「過ぎたるは及ばざるよりまされり」という言葉は、
「よいことをやりすぎる場合と、やり足りない場合とを比較すると、
やり足りない場合の方が、いい結果に結びつく」という意味だ。
よいことをやりすぎると、どうしてよくないのだろう。
言い換えると、善が過剰になると、悪になること、
中庸が一番いいことの理由を探りたい。
善を過剰に行なう人は、
自らを世間の水準より高い人々の一員だと考える。
そして、その集団は、社会のごく一部で、少数派だ。
自らの行なっている水準まで善を行わないといけないと考えたからこそ、
そうしたわけで、となると、それ以下の善を行なっている人に、
当然満足できない。
つまり、少数派である自分たち以外に対して、
不満を感じるわけだ。
しかも、多数派に対して不満を感じるので、
生活の多くの部分で、不満を感じて過ごすことになる。
そうなると、心が狭くなる。
不満で一杯で狭い心から生まれて来るものは、
憎悪がこもった言動ばかりになる。
こうして、善の過剰は、悪を生むのだ。
ここに多くの理想主義が悲劇をもたらした原因がある。