剣の形代(つるぎのかたしろ) 195/239 | いささめ

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 源頼家の発案した指令は各地の御家人に波紋を投げかけた。

 これから土地を貰える可能性が出てきた武士はいい。問題は既に土地を持っている武士だ。

 農地改革には成功例と失敗例がある。

 戦後日本の農地改革、それを真似した韓国の農地改革は成功例である。簡単に記すと地主の持つ農地を国が安い値段で買い、それまで小作農であった人に農地を渡すという仕組みである。多くの地主が資産を失った一方で、多くの小作農が小作農ではなくなった。

 失敗例は共産主義諸国における集団農場である。農地を没収してこれまで小作農であった人に土地を渡すという点では成功例と同じであるが、土地の所有者は個人ではなく国である。

 成功例と失敗例の違いを突き詰めると、農地没収前と同じか否かという点である。

 成功例の場合、今まで耕していた土地を今まで通りに耕すことができる。それでいて、収穫を小作料として地主に納める必要が無くなったため手元に残る収穫が劇的に増える。今までは地主から土地を借りて小作料を払わねばならなかったし、小作料を納めるのに不満を訴えたなら、土地の継続利用の契約が打ち切られ、次年度からの生活が成り立たなくなっていた。何しろ小作料を払い終えた残りを手元に残してそれで生活してきたのだ。それが、農地改革で一変した。土地は耕作者のもので、収穫も耕作者のもの。努力すればするほど手元に残る収穫は増え、収穫を売って手にする金銭も増える。努力せず今までと同じ暮らしをしているのであっても小作料を払わなくて良くなるのに、今後は努力すればするほど結果が返ってくるのだから、これで生産性が上がらないとしたらその方がおかしい。

 

 

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