皆さん、こんにちは。弁護士の小池です。

 

土曜日から3連休だった方も多いと思いますが、そんな中、首を傾げたくなるニュースが入ってきました。

 

弁護士着服に見舞金 日弁連検討 会費財源 会員に反発も

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/275578

 

弁護士が依頼者からの預かり金を着服するなどの不正が相次いでいることを受け、日本弁護士連合会が、被害者に見舞金を支払う「依頼者保護給付金制度」の導入を検討していることが分かった。会費を財源に、被害者1人当たり500万円を上限に支給する。弁護士に対する信頼回復が狙いで、来年4月にも導入したい考えだが、会員からは「なぜ他人の不祥事の後始末をしないといけないのか」などと反発も出ている。

 

弁護士による不正を巡っては大阪地裁が3月、総額約5億円を着服したなどとして業務上横領罪などに問われた弁護士に懲役11年を言い渡した。福岡県では2014年、弁護士に現金をだまし取られた被害者らが、指導監督の責任を問い県弁護士会を提訴し、係争中だ。

 

不正が相次ぐ背景には、司法制度改革に伴う弁護士の急増により、弁護士が経営難に陥りやすくなっていることがあるとみられる。

 

日弁連の制度案は、着服や詐欺で弁護士が有罪判決を受けたり、弁護士会から懲戒処分されたりした際、被害者からの申請を受けて見舞金を支払う仕組み。不正をした弁護士に賠償能力があるケースや、不正行為から5年以上が経過している場合などは支給しない。

 

上限は、被害者1人当たり500万円。同じ弁護士による被害者が5人以上いる場合は計2千万円を上限とする。日弁連内に設置する審査会が支給額などを判断し、日弁連会長が最終決定する。

 

しかし、見舞金は全国の弁護士約3万7600人が納めている会費(月額1万6800円)が原資となるため、内部では「納得できない」と不満も出ている。多額の被害が出ても支給額が500万円にとどまる仕組みに対し「本当に信頼回復につながるのか」と疑問視する声もある。

 

日弁連は「全国の弁護士会への説明を進めており、意見を聞きながら対応を検討したい」としている。

 

私も日弁連の末端構成員ですが、この案を考えた人は一体何を考えているのだろうかと、見識を疑いました。「やるべきことは、そういうことじゃないだろう」と言いたくもなります。

 

私は司法書士でもあるので、司法書士が作っているリーガルサポートという成年後見支援団体に入っています。

 

司法書士が成年後見人に就くというケースは結構多く、たとえば、東京では弁護士の5倍近い選任件数がありますが、それに伴い、不祥事も増えてきていました。最近では、昨年に東京司法書士会所属の司法書士による約6700万円の業務上横領事件が起きています。

 

リーガルサポートは公益財団法人として認定されていますが、このままではその認定がなくなりかねない(実際、内閣府からそういう話もあったらしい。)とう危惧感から、次々不正防止策を打ち出しています。たとえば、預金通帳の全件原本確認です。大阪であった司法書士である後見人の横領事件では、預金通帳のコピーを報告書に添付した後にまとまったお金を引き出すという手口が用いられたため、発見が遅れたという経緯があったからです。

 

それ以外にも、定期的にリーガルサポートの支部役員が会員の執務状況をチェックするということも始めました。中には、「事務所が片付いていなかったら危険因子」などという冗談のような項目もあります。不祥事を起こしている司法書士の事務所が、たいてい記録等の整理を適切に行なっていなかったという事実から出てきたそうです。

 

弁護士自治を高らかに謳っている日弁連と弁護士会からは、「役人に公益認定の取消をちらつかされたから慌てて対策?バカじゃないの?」などといういう声が上がりそうですが、後見制度にいちはやく取り組んだ専門職として、それだけ必死だということです。

 

他方、日弁連や弁護士会が、「頻発」する弁護士不祥事を受け、会員の預り金口座を届け出制にしただとか、抜き打ちの査察を実施しただとか、そういう話は全くありません。

 

では、上で引用した日弁連の見舞金云々は、不祥事防止策に当たるのでしょうか。

 

そもそも、この制度自体は不正を防ぐのに何の役にも立ちません。あくまで事後補償です。言い方は悪いですが、500万円ぽっち支払っただけで、弁護士が依頼者等に迷惑をかけた事実がなくなるわけでも何でもありません。

 

しかも、その原資が、まじめに弁護士の務めを果たしている会員からも徴収した会費というのは、一体何を考えているのでしょうか。以前の記事でも紹介したように、一番懲戒を受けているのは60代、70代のベテラン弁護士なのです。近年激増した「若手」弁護士ではありません。ただでさえ、若手の中には「弁護士会に入っていても何もしてくれない」という声がある(私はそう思っていませんが…)というのに、こんな制度を作ったら「若手」の神経を逆なでするだけです。

 

この記事が指摘しているように、弁護士による着服事件が増えている背景には、

 

司法制度改革に伴う弁護士の急増により、弁護士が経営難に陥りやすくなっていること

 

があるのですから、弁護士の数を絞り込むということも必要があります。もっといえば、法科大学院制度を前提に司法試験合格者大増員を進めた司法制度改革が誤りだったことを、日弁連はいい加減認めるべきだと思います。

 

そんなことをいうと、いわゆる「若手」の中から、「私は合格者増員とロースクールのおかげで今弁護士をやっていられる」という声が上がりそうですが、だから何だというのでしょう。公認会計士試験は、制度改革で増えすぎた(1000人→2000~4000人)合格者を、就職難が社会問題化したことを受けて、すぐに1500人台に引き下げました(適当な記事がないので、坂野智憲弁護士のブログをご参照下さい。)。制度は変えればいいだけのことです。大増員の時期の弁護士だからバカにされるなどということは、自分が仕事をきちんとすればありえません。

 

これが司法試験になると、過去2年の1800人程度から今年の合格者数を1580人に引き下げたぐらいです。弁護士の激増傾向は今後も全く変わりません。

 

就職難どころか、経営難で横領が頻発しており、見舞金を出すという形で日弁連もそれを追認していながら、なぜ公認会計士試験のようなことができないのでしょうか。弁護士が増えればそれだけ会費が増えるので、いかに貧乏弁護士や不祥事弁護士が増えても、弁護士の数を減らしたくないというのが日弁連の本音なのではないかと疑いたくもなります。

 

まあ、それを言うなら、長年の夢にこだわってカネがなくても弁護士を続ける私のような人間は、日弁連にうまく利用されてしまっているような気もしますが…。

 

ともあれ、当事務所では、依頼者の方からの預り金は全て預り金口口座で分別管理しており、案件が終了した後は明細書を付けて速やかに返金しております。

 

もちろん、事務所内もきちんと片付いています(笑)ので、安心してご相談・ご依頼になってください。

 

東京けやき法律事務所

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