葉室麟「嵯峨野花譜」感想 | 凝り性 勝之進のこだわり日記

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★Livin' On A Prayer★Once upon a time Not so long ago・・・ 
 

葉室先生の全作品読破を目指し、
今日は「嵯峨野花譜」を読みました。

葉室先生は花に造詣が深く、
椿、辛夷、蛍草、さわらびなど、
題名になっている草花も多く、
葉室作品は、要所で花が
登場します。

本作品は、花が主役の物語であり、
花をいける若き僧・胤舜の
成長の物語です。

胤舜は老中・水野忠邦の子であり、
母は病の萩尾、供には元・武士の
源助が控え、危機には源助が勇躍します。

父親である忠邦が出世のために
見捨てた者たちが、子である胤舜に
恨みの手を伸ばす中で、
 
胤舜は、その哀しみを受け止め、
心のままに花をいけていきます。

すがすがしさと現世の哀しみが
生け花を通じて交錯する
本書を読みながら、

葉室先生は、
生け花の世界に写しだされる
人の心の想いを描きたかった
のだろうなぁ、と思いました。

おりしも、今朝の皇居ランの
帰り道では朝顔が咲いていました。

本書の「朝顔草紙」を読んだ
あとだったので、いつもより
感傷を込めて写真を撮りました。



(261Pより抜粋)

「竹筒に活けられていたのは、
まだ瑞々しく咲いている青い朝顔だった。

十字の枝に朝顔の蔓が巻き付けられ、
ちょうど十字の結び目あたりに
朝顔の花が来ていた。

雅秀様の父上は罪を問われ、
いわば磔柱に架けられたと存じます。

しかし、それは真の罪ゆえではなく、
雅秀様への慈しみから
 
大いなる思いで磔柱に
上がられたのでございます。
 
それゆえ、清く美しい青い朝顔こそが
父君様の心にふさわしいと存じました」
 
深くて、静かな心の動きを
感じられる名作でありました。
 
    皇居は「あざみ」が沢山咲いてました。。。勝之進