オレビュー『この世界の片隅に』の花々 | 特撮アラフィー!! ~50オヤジのコレがたまらん!

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2018年10月より
『特撮アラフィーZ』と改め移転しました。
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昭和特撮と趣味の花の写真を取り上げているオッサンブログ。「ゴジラ」は好物だが「シン・ゴジラ」は大嫌い。


ずいぶん前ですが
『この世界の片隅に』を観ました。

この映画、上のような感想はあちこちで語られているようです。

自分が思わず見入ってしまったのが、
そうした情景やストーリーもですが、
日常風景に織り混ぜられている自然・花々や虫たちの姿の忠実さ

─自分は趣味で花の写真をよく撮るのですが、

映画では、身近な名もよく知られてない花々が、きちんと描かれていて、
ものすごい身近感というか、
まことに自分の住むこの地での出来事だとの感覚がおきて、

映画を観ながら「おお~♪」と声が出そうになり(笑)
その場でスマホに収めてある画像ファイルを取り出して眺めたくなったり(オイ!)しましたw







1枚目の、主人公すずさんの後ろの白い花は、白い椿(ツバキ)でしょうか。

赤い椿(ツバキ)はハッキリ描かれています。



春先に咲く、小さな青い花は─


 

大犬の陰嚢(オオイヌノフグリ)
他に瑠璃唐草(ルリカラクサ)、天人唐草(テンニンカラクサ)、星の瞳などの美しい名前があるのに、
実の形から犬の陰嚢(キ●タマw)と呼ばれる美しい花…w 

夏が近づくと─


画面手前に咲くのは紫露草(ムラサキツユクサ) 


奥には立葵(タチアオイ)

この映画を観る前は、戦争─しかも原爆投下、終戦というもっとも大変な時を扱ったお話しゆえ、
不謹慎かもしれませんが心が重くなる、トラウマになるかも…と、どこか警戒した気持ちがありましたが、

そうした大変な時期でも日常を大切に、平常に生きていこうとする主人公はじめ人々の生きざま…それをリアルに支える細かなところまでの生活や自然界の描写、

気負いしない日常の描写にクスクス笑ったり、おだやかな気持ちにさせられました。

そして物語が原爆投下、戦争終結で終わるのではなく、そこからまたはじまっていくのもいいです。


主人公すずは
ある日突然縁談が持ち上がり、
生まれ育った広島市江波(えば)から
見も知らぬ土地、呉に、
よく知らぬ人のもとへ嫁ぎます。






青条揚羽(アオスジアゲハ)もいました。

実は劇場でこのカットを観た時、
「うー!?」と声を出しそうになりました。

なぜって、カブトムシのとなりのタマムシって、樹液を吸うんじゃなくて、葉っぱを食べるんだったから─

そうしたら、


同じく疑問に感じた方と、監督とでこんなやり取りがあったとは。
樹液なめてるんじゃなくて、一緒にいるという意味を込めたかったんですね。

同じく同居─いや、もっと深い意味で、
広島ではよく、白いタンポポが咲いています。

いくつか種類があるそうで、写真がそうかは判りませんが、
代表的なのは白花蒲公英 (シロバナタンポポ)

よく知られる黄色いのとは別種で、
色が途中で変わることはなく

しかも同じ一つの株から白い花と黄色の花が混ざって咲くような事はありません。

自分は仕事や趣味で
あちこち長距離をバイクで移動するんですが、

このタンポポが咲くのも、道路を隔てて白黄色それぞれとか、
それぞれ離れていたり、地域によってどちらか片方を見るといったのが
当たり前なのですが─

映画では、この花にちなんだエピソードがあります。

物語の中頃、
すずさん夫の周作さんとの会話

「ここいらのタンポポは、みな白いんですねぇ」

「江波のんはちがうんか?  
…お、黄色のもあるで」

周作さんが偶然すぐそばに
小さな黄色いタンポポをひとつ見つけ、
何気に摘み取って見せようとすると

「あっ!
遠くから来とってかも知れんし…」
と、摘み取るのを押し止めるすずさん。

この映画では、タイトルロールなど、
白いタンポポのそばに黄色いタンポポが寄り添って咲くかのようなイメージカットがあります。

先にも記したように、白と黄色が同じ株から咲くことはなく、
いささか誤解を生むようなこの構図に、映画を観る前は、いささか疑問符が沸いたのですが、

嫁いで来た呉の環境や、そこの人々を白いタンポポに、
黄色いタンポポが、すずさんという、
監督が対談でも語っている、意図された演出であり、

先に記した映画内でのふたりのエピソードに合点が行き、とてもじんわり感動しました。

そうした後日─

こんな寄り添った風景に実際出会いまして…

ありゃー♪

アニメのドラマが
まるで実際過去にあった出来事で、今も脈々と紡がれているようで、
すずさんが実在してこの世界のどこかにいらっしゃるみたいで─

思わずその場で声が洩れて
この日はすんごく嬉しくなりました。



8月6日、広島に想いをよせて─