父は私が子供の頃から
誰にも本音を話さなかった
私は子供だったが
父が会社で辛い事があるのは
雰囲気で察していた
子供なりに父に
「会社でなんかあったんぢゃねぇか？」と
しつこく聞いたが
今まで
父は一度も
私に本音を話した事はなかった
そんな私も今では３６歳
当時の本音を話さない父を越える年齢になってきた
父は、たまに家に来て
ご飯を食べて孫を適当にいじって帰るのだが
最近、よく母の愚痴をいう
仕事の辛い話をする
仕事の辛い話は理解出来るのだが
母の愚痴は
母に父の心をわかってもらいたい
自分を大事にしてくれ
と、言いたいという内容だ
けいこ） 『なら、今言ってる事を
そのまんま母に言えばいいじゃん
ハードルが高い要求じゃないんだからさ』
でも父は、言ったらおしまいだとか
言ってもわかってもらえないという
そういって父は
いつも心に溜めて
我慢してきたのだ
私は「そうやって腹に溜め込むから
胃腸が悪くなるんだよ
今度の火曜日大腸検査だろ
悪い結果でまんま手術だったら後悔するよ
検査前に自分が思ってる事を話しておきなよ
私ね、子供の頃
オヤジが辛そうにしてるのに話してくれないから
なんで言わねぇんだよって思ってたんだけどさ
なんでなのオヤジ？」
父は「だって子供は
子供の世界で生きとくもんだって思ってさ
ツライとか嫌じゃん
そういう事は大人になってからでいいって思ったんだよ」
けいこ） 「そうかなぁ
私はオヤジが辛い事を話してくれたら
ああ、大人ってそういう事があるんだって
心の準備が出来たと思う
だから知りたかったし
当時の嫌な事があって
毎日死にてえって思う気持ちがあるあんたのガキが
オヤジのツライを理解出来ないとは思わない
私はあの時オヤジの助けになりたかったんだよ」
父はちょっと信じられない顔をしたので
私はその場にいた自分の子供に聞いた
けいこ） 「ねぇ、ママがお前にツライと思った事を話して
お前はそれが受け止められない事があったか？
そんな事は大人になってからでいいと思った事はあったか？」
子供はちょっと回想してから
「ないね～」と、あっさり返したのを見て
父はたまげていた
大人が大事だって思ってる事
子供にとっては大事じゃないかも知れない
大人がまだ子供だから
わからないと思っている事
ひょっとして子供は知りたいかもしれない
大人がツライと思っている時
子供は助けたいと思っているかも知れない
オヤジよ
貴方と一緒に過ごして私が一番思った事は
本心を
男だから、大人だから、社会人だから
夫婦だからと言って隠すと苦しい事だ
今、苦しいから私に話してるんでしょオヤジ
オヤジは黙って頷いた
人の価値観はあまたあるけど
本心を話さないと
悪いストレス溜るね
オヤジすっかり話して長生きしろよ
とくもりけいこ より
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