小さな駐車場の小さな物語59 消えゆく物、消えない意志 | 今がその時

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彼は、夜11時の駐車場で彼らしくもないことを考えていた。

この駐車場に初めて来てから、どれぐらいの時がたっただろう?

この駐車場でどれぐらいの時間を仲間と過ごしただろう?

この駐車場で何回、馬鹿なことをやっただろう?

この駐車場で・・・・・・・

いつから自分はこんなことを考えている?いや、そもそも自分はいつからここにいるのか。

そしてこんな肌寒い季節に部屋着で駐車場にいるのはなぜだろう?

ああそうだ。ここにはもう来れなくなるんだっけ。

そうだそうだ。だから急いでやってきたんだ。

今日で駐車場はなくなっちゃうんだった。

明日、11月9日は和田ビルの建設開始日。

その和田ビルの建設場所はここ。今、俺がいる場所。

小さな駐車場だ。

都市開発はあらゆる空き地を消し去ってきた。

学校の運動場でさえ縮小されて、空いたスペースにビルが建てられる時代だ。

ましてや利用客のいない駐車場など、どうして残す必要があるだろう。

さっさとビルでも建てた方がよほど世のためだ。

その理屈はわからなくもない。

でも、この駐車場は。












でも、そんな事は気にする必要はないんだ!

駐車場がなくなったって、思い出までがきえるわけじゃない!

みんなと過ごした日々を消すことは出来ない!

駐車場は!俺たちの中で永遠に存在し続けるんだ!


さあ!いこう!この世界すべてが!

僕らの駐車場なんだ!




と、山根は思うのだった。
















小さな駐車場の物語

      完