バルブ考:「弇」と「瓣」の使い分けと読み方。  | 東京蓋散歩 ~マンホール巡り~

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マンホールや消火栓などの蓋、特に地味蓋を中心に観察しながら歩きまわります。タイトルとは裏腹に都外出没頻度も高いです。

水道や下水道の古い蓋には、なんとか弁の代わりに「弇」という字が使われていることがあります。

「弁」の旧字と思いがちですが実際には「えん」と読む別の漢字。


このブログでは何度も触れていますが弁の旧字はいくつかあり、その中でバルブの意味の「弁」の旧字は「瓣」。


「瓣」の代わりに本来正しくはないのですが「弁償や駅弁」等に使われる「辨」という文字の蓋も多くあります。(こちらの方が多く、さらに中央が「リ」が「y」のようになった書体の蓋が一番多い気がします。)



さて、この「弇」と「弁」の旧字である「瓣」や「辨」。なんとなく、まず弁の旧字が使われていて、その後「弇」になり、最後に「弁」になったようにも思えますが、もしかすると使い分けがあったのかどうかが気になっています。「弇」という字の意味は「覆うもの」らしいので、バルブが入っている入れ物を指すのかとも思ったりしていましたが、実際は単純にバルブのことだったらしいです。

一つの文書内に「瓣」と「弇」がいずれもバルブの意味で用いられていたり。。。
う~ん、混沌としています。

左ページ(ニ)排水瓣と右ページ(ト)冷水阻止弇 「消防実用水力学(大正9年 葛西雄三郎 著)より」


ちょっと見にくいので上の採水瓣の弁の字のアップ。



さらには、「えん」ではなく「べん」と読まれていたこともあるようで、もしかすると「弁」という略字が出来る前に、複雑で類似の同音異字が多く混乱しやすい「瓣」の代用として用いられていたのかもしれないと思えるような文書も。。。

例えば、「自動車問答 : 受験参考(大正14 東京自動車学校出版部)」。「弇」の字に「バルブ」あるいは「べん」とルビが振ってあります。


結論からすると、何でもいいじゃない。ってことでしょうか。。。。 

結局、収拾がつかなくなったので、ついでに「瓣」の異体字を再掲しておきましょう。自棄(やけ)です。
どこがおかしいかは、各自で見つけてください。



「弇」の読み方。「えん」? 「べん」?  に続く

一応の結論篇はこちら→ バルブ考:「弇」の読み方:結論篇