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a beautiful tomorrow yea

 
私が
CEOに就任した当時、誰も私達に注目していませんでした。会社は順調とは言えませんでしたし、私達が戦う相手は、巨大なコングロマリットでした。言ってみれば私達は勝ち目の見えない『負け組』だったわけです。

 

そこで、こう考えたのです。彼ら『勝ち組』にはない何かで勝負しようと。私達は英国のブランドです。『英国的』であることに関してはほかのブランドに負けません。ですから、ショーなどで使われる音楽、モデルの選定を含め、英国的であることにこだわることにしました。さらに、私達のブランドの出自は『コート作り』にあります。コートから始まった高級ブランドはほかにはありません。ですから、その出自を最大限に生かし、今の時代にふさわしいかたちで、その価値を再生することを掲げました。

 

そして、もうひとつ。ほかのラグジュアリーブランドは、1990年代以降生まれの世代をターゲットとして設定することはしていませんでした。ならば、そこを狙おうと考えたのです。

アンジェラ・アーレンツ(バーバリー元CEO/2006~2014年)

 

クリストファー・ベイリー来日

 

 
秋晴れが続いた今週、英国を代表する老舗ファッションブランド<バーバリー>社の
CCOCEOを務めるクリストファー・ベイリーが来日し、先月新宿にニューオープンしたバーバリー新宿店に姿を現した。今回の来日は、日本国内において、バーバリーと三陽商会とのライセンス契約(1970年~2015年)が終了した今年6月から約3か月が経過したタイミングでの来日だ。周知のとおり、バーバリーは、日本ではとりわけ認知度が高いトレンチコートで有名なブランドだが、同ブランドのチェック柄のマフラーは、90年代から渋谷を歩く女子高生達の冬の必須アイテムとなって久しい。

 
一方、バーバリーのアイテムを何ひとつ所有していない、同ブランドに全く関心のなかった俺が、同ブランドに目を向け始めたのは、バーバリーの最高峰ラインでありコレクションラインである「進化するバーバリー」こと「Burberry Prorsum(バーバリー・プローサム)」が世に登場して以降だろうか。同ブランドのデザイナーを務めるクリストファー・ベイリーについて補足すると、彼は他でもないトム・フォード・チルドレン(トム・フォードの下で、1996年から2001年までの5年間、グッチのウィメンズのデザイナーを務めた)のひとりであり、俺同様、音楽をこよなく愛する男なのだ。

 
ブログ冒頭で引用した、米アップル社の現SVPで、米ボールステイト大学卒の女性アンジェラ・アーレンツ>の意見は的を射ており、全くその通りだと思うが、そんな退屈で、時代遅れだった英国のバーバリーに革命をもたらした男<クリストファー・ベイリー>に関しては、2014年7月21日(月)付ブログ“Superstar Junkie”の中で詳細に綴ったので、興味のある方はどうぞ。当時のブログで、俺は次のように記していた。

 

アンジェラが「誰も私達(バーバリー)に注目していませんでした」「言ってみれば私達は勝ち目の見えない負け組だったわけです」と言ったように、同ブランドは長い間、グッチ同様、死にかけていたブランドだったのだ。しかし、グッチがトム・フォードによって息を吹き返したように、バーバリークリストファー・ベイリーによって、劇的に変化を遂げたのだ。

 

同社は、三陽商会とのライセンス契約終了に伴い、日本国内の営業を直営店に切り替え、2017年までに売上高を4倍にする計画を明らかにしている。以前のブログでも取り上げた、英国の若手スーパーモデル<カーラ・デルヴィーニュ>ちゃんの広告起用が記憶に新しいところだが、前CEOのアンジェラが指摘したように、「ほかのラグジュアリーブランドは、1990年代以降生まれの世代をターゲットとして設定することはしていませんでした。ならば、そこを狙おうと考えたのです」に通じるブランド戦略のひとつが、カーラ・デルヴィーニュの起用だろう。彼女は俺の趣味ではないが、彼女が国内外問わず、若い女性の間で人気があるのも確かなようだ。

 

少し前には、広告に、英国のミュージシャン<ブライアン・フェリー>を起用していたが、英国にこだわるその徹底ぶりに、英国を代表する老舗ブランドの意地を見たような気がする。何度も言うが、英国のイメージは、その最高とも言える<音楽>なのだから、それを利用しない手はないはずだ。ファッションと音楽の融合は近年よくあるタイプのそれだが、或る意味、デヴィッド・ボウイのロックとモードを融合させ、誕生したのが、エディ・スリマンの<ディオール・オム>だろう。エディ・スリマンのインスピレーションの源が、他でもないボウイの音楽であり、彼の生き方そのものだったのだ。

