「時空のからくり」を読みました | 凝り性 勝之進のこだわり日記

凝り性 勝之進のこだわり日記

★Livin' On A Prayer★Once upon a time Not so long ago・・・ 
 

年度末に向け、忙しいにも程がある状態が
続いています。
 
こういう時、勝之進は、なぜか物理数学系の
本を読みたくなるので、「時空のからくり」
(ブルーバックス、2017年・山田克哉先生著)
という本を読みました。

 

先日読んだ「進化のからくり」(千葉聡先生著)
に続く「からくりシリーズ」です。
 
実は、ブルーバックスには、
「からくりシリーズ」が他にもあって、

「真空のからくり」(2014)
「量子力学のからくり」(2014)
「光と電気のからくり」(2014)
「E=mc2のからくり」(2018)
「重力のからくり」(2023)

の5冊が出版されていますが、実は
全て同じ山田克哉先生が書いたものなのです。

いかに入門書と言えども、これらのテーマで
6冊も本が書けるとは、なんとも驚きの知識量です。

さて、内容ですが、本書は、
宇宙物理学、特殊相対性理論、
一般相対性理論、原始重力波、
インフレーション理論などに
興味を持ち、ある程度の知識がないと
最後まで読み切れない内容に
なっています。

そもそも興味がない人は、
この思わせぶりなタイトルの本を
買うこともないでしょうが
要は、ムツカシイということです。

しかし、勝之進は、直球ど真ん中の
大好き分野ですので、めっちゃ楽しく
読めました。

それでは、時空の扉を開きましょう。

もちろん、勝之進の私的備忘用ですので
物理好きの人以外はまるっと
飛ばして頂いて結構です。

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◆重力場の存在しない空間では
光は直進します。

逆に、極めて強い重力場が存在する
真空空間では光は曲がって進みます。

光には質量がありませんが、
重力場によって曲がるのは、
質量の大きい星の周辺の空間が曲がり、
時間が遅くなっているためです。

光は、その空間の曲がりに沿って
最短距離を進んでいるだけです。

光の性質を理解するための基礎知識として、
次の4点を知っておく必要があります。

1,等速直線運動
2,光速度不変の法則
3、慣性座標系
4,座標系の設定

2つの慣性系座標には相対速度があり、
同じボールを2つの慣性系座標で
表現できますが、「座標変換」
(4次元時空における座標変換は
「ローレンツ座標変換」といいます)
に対して物理法則が不変であることを
「相対性の原理」と言います。

アインシュタインは、4次元の時間において、
ニュートンが想定した「絶対時間」や
「絶対静止」は存在せず、すべては
相対的であることを発見したのです。

その中で、特殊相対性理論は、
重力の無い世界を「等速直線運動」をする
慣性座標系にしかあてはまらないことから
「特殊」と呼ばれています。

重力を扱う場合は、直進・曲進し、
加速・減速している慣性座標系が登場し、
その時空に当てはまる法則が
普遍の「一般」相対性理論なのです。

◆風船を膨らましていくと、
表面に書かれた3つの点は、相互に、
どの点から見ても距離が遠くなっていきます。
これが宇宙膨張に一番近いイメージです。

そのスピードを計測したうえで逆算し、
もともと、どのくらい密集して
小さかったのかを計算すると、

最初の宇宙はおよそ138億年前に
始まったことが判明します。

この最初の超絶インフレーションによる
空間膨張の速度は光の速度を越えています。

これは真空エネルギー、すなわち、
インフラトン場と呼ばれるものによる
爆発であり、この時の「量子のゆらぎ」が
「時空のゆらぎ」を生んだとされています。

ビッグバン後は、膨らむ宇宙の「断熱膨張」
により、火の玉宇宙の温度は下り、
素粒子がくっつき始め、
光子がぶつからなくなり、
創世から38万年後に宇宙は晴れ上がります。
この時の残光が「宇宙背景放射」です。

重力加速度、
ドップラー効果、
重力ポテンシャル(高低)
重力ポテンシャルエネルギー(大小)
については説明を省きます。

重力ポテンシャルの差により、
地上の時間の進み方と、
高度1万メートルの飛行機に
乗った人の時間の進み方は
地上の方がわずかに遅くなり、
相対的に飛行機の乗った人は
わずかに早くなることを
覚えておきましょう。

「慣性質量」は曲がったり、
止まったりすること嫌う力であり、
「重力質量」は物質そのものが
引き合う万有引力です。

それぞれ違う力ですが、数値的には、
なんと、慣性質量は重力質量と
等しくなります。

巨星から出る光は、重力に逆らって
飛び出ることでエネルギーを失い、
振動数が激減し、光の波長が
大きく引き伸ばされます。

重力の大きい巨星での時間は
地球より遅く進むことになり、
この状態を
「巨星では時間が曲がる」
と表現します。

◆エレベーターの鎖が切れて
自由落下した時、
手に持っていたスマホは、
自分と一緒に、地面に対して
同じスピードで落下するため、
目の前で「浮いて」見えます。
これが無重力状態です。

自分もスマホも、重力と遠心力=慣性力が
拮抗してかかっており、相殺されて無重力
状態になっているのです。

実は、宇宙のどこへいっても重力場は存在し、
地球自身も含めて全ての物は、
重力のなすがままに動いてます。

例えば月も、地球に引っ張られながら、
円の接線方向に自由落下しています。

自由落下する状態の物体は、
重力を「感じない」状態であり、
無重力状態です。

その無重力状態は、慣性座標系になっており、
X,Y、Z、cTの4次元で表現される
「ミンコフスキー4次元時空座標系」
(重力が働かない時空)で表現できます。

この延長線上に「局所慣性系」という
概念が出てきます。

◆地上に、ある物体Aを置いて、
月にも、別の物体Bを置くと、
なにが起きるでしょうか?

