い訳してるよ俺は。

俺はその能力を与えられた。

いや・・

偶然持っていただけなのかもしれない。

俺は心の神様の声をちゃんと聞いていたのか？

【 人の為にこの能力を使いなさい 】 という声をきちんと受け止めていたのか？

だから君は愛想をつかして出て行ったのかな、カエラ？

俺は君がいない今、本当にどうやって生きていけば良いんだろう？

どこに行けば良いのだろう？

何をすればいいんだろう？・・・・・。

今はそれさえも、俺は自分で決められないんだよ・・・。

『 ちょっっちゅね～・・・・。 』

具志堅洋行のモノマネが空しく宙に響く・・・。

『 こらーーー！！！

いいから探せや！！俺の兄貴！！！ 』

横須賀二郎か・・・。

怖かったな～。

あんな 【 ザ・ヤクザ 】 なお方と面と向かって話したのはあれが初めてだ。

同い年でど～う生き方間違えばこんなに変わってしまうんだ？

あなたのお兄さん、見つけろって言われても、

見つけてあげる事が出来ないんだよ、横須賀さん。

何であの時正直に言えなかったんだろう。

【 僕にはもう占う能力がないんです。 】

【 だから占ってあげたいんだけど、占う事が出来ないんです 】 って。

横須賀さん、

あんたはテレビでアイドルのワンちゃんを俺が見つけたって言ってたけど、

実はあん時から、俺の能力ははなかったんだ。

ずいぶん前から心の神様は消えていて、

でもテレビの収録は決まっていて断れず、

テレビ局のプロデューサーさんには、

少し調子が悪いって事にしてもらって、

あらかじめ仕込んでおいたんだ、あの犬を。

あのアイドルのワンちゃんは行方不明になんかなっていなかった。

ましてや、あのアイドルは、犬すら飼っていなかったんだ。

いろいろ嘘ついてるね俺。

自分の名声を守る為に。

【 ビリーブ！！ 】 とか叫んで。

見えもしない事を、

【 来た・・来ました！！ 】

なんて、もっともらしいセリフを唱って。

怖いんだよ。　何もない自分が。

占う事が出来なくなった浦無一輝が。

ずっとそうやって生きてきたから。

人に誇れるものがそれしかないから・・・。

『 横須賀一郎・・・４８歳・・・元銀行員・・・・・・・ 』

・・・・・駄目だ。何も浮かばない、

聞こえてこない。

もういい。本当に辞めだ。

元カリスマ占い師の誕生だ。

謝ろう・・あの横須賀さんに。

正直に言っても・・・こ、殺されはしないだろう・・

多分・・多分ね・・任侠の人だから・・・。

『 だ、・・大丈夫だよね？カエラ！？ 』

『 ・・・・・・・・・・・・・・・・。 』

今日も応答なし！！！

月が出て太陽が出て、月が出て太陽が出て、

あっという間に丸２日がたった。

丸２日、そうそれは約束の日。

その間、僕、浦無一輝は何をしていたかというと、

ず～っ・・・・と寝てたの僕

完璧、現実逃避ね！

謝るって決めたんだけどやっぱり謝れなかったの

だってそうでしょ！？

この間は俺ちょっとシリアスになっちゃってさ、

【 怖いんだよ・・・何もない自分が・・・ 】

な～んて気取ってたけどさ、

どーーー考えてもあのマウンテンゴリラの方が怖いもん！！

絶・・対、許してくれないよ？謝っても！！

沈められるよ！？東京湾に！！

そいでさ、１年後位に沖で地引網に引っ掛かって、

【 あんりゃ～、こりゃどえりゃ～もん釣れちまったよ～、ハルさ～ん、

ちょっとハルさ～ん警察に電話してくんろ～、警察に電話してくんろ～！ 】

・・・って言われてもさ・・俺の人生切なすぎるでしょ！？

という訳で謝ろうかな～、

やっぱり辞めようかな～って思ってるうちに丸２日が・・・

【 ♪ピンピ、ピピピピ・・ピピピピピピピ～・・・ 】

