真珠湾攻撃と国際法 | 下関在住の素人バイオリン弾きのブログ

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「開戦に関する条約」という条約がある。


加盟国の間で戦争を開始する時は、はっきりとした宣戦布告を事前にしてからでないといけないというものだ。


真珠湾攻撃当時、日本もアメリカも、この条約に加盟していた。


真珠湾攻撃に関する事実関係をおさらいすると、


日本は、真珠湾攻撃とほぼ同時に「交渉打ち切りの通告」をアメリカに伝えようとした。これは真珠湾攻撃開始の1時間後にアメリカ側に届いた。


ただし、これは「宣戦布告」ではない。


「交渉打ち切り」と宣戦布告は別物だ。


これが事前に届いていたとしても、国際法違反であることには変わりない。


正式な「宣戦布告の詔書」は、真珠湾攻撃開始からおよそ半日遅れで発表された。


この「宣戦布告」には、「国際法を順守して」という文言はない。


(これに対して、日清戦争、日露戦争の宣戦布告にはそのような文言が入っていた。)


なぜかというと、中立国だったタイ王国のシンゴラ湾に上陸作戦を行なう予定で、


わざとそのような文言を入れなかったと言われている。


(タイが同意をしなかった場合、国際法違反になるということ)。


この詔書の文案を見た昭和天皇は、この点について、繰り返し疑問を表されたそうだ。


しかし、東条首相は、タイ領に関する作戦について言及し、国際法遵守の文言を入れようとしなかったそうだ。


最終的に昭和天皇は国際法を守ること、宣戦布告をしてから攻撃することの2点を条件として、この詔書の文案を容認された。


が、真珠湾攻撃を見れば明瞭な通り、この2点は最初から完全に無視されたわけだ。


戦時中や戦後の連合国側の日本に対する行為について、「国際法違反だ」とする主張を耳にすることがあるが、


そういう論者が、他方では自国の国際法違反(中国に関する9か国条約違反や真珠湾攻撃)については軽視していることが多いと感じる。


そのようでは、議論に説得力がないのではなかろうかと、ひそかに心配している。


「開戦に関する条約」のウィキペディアの説明はこちら。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%8B%E6%88%A6%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%9D%A1%E7%B4%84


宣戦布告の詔書はこちら。

http://ja.wikisource.org/wiki/%E7%B1%B3%E5%9C%8B%E5%8F%8A%E8%8B%B1%E5%9C%8B%E3%83%8B%E5%B0%8D%E3%82%B9%E3%83%AB%E5%AE%A3%E6%88%B0%E3%83%8E%E8%A9%94%E6%9B%B8


以下は、12月23日追記


日米開戦に関して、一つずっと気になっていたことがあった。


それは「フライイング・タイガース」という航空部隊だ。


真珠湾攻撃よりかなり前、1人の米軍の空軍将校が退役し、蒋介石の中国国民党軍に軍事顧問として雇われた。


これだけでも、アメリカの中立性に疑問が出てこないわけではない。


しかし、もっと大きな事情ができてくる。


その将校シェンノートの働きにより、ルーズベルト大統領の了解のもとに、アメリカ側の資金を使って、アメリカが中国に義勇軍を派遣する計画が開始された。


シャンノートが募集し、選抜した兵士が、表面上米軍を退職し、東南アジア経由で、中国大陸に渡っている。


東南アジアにて、正式に中国国民党軍に編入されている。


当時、日本と中国は武力衝突の真っ最中だった。


派遣されている兵士が米軍を退職したのは、表面上で、給与は支給されており、作戦終了後の米軍への復帰も約束されていた。


武力衝突の当事者の一方に、兵士を派遣するのは、派遣した国も、武力衝突の当事者と見られても仕方ない。


ただし、その「義勇軍」が訓練中に真珠湾攻撃があり、実戦に参加するのは、その後だが。


こうしてみると、アメリカ側も、真珠湾攻撃前に実質的に武力紛争の当事者になっていたと言えることが分かる。


そもそも日中戦争は、宣戦布告なしで開始され、継続されていた。


その事変に参加したわけだから、米側が日本によって武力攻撃をしかけられても仕方ない面がある。


日本側の「開戦に関する条約」違反の事実は変わらないが、その国際法違反の瑕疵は、米側が先に実質的に当事者となる行為をしていたことによって、かなり相殺されるだろう。


こうして、今度は米側の行為が国際法の見地から問題となるが、結局日中戦争が始まった経緯をすべて検討することが必要になってくるのであり、


今回の記事は真珠湾攻撃は国際法違反であったが、一方的に日本が指弾されねばならないわけではない事情も存することを指摘して、結びとしたい。