地上の物体Aが作り出した重力場は
光の速度で真空空間を伝わり、
1.3秒でBに到着します。

BからAへも重力場が伝わり、
その相互作用で重力が発生します。

その伝達は瞬時ではなく、
光が届く時間分の時差があることが
重要です。

重力場は、真空空間の中で、
重力を光速で「運ぶ」のですが、

光速と言えども有限の速度ですので、
重力は発生と「同時に」他の物体に
影響するわけではないのです。

そして、周囲に電子があるかどうか、
真空かどうかに関わらず、
星の周りには重力場が存在します。

◆もう一つ重要な原理は、
加速効果と重力効果は区別できない、
という「等価原理」です。

重力が光を曲げるのですが、
直接引っ張るという感覚ではなく、
重力が空間を曲げるため、
光はその空間の曲がりに沿って動く
というイメージです。

実は、空間を曲げる要因は重力/質量
だけではありません。エネルギーと
運動量も空間を曲げるのですが、

様々な理由で曲げられた「時空のゆがみ」が
「重力にとってかわる」というのが
一般相対性理論の根本的考え方です。

恐るべし、アインシュタイン!

◆次は、いよいよテンソルの登場です。

本書は、テンソルを使った
アインシュタイン方程式を
極力、数学的記述をせずに
わかりやすく説明する、という難題に挑んだ本
と言っても過言ではないでしょう。

では「テンソル」とはなんでしょうか
本書では、「特定の座標変換に従うもの」、
などと表現されていますが、
さっぱりわかりませんね。

テンソルとは、直感的に言うと、
時空のまがりを表す4×4の行列
のようなもの、です。

数学的には、個々の成分である
「計量テンソル」が局所局所における
時空のゆがみを表現していて、

4×4の行列を見ると、その空間が
どのように歪んだ重力場であるかが
わかる、ということなのです。

記号でいうとGに小文字でμ(ミュー)と
v(ブイ)が添えられ、成分の組み合わせを
一括して表現します。

テンソルを理解しないと、
アインシュタイン方程式に
辿り着きませんのでさらに続けます。

計量テンソルの数値が全て固定値の場合は、
その空間は曲がっていない(=重力がない)
ことを意味します。

これを「ミンコフスキー時空」といい
ギリシャ文字のη(イータ)で表します。

逆に計量テンソルが時間や場所に依存する値に
なっている場合は、空間が曲がっていることを
意味します。

空間がどのくらい曲がっているかは、
まっ平らなミンコフスキー時空と
どれくらいズレているかを見ればよい、
ということになります。

真球の周りをまわる2本の矢印線が
一周して交わる時の角度を計測すると、
その曲面の曲がり方がわかるのですが
その曲がりかたを表したものが
「リーマン曲率テンソル」です。

この曲がった時空をRにμとvを添えた
Rμvと表現し「リッチテンソル」
と呼びます。
 
曲がり度合を表している
という意味は、計量テンソルGμvの
座標に対する微分がRμvになっている、
ということです。

GもηもRも、左上から右下に向かう
対角線に対して対称、という特徴が
あります。これはμとvを交換しても
テンソルが変わらないという意味です。

この対称性により、Rμvの独立成分は
10個ということになります。

アインシュタイン方程式を理解するには
あと2つの数学が必要です。

◆一つはμやvが添えられていないRです。
これは、成分を持たないリッチテンソルであり、
「スカラー曲率」と呼ばれ、これも
時空の曲がり具合を表しています。

乱暴に言うと、光速をCで表すように
テンソルワールドにおける定数のようなものを
イメージしておきましょう。

最後の要素がTです。
Tμvは、質量、エネルギー、運動量を表す
テンソルです。

時空を曲げる原因は質量(m)、
エネルギー(E)、運動量なのですが、
その要素は、E=mc2で表される通り、
お互いに変換が可能です。
(原子爆弾の理論的原理!)

即ち、「時空を曲げる要素」がどのような
物理量なのかを表現したものがTμvです。

これで準備は整いました。

◆それでは、いよいよ
アインシュタイン方程式の登場です

Rμv - (1/2)× Gμv × R
=(8πG/C・4乗)× Tμv

文字で書くと解りにくいので、
本書からとった画像を上げておきます。
 


左辺は「アインシュタイン・テンソル」
Gμvの係数は「宇宙定数」
(8πG/C・4乗)は「アインシュタイン重力定数」
といいます。
 
◆これは一体、何を言っているのでしょうか?

左辺は「時空の曲率」を表しています。

右辺は「質量、エネルギー、運動量など、
時空を曲げる原因となる変数成分」
を表しています。

そして、テンソルをイコールで繋いだ
この方程式は、10個の連立微分方程式に
なっているのです。

即ち、アインシュシュタイン方程式を解く
ということは、
「10個の計量テンソルの成分を求める」
ことと同義であり、

時間と位置(場所)の関数である
計量テンソルを算出することを意味するため、
 
その各場所、各時間での
「局所的な時空の曲がり具合」が
解ることになります。
 
その答えを集めて統合していくと、
もっと広範囲の時空について
どこがどの程度曲がっているかがわかり、
重力場が見える化される、
ということなのです。
 
ただし、アインシュタイン方程式は
「球対称に質量が分布している時空」
に対してしか解けないという限界も
あるため、さらなる研究が進められて
います。

アインシュタイン方程式の意味が
少し理解できましたね。

なるほど、なるほど。いやはや、
これは、もの凄く深い方程式であります。
    
これで、アインシュタイン方程式について
少し語れるようになりました。
 
残念ながら、私の周辺に、この話を
聞いてくれる人はいませんが。。。(笑)
 
   学習が進むと気分が晴れ上がりますね♪。。。マニア勝之進