 

90年代以降、アルマーニ以外のブランドで、俺の足をそれぞれのブティックまで運ばせたのは、トム・フォードの<グッチ>、エディ・スリマンの<ディオール・オム>、トム・フォード自身の名を冠した<トム・フォード>、英国の<アレキサンダー・マックィーン>、ニューヨークの新生<トム・ブラウン>、そしてクリストファー・ベイリーの<バーバリー・プロ―サム>の6ブランドだけなのだ。付け加えると、エディ・スリマンの<サンローラン>も、か。そのついでに覘いたブランドもいくつかあるけど、ね。また、プラダエルメスのブティックは90年代以前から、足を運んでいる。

 

ところで、前回のブログでは、新宿伊勢丹メンズ館の海外発ラグジュアリーブランドばかりを集めた3階及び4階フロアに注目してみたが、モードに詳しい人であれば、気付いたかもしれないが、世の中の最先端ファッションをリードする同フロアにラインナップされたブランド群の中で、唯一名前がなかったのが、他でもないバーバリー・プローサムなのだ。バーバリー新宿店がオープンする以前は、同フロアにラインナップされていたと前置きしておくが、同メンズ館の3階及び4階に現在ラインナップされているそれら(イタリアのブランドを中心に、アメリカ、フランス、イギリスのブランドが続く感じだ)に、バーバリー・プローサムを加えれば、メンズモードの今が見えてくるはずだ。90年代後半のトム・フォードの言葉を借りれば、メンズモードについて次のようにも言える。

 

大人の男というのは、世界中どこへ行っても同じような格好をしていますね。ちょっと寂しいですけど。もう、どこへ行っても皆、伊勢丹メンズ館の3階及び4階に並ぶような服ばかり着てますよ(笑)なんて、ジョークですよ。

 

東京国際映画祭

 

第28回東京国際映画祭が来週22日(木)に開幕するが、プレジデント社の10月15日(木)付コラム「なぜ東京国際映画祭は世界で無名なのか」がとても興味深くもあったが、同映画祭の上映スケジュールを見た限り、私的に目に留まったのは今回3作品のみだ。 

 
ひとつめはシャーリーズ・セロン主演作『
Dark Places(原題)』であり、今月26日(月)及び28日(水)の上映分は、すでにソールドアウトだ。本作に関しては、2014年11月19日()付ブログ“See Me Now”の中で取り上げたので興味のある方はどうぞ。当時のブログから、一部抜粋して紹介したい。

 

ギリアン・フリン原作のデヴィッド・フィンチャー監督作『ゴーン・ガール』が来月12日より、日本でも劇場公開されるが、アメリカでは、ギリアン・フリン原作の映画『Dark Places』(邦題は、現時点では未定だ)も公開されることだ。小説『Dark Places』(2009年)は、2012年に『冥闇』というタイトルで邦訳本が出版されており、アメリカの女性作家<ギリアン・フリン>はアメリカで今、最もホットな作家のひとりだとも言える。

 

そんな人気作家<ギリアン・フリン>原作のもうひとつの映画で、ジル・パケ=ブレネール監督作『Dark Places』の女性キャスト陣がとても豪華ゆえ、私的に注目していたのだ。誰なのかと言うと、オスカー女優<シャーリーズ・セロン>をはじめ、リスティーナ・ヘンドリックスロエ・グレース・モレッツなどなどだ。

 

ドストエフスキーの長編小説『罪と罰』が愛読書のひとつでもある女優<シャーリーズ・セロン>に関しては、改めての説明は不要だと思われるが、クリスティーナ・ヘンドリックスに関しては、2012年4月23日付ブログ“Oh My Love”で、ニコラス・ウィンディング・レフン監督作『ドライヴ』の感想を綴った際、少しばかり取り上げた。エミー賞受賞の米ドラマ『マッドメン』の印象が強い彼女だが、同TVドラマに関しては、2012年3月29日付ブログ“Hello, hello, hello, how low?”で取り上げたので、興味のある方はどうぞ。

 
2つめは、ジャズのトランペット奏者<チェット・ベイカー>の生涯のある時期を描いたイーサン・ホーク主演作『ボーン・トゥ・ビー・ブルー(原題: Born To be Blue)』であり、24日(土)及び26日(月)の上映分(TOHOシネマズ・六本木ヒルズ)がソールドアウトだが、28日(水)の上映分(新宿バルト9)はまだ席に余裕があるようだ。

