「進化のからくり」を読みました | 凝り性 勝之進のこだわり日記

凝り性 勝之進のこだわり日記

★Livin' On A Prayer★Once upon a time Not so long ago・・・ 
 

勝之進は進化論に関する話が好きで、
過去には「進化の謎を数学で解く」
(文芸春秋)や、

「進化論はいかに進化したか」
(新潮新調選書)などの本を読んで来ました。

「進化の謎を数学で解く」を読みました | 凝り性 勝之進のこだわり日記 (ameblo.jp)

今回読んだのは「進化のからくり」
(講談社ブルーバックス)という本で、
著者は東北大学の千葉聡教授です。
千葉先生は、小笠原諸島の世界遺産登録に
大きく貢献したことでも知られています。
 
先生が「小笠原諸島には、固有種である
カタマイマイが20種類以上も
生息している」と主張したことが、
世界遺産認定の大きな一歩になったのです。
 
◆勝之進は、題名に誘われて、
進化のからくりに少しでも迫れれば、
と思って読みました。

---(ここから長いです)---

◆みなさんは、ガラパゴス諸島にいた
ロンサム・ジョージというピンタゾウガメ
の話をご存じでしょうか?

1972年に保護されたこのゾウガメは
絶滅したとされていたピンタゾウガメの
最後の生き残りでした。

学者たちは、たった一匹になってしまった
孤独な雄に、交配可能な近縁種の雌ガメを
近づけてみたものの、うまくいかず、

結局、最後まで子孫を残すことが
できないまま、ジョージは約40年後の
2012年に亡くなりました。
 
ジョージの死により、ピンタゾウガメは
絶滅しました。100歳の大往生でした。

◆この話で思うのは、もし仮に、
近縁種と交配して新しいカメが
生まれたとしても、それは
ピンタゾウガメといえるのか、
という疑問です。

種が異なると、子孫を残せず、
種が同じなら、子孫が残せる、
というのが通説ですので、
 
ジョージが近縁種と交配しなかったのも
頷けます。
 
果たして、ジョージには、目の前の
雌ガメがピンゾウガメかどうか
わかっていたのでしょうか。
 
今となっては、それも不明ですが、
種の保存とは、さように難しい
営みなのであります。。。

◆同様の事例として、本書には、
「孤独なジェレミー」が登場します。

ジェレミーは、「ヒメリンゴマイマイ」
というカタツムリで、2016年に
確保された一匹についた名前です。

ヒメリンゴマイマイは、
ガーデン・スネイルとも呼ばれ、
エスカルゴなどの食用に使われる
ごくありふれたカタツムリです。

では、ジェレミーは、なぜ、
名前が付けられるほどに有名に
なったのでしょうか。

それは、ジェレミーの貝殻が左巻き
(反時計回り巻き)だったからです。

実は、ヒメリンゴマイマイは殆ど全てが
右巻き(時計回り)の貝なのです。

左巻きの確率は、なんと、宝くじ並みの
100万分の1です。

◆実は、右巻きのヒメリンゴマイマイは、
体の右側に生殖口があり、右巻きと
右巻きならば容易に交配ができます。

しかし、左巻きの場合は、生殖口が
体の左にあるため、右巻とはうまく
交尾できないのです。

ジェレミーの左巻きの遺伝子を
分析したい英国の学者達は、左巻きの
ヒメリンゴマイマイを探して欲しいと
世界に呼びかけました。

2016年、19億人が見たとされる
このニュースをきっかけに、
英国で1体、スペインで1体が発見され、
ジェレミーのもとへ送られました。

◆英国産はレフティ、スペイン産は
トメウと名付けられ、ジェレミーに
引き合わされましたが、この話は
実に皮肉な展開になりました。

レフティはトメウが
気に入ってしまったのです。

二人からは170匹の子供が生まれましたが、
孤独なジェレミーは相手にされませんでした。

そして、その170匹は、驚いたことに
全て右巻きでした。

◆しかし、その後、ジェレミーはトメウに
アタックして交尾に成功し、56匹の子孫が
生まれたのですが、この56匹も全て
右巻きでした。

こうして、100万に一匹のジェレミーは、
左巻きの子孫を作ることができないまま、
2017年10月12日に亡くなりました。

◆その後、カタツムリの右巻きと左巻きは、
本当に交配できないのかという研究がなされ、
 
調査の結果、ヒダリマキマイマイ(左巻き)と
ミスジマイマイ(右巻き)が交配している
写真が発見され、巻き方が異なっていても
交配可能であることが証明されました。

こんなことなら、ジェレミーに右巻きを
引き合わせてもよかったかもしれませんね。

◆しかし、左巻きの子孫が誕生しなかった
ことにより、ヒメリンゴマイマイに
何故、左巻きが現れるのかは、
未だに分かっていません。

◆全く同様に、ヒトにも左利きの方がいます。
日本人では約10%、オランダ人は16%、
アメリカ人は2%(そのかわり両利きが30%!)
とされ、人類平均は約10%なのだそうです。

さらに驚いたことに、内臓の位置が、
一般の人と完全に逆になっている人もいます。
まさに、北斗の拳の聖帝サウザーです。

これを「完全内臓逆位」といい、
1万人に1人はいるそうですが、
成人まで生きられない場合も
多いそうです。

◆ただ、左利きであろうと、
完全内臓逆位であろうと、
子孫を残せる以上、人であることに
変わりはありません。

それでは、どのような状態になると
交配不能となり、種が枝別れ
してしまうのでしょうか。

◆本書では「カワニナ」という二枚貝の
研究で知られる高知大学の三浦博士が、
 
琵琶湖にいた2種のカワニナが、
40万年の時を経て、15種のカワニナに
枝分かれしたことを突き止めた
と書いてありました。

ダーウィン・フィンチのくちばしの謎と同様、
種はどこかで分岐したうえで、
種を越えた交配をしなくなるのです。

◆その謎に答える一つの説明が、
108ページに書いてありましたので
引用します。

「新しい世界では、初めは、どの集団も
異なるニッチを幅広く利用し、
自由に交流していたはずである。
 
だが特定のニッチだけを利用するように
集団の専門化が進むにつれ、それらの間の
交流を阻害する障壁ができてくる。
 
その結果、異なるニッチに適応した
多数の種が進化する『適応拡散』
と呼ばれる多様化が起きるのであろう」

◆種の枝分かれがなぜ起きるのかを
考えていくと、神の領域に近づいていく
気もしますが、
 
そうしたことを考えさせられる本、
という意味で、本書は実に
おもしろい本でありました。

表紙帯の「むっちゃおもろい」は
誇張ではありませんので、
進化論に興味のある皆様には、
是非オススメします。

   二ホンウナギは絶滅危惧種。。。勝之進