【二以上勤務】複雑な月額変更と退職直後の改定~2以上勤務の月変は難しい~(2)
みなさま、こんにちは。社会保険労務士法人東京おむろ人事サービスです。
二以上事業所勤務では、複数の会社から受ける報酬を合算して標準報酬月額を決めます。
そのため、月額変更を考えるときにも、「過去に受けた報酬はすべて合算するのではないか」と思いやすいところです。
しかし、すでに一方の会社を退職している場合は、少し考え方が変わります。
今回は、日本年金機構の疑義照会回答から、選択事業所で報酬が下がったあと、非選択事業所を退職した場合の月額変更を見ていきます。
1 事例②の内容
【参照:年金疑義照会適用(260210版)疑義照会回答(厚生年金保険 適用)被保険者所属選択・二以上事業所勤務届 整理番号5】
A事業所を選択事業所、B事業所を非選択事業所として、二以上事業所勤務をしている方がいます。
4月の報酬は、A事業所が500,000円、B事業所が400,000円でした。
合計では900,000円です。
その後、A事業所の報酬が、5月支払分から100,000円に下がりました。
一方、B事業所の報酬は400,000円のままです。
そして、B事業所については、7月1日に資格喪失しました。
この時点で、二以上事業所勤務から一事業所勤務へ変わります。
疑義照会回答では、7月1日の標準報酬月額は、B事業所の報酬を除き、A事業所の報酬月額500,000円で決定すると整理されています。
そのうえで問題になるのが、8月の月額変更です。
A事業所では、5月支払分から報酬が下がっています。
そのため、5月、6月、7月の3か月を見て、8月月額変更を考えることになります。
ただし、5月と6月には、まだB事業所から400,000円の報酬を受けていました。
このB事業所の報酬も、8月月額変更の計算に入れるのでしょうか。
(1) 回答:退職したB事業所の報酬は入れません
この事例では、B事業所の5月・6月の報酬は除いて計算します。
8月月額変更で見るのは、A事業所の報酬です。
A事業所では、5月、6月、7月の報酬がいずれも100,000円です。
そのため、B事業所の5月・6月の報酬400,000円を入れずに、A事業所の報酬だけで月額変更を行います。
疑義照会回答でも、喪失した事業所で受けた報酬月額を除いて決定するとされています。
その結果、この事例では、標準報酬月額98,000円への8月月額変更となります。
(2) 私の考察
この事例で大切なのは、月額変更を何のために行うのか、という点です。
月額変更は、現在の給与実態に合うように、標準報酬月額を見直すための手続きです。
たしかに、5月と6月にはB事業所から報酬を受けています。
しかし、8月月額変更の時点では、B事業所との使用関係はすでに終了しています。
すでに使用関係がないB事業所の過去の収入を含めて、8月以後の標準報酬月額を決めるのは不合理です。
そのため、疑義照会回答では、喪失したB事業所で受けた報酬月額を除いて決定するとされています。
今回の判断の中心は、「過去にB事業所から報酬を受けていたか」ではありません。
現在も使用関係が続いているA事業所の報酬をもとに、8月以後の標準報酬月額をどう決めるかです。
このように考えると、B事業所の5月・6月の報酬を除くという結論は、制度の考え方にも合っているといえます。
2 次回は手続きについて
今回と前回は二以上勤務の月変というとても難しい問題を記事にしました。
次回は、この考えをもとにどのような手続きが必要かについて近いうちに説明したいと思います。
【参考文献】
年金疑義照会適用(260210版)疑義照会回答(厚生年金保険 適用)被保険者所属選択・二以上事業所勤務届 整理番号5
本記事は、確認できた疑義照会回答、法令、通知その他の公的資料に基づく。
個別の事案判断は、管轄の年金事務所等への確認が必要となる場合がある。
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