  
そして3つめは、映画『ナイトクローラー』の記憶が新しいジェイク・ギレンホールをはじめ、映画『インヒアレント・ヴァイス』の記憶が新しいジョシュ・ブローリン、映画『美しい絵の崩壊』『誰よりも狙われた男』や米ドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』の記憶が新しいロビン・ライト、そして、キーラ・ナイトレイエミリー・ワトソン、サム・ワーシントン等々が共演した映画『エベレスト 3D(原題: EVEREST)』だ。尚、同作品のエヴェレスト山を舞台にしたその物語に関しては、私的に正直興味がなかった一方、そのキャスト陣の豪華さに少しばかり惹かれた感じだろうか。25日(日)上映分(新宿バルト9)の席はまだ余裕があるようだが、日本での一般公開は11月6日(金)だ。

 

渋谷のミニシアター<シネマライズ>閉館へ

 

話は変わるが、渋谷の宇田川町に1986年にオープンし、俺好みの映画を上映してきたミニシアター「シネマライズ」が、来年1月に閉館する。約30年間の歴史に幕を閉じるわけだが、土地勘がない人のために補足すると、スペイン坂を上った、渋谷パルコ(PART3)の向かいに位置している。同エリアは、私的に思い入れのある場所であり、俺がかつて住んでいた松濤からも徒歩数分の場所であり、宇田川町の渋谷西武百貨店をはじめ、レコードショップなどなど、これからも何度も足を運ぶであろうお気に入りのそれなのだ。

 

80年代末の記憶を辿れば、同映画館から徒歩数十秒の、目と鼻の先に位置していたクラブ(ディスコ)が、当時一世を風靡し、サーファーの溜まり場でもあった地下1階に位置した「J TRIP BAR DANCE HALL SHIBUYA」であり、「渋Jと呼ばれたそれだ。10代の頃、この界隈ではよく遊んだものだ。同系列店は、六本木にも西麻布にも、そして苗場スキー場にもあったが、とりわけ足を運んだ先は、六本木のそれであり、毎週末のダンスパーティ開催の余興に、お笑いタレントが登場していた時代だ。まだ無名だった頃のB21スペシャルは、同クラブで何度も目にしたが、あの頃のヒロミはオシャレだった、と記憶している。彼らの登場は、とんねるずが人気となったバブル時代の、少し後のそれだろうか。当時の六本木(スクエアビル他)や麻布十番(マハラジャ)、芝浦(ジュリアナ東京、ゴールド)での夜遊びの記憶は、生涯忘れることがないであろうそれだ。

 

話を戻すが、渋谷パルコは20階建の超高層ビル(2019年完成予定)に建替となり、50年の歴史に幕を閉じる渋谷区役所は17階建の高層ビル(2018年完成予定)に建替、そして渋谷駅前の大規模再開発による47階建の超高層ビルをはじめとした渋谷駅前一大プロジェクトの完成予定は、今から12年後の2027年だ。その頃、俺は50代だが、良い意味での、「バーバリー・プローサム」同様、「進化する渋谷」に期待したい。

 

フランク・ゲーリー展

 

 
最後になるが、デヴィッド・ボウイの新曲“
Blackstar”が待ち遠しい今日この頃だが、今週末の私的なオススメのイヴェントは、東京ミッドタウンの21_21 DESIGN SIGHTで開催中の企画展『フランク・ゲーリー展 “I Have an Idea"』(2015年10月16日~2016年2月7日/10:00~19:00、入場料: 一般1100円、大学生800円、高校生500円)だ。なお、現在来日中の86歳となった有名建築家<フランク・ゲーリー>は明日18日(日)、スペシャルトーク「フランク・ゲーリー: アイデアとその仕事」を国立新美術館3階の講堂で開催予定だったが、体調不良のため中止になったようだ。そして、表参道のエスパス ルイ・ヴィトン東京で開催される無料の企画展『フランク・ゲーリー/Frank Gehry パリ フォンダシオン ルイ・ヴィトン 建築展』(2015年10月17日~2016年1月31日/12;00~20:00)もオススメのそれだが、フランク・ゲーリーの建築は、ザハ・ハディド以上に前衛的で、見る者を圧倒するほどに芸術的ゆえ、興味がある方はどうぞ。カスケイドのニューアルバムをBGMに今、時計の針は、10月17日(土)の朝8時半を回った。

 

Have a nice weekend!