第七章 2020年~ 

      ( 新 時 代 )

 

 (93) 画期的新製品

     (防水バッグ)

 

コロナ渦の行動制限から

色々な事を考える時間が

できた事は、

むしろ私の中では

大きな収穫だった。

一時は会社継承を

「そろそろ」などと

考えてしまった時期もあったが、

現在のこのコロナ渦の苦戦を

どのようにして乗り切るか?

これまで私が経験した

トキワでの44年間を振り返り

次世代へその経験を提言、

私自身も自ら行動しなくてはと

思った。

その私からの提言は、

「成長期に新製品有り」

これまでのその経験から

再現をすべく、

私のスイッチは入った。

 

トキワは元来、

「レインウエア」など

防水衣料品のメ-カ-。

しかもその防水に関しては

「完全防水」を追求してきた。

その完全防水に不可欠な3原則とは、

まず、生地そのものがJIS規格の

「耐水圧」試験をクリアした

一般的な傘に使用されている生地の

20倍以上の防水性を持つ生地で

あること。

次に製品を縫製したミシン目には

全て裏側から防水テープをシール、

小さな針穴と言えども

そこからの漏水を防ぐこと。

そして3つ目は製品の仕立て、

つまり本体の構造上で

防水対応をすること。

これが我々の追求する

「完全防水の3原則」だ。

 

世の大方の人は、

雨が降った時に

使用する雨具は「傘」。

ところがトキワが販売する

レインウエアは、

その傘を差すことが出来ない状況で

使用する雨具。

つまり誰もが使用する雨具では

ないことから、

その特長は中々理解されていない。

そこでトキワが長年培った

完全防水を追求するノウハウを

日用品で商品化して、

その奥深さや利便性を

知っていただく事は

トキワにとって

長年の想いでもあった。

 

そんなある時、

濡れた折り畳み傘の収納に

困っている人が多い事を知った。

そこで我々が使用する完全防水布で

その「傘ケ-ス」を作ればと

試作を何度も繰り返したが、

我々の最大の特長である

防水テープのシ-ル加工が

本体の大きさからして

物理的に不可能な為に断念。

 

今度は、

こんにち1人3~4つ

持っている「エコバック」に挑戦。

雨の日専用の

防水性に優れたエコバックは

市場に出回っていない事から

「防水エコバック」を考案、

2021年春に上市した。

 

  「雨先案内人 防水エコバッグ」   

    ハローキティ バージョン

 

   

本来、我々の最大の特長である

防水テープを施すことが大前提

ではあったものの

今度はこの製品の構造上、

技術的に難しかった。

ところが、

我々専門家の想いは他所に

一般消費者は、

そこまでの防水性を

気にしておらず、

製品本体の生地そのものから

浸み込んでこないだけでも

これまでにない製品だと

評価された。

 

しかし私個人的には、

当初の目的を

実現していない事から

どうしても納得ができなかった。

現在のように、

「ものづくり」の大半を

海外へ依存している時代と違い

私の20代から30代前半は

ほとんどが国内生産。

その生産管理に

20年以上携わった私としては、

当時取得したノウハウを

今こそ、現在生産する

海外工場に指導すべき

と考えた。

そこで私は製品の裁断様式と

そこに施す防水テープの

貼り方を直接指導。

ついに防水テープを施した

第二弾の「防水バック」が

完成した。

 

   製品に挿入されたリフレット

 

我々が長年培った

レインウエアにおける

「完全防水追求の3原則」、

その全ての原理を兼ね備えた

この防水バッグを、

2023年6月1日、

新製品として発売した。

 

この拡販に追い風となったのは、

この製品を東京都の公的団体へ

申請、狭き門をくぐり、

「支援商品」に採択された。

現在その東京都の営業部隊が、

販路開拓に企業や団体に

同行をしてくれている。

その訪問先からは、

エコバックとしての用途のみならず

多様性を持った

言わば「防水マルチバッグ」として

高い評価を受け、

各メディアでも

取り上げられ始めた。

 

You Tube チャンネル

   JoynTV

 

それは我々が使用シーンとして

打ち出した事ばかりでなく

業者や消費者から

その使用目的と使い勝手を

逆に教わるほどだった。

改めて、

我々が商売柄望む雨の日は、

一般の方々にとって、

様々な問題を抱えていることが

浮き彫りとなった。

 

雨の日だけではない。

「目からウロコ」は、

某会社のバイヤーの一言。

「 外からの雨が、

  中へ入らないという事は

    仮に中へ水を貯めたら

    外には漏れないという

    解釈で宜しいですか?」

うなずく我々にすぐさま

そのバイヤーは、

「 これは災害時の

    給水バッグとして

    防災用品に

    なりますよ!」

 

日本赤十字社の最高議決機関

「代議員会」。

その代議員の私の立場を

活用させていただき、

早速、日赤の災害救護班に

集まっていただきヒヤリング。

 

「 これは給水用に良いです。

  コンパクトになるから

    常備しやすいし、

    給水時には肩にも

    担げるので水を運び易い。

    これまで使われて来た

    ポリタンクとは又違った

 利点が多々あります。」

更に、

「 防水性が完ぺきなので

  災害時に通帳や印鑑などの

  貴重品入れにも

    良いですね。」

お墨付きをいただいた。

 

又、この製品の本体に

アウトポケットを付けて

濡れた傘を

単独で収納できるようにした。

かつて断念した「傘ケース」を

違う方法で実現したわけである。

これは量産の寸前、

社員の福谷美穂からのアイデアで

急遽付加した。

こうして、

これまでのトキワにない、

ある種、悲願でもあった

世の誰もが必要とする

唯一無二の画期的な新商品

「防水バッグ」の販売に

現在、会社をあげて

力を入れている。

 

そして私自身も又、

自らが技術指導をして

実現したこの商品誕生までの

ストーリーを

販売先相手に

熱く語っている。

 

(つづく)