『 ･･･・・・・・・・・・・・・・・。 』

お～っと・・携帯電話が鳴ってますよ～、お客さ～ん。

って、ここは俺の部屋、マイハウス。他に人は誰もいない。

嫌な予感・・嫌な予感プリーズ・・・・・。

『 も・・もしもし・・・。 』

『 おんしゃ～、何で連絡してこんのじゃ～！！

兄貴は見つかったんかワレーーーー！！ 』

イエス！！悪魔からのテレフォンコール！！

着信拒否が許されないデビルマンからのバッド・ボイス！！

『 はい・・・後もう一歩でひらめくかと思われます・・・。

すみません・・・。 』

『 そうならそうと途中経過入れてこんかい！！　

【 経過報告 】！！

社会人の常識やろ～が！！ 』

『 ・・・・・・・はい。 』

私、おヤクザ様にお説教されております。

それも割りと社会人として的を得ている事を教えて頂いております。

ありがとう横須賀君、君と出会えて良かった・・・。

『 浦無、今どこや！？ 』

『 ・・・い、家であります。 』

『 か～！！

ええ若いもんが昼過ぎまでゴロゴロゴロゴロしくさって！！

あん！？　

俺の兄貴も捜さんと！！　随分ええ身分じゃのーー！！ 』

そんな耳元で大声を出されたら鼓膜が破れるんでございますご主人様。

『 すみません・・・。

どうも心の神様が少し横になってなさいとおっしゃるもので・・ 』

『 やかましいわ！！お前の神さんなんか知らんわ！！　

ええからとっとと顔洗おて神宮に来い！！

１０分以内や！！ 』

『 はい！？

じ、神宮って神宮球場の神宮ですか！？ 』

『 神宮ゆうたら、

我が愛するヤクルトスワローズの本拠地のある神宮に決まってるやろうが！！ 』

『 ・・・・・阪神ファンじゃないんですか？・・・ 』

『 ・・・・・な、なにがやね～ん・・・・・・・・・・・ 』

『 ・・いや、関西の方はみんな阪神ファンなのかなって・・思って・・ 』

『 ！！！・・・♪は・・は、は～んし～んタイガース！！

当たり前や！！好きに決まっとるやんけ阪神は！！

べ・・別格やで！は・・阪神は別格やで！！

大阪生まれなんやから当たり前やないかい！！

その次に・・ヤ、ヤ、ヤクルトが好きなんやーーー！！

は～んし～んタイガース！！フレー！！フレー！！・・ 』

『 分かりました！！

分かりましたから六甲おろしを電話越しで歌い上げるの止めて下さい！！

耳が！！

耳が割れます！！！ 』

『 はぁ・・はぁ・・分かればええねん・・・。

関西パワーなめんなよ・・はぁ・・はぁ・・ 』

『 で・・わたくし、じ、神宮のどこに向かえばよろしいんでございましょうか？・・ 』

『 え、え～と・・・あれや！

カッキン！カッキン！ええ音響かせてる檻の中に来いや！！

５分以内やーーー！！

・・【 ブチッ・・プー･･プー・・・ 】 』

・・・病気か？

本格的に病気かあの男は！？

何だよカッキンカッキンって！！　ええ音響かす檻の中！？

【バッティングセンター】 だろ、そこ！？

何でそんな簡単な単語が出てこないんだよこのくそゴリラ！！

お前が檻の中入ってバナナでも一生食うとれやボ～ケーーー！！！

・・・すっきりした。

怒られると嫌だから早く行こう・・・

５分以内は無理だけど・・巣鴨だし・・・。

『 ・・・・・ばれたかな？大阪出身じゃないって・・・・ 』　　　to be continue・・・

■重要なお知らせ■

　7/2(水)・3(木)

'渋谷RUIDOK2'にて、

第2回舞台公演決定！

・OPEN 　22:00

・START 22:30

　(～23:30終了予定)

すべて当日券のみ。

￥2,000(1ﾄﾞﾘﾝｸ込)

皆さま、是非お越し下さい！

詳細はPCﾄｯﾌﾟﾍﾟｰｼﾞよりご覧頂けます。。