CAとお化けばなし | 東京Crew倶楽部 ~客室乗務員(CA)の世界~

東京Crew倶楽部 ~客室乗務員(CA)の世界~

フライトにまつわることからCAたちのプライベートまで♪ 元ベテランチーフパーサーが語っています

私がいた航空会社では

 

幽霊ばなしは

飛び始めたばかりの新人CAの

通過儀礼みたいなもの

 

なにせ、新人CAにとっては

ほとんどの土地は初めての所ばかり

 

どのフライトでも、1人や2人

お化け話が好きな先輩CAがいる

新人CAから

「ここは、初めてのステイです」

なんて聞くと

ちょっといじくりたくなる

 

「昔、このホテルではね・・・・」

とか

「このホテルが立つ前はね。処刑場があったの・・・」

とか、洗礼を受ける

 

時にはパイロットも加わって

皆で食事に行ったときに

作り話と噂ばなしで

新人CAを怖がらせていく

 

さんざん脅かされて

ホテルに帰ってきて部屋に入る

食事のときの話が頭をよぎる

心細くてしょうがない

 

フライト中も緊張の連続で

身体は疲れ切っている

そのうえ、先輩たちと食事に行ったら

怖い話を聞いてしまった

 

ベッドに入っても寝つけない

ウトウトし始めたら

目に見えない何かに

身体が抑えつけられている感じ

手も足も動かせない

 

こんな金縛り体験をしたCAもいる

その彼女たちが、中堅、ベテランになって

それを新人CAに怖げに盛って話す

 

その昔、香港ステイのときは

クーロンサイド(九龍半島側)の

ネーザンロード(中心街の大通り)にある

ホテルが定宿だった

 

ショッピングに便利な場所

ただ、このホテルは、格式があるが

なにせ古い

 

特にCAたちが泊まっていたのは旧館

昼間でもやや薄暗い廊下を通らないと

部屋にいけない

 

狭い土地に作ったホテル

窓を開けると

目の前は隣のビルの薄汚れた壁

 

一人で寝るのが怖くてしょうがない新人CA

もう一人の新人CAに

「今日は私の部屋で寝ない?」

二人でダブルベッドにもぐり込んで寝た

 

サイドテーブルの足元ライトだけを点けて

室内照明は消して

 

夜中に、一人がトイレに起き

用を足してトイレから出たところ

寝ていたもう一人が

なにかの物音にふっと目を開けると

 

目に飛び込んできたのは

髪を下ろして白っぽい布を覆った人影

「キャー」

お化けがいる

 

その声に驚いて、トイレから出てきたもう一人のCAも

「キャー」

 

お化けなんかいないのに、二人で

「ワー、ワー、キャー、キャー」

「ギャー、ギャー、ワー、ワー」

なにごとかと、ボーイがすっ飛んきた

 

電気をつけてよく見たら

髪を下ろした白い布姿は

トイレから出てきたネグリジェ姿のCA

 

若かった頃の

ウソのような、本当のような話

 

その古びたホテルも

今では、きれいなショッピングアーケードを併設した

新しいホテルに生まれ変わっている

 

今、現役CAたちはどうしているんでしょう

相変わらず新人CAにお化け話をしているのかな

 

 

T・K  ♂