気仙沼で、「きらり!えん旅」の収録!5月16日放送です! | 加藤登紀子オフィシャルブログ「Tokiko Kiss」Powered by Ameba

気仙沼で、「きらり!えん旅」の収録!5月16日放送です!

去年の2月11日に支援ライブをして以来一年ぶり。気仙沼で、NHKの番組、「きらり!えん旅」の収録をした。
存続するかどうかで揺れている共徳丸のある鹿折地区あたりも、すっかり瓦礫が片付いているけれど、改めて気仙沼の被災地の途方もない広さに、ため息が出た。
人口6万9千人、1040人の死者、240人の行方不明者という数字だけでも胸が痛いけれど、南北に長く、入り組んだ海岸線の複雑な地形のあちこちに、津波に流されて何もなくなった被災の街を幾つも見ると、本当に大変なことだな~と、改めて思う。

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<写真:共徳丸>

それでも気丈な陽気さに支えられた、あふれんばかりの笑顔に行く先々で出会う!
一日目に訪ねた仮設商店街、南町紫市場や、復興屋台村では、自慢のメニューで店を構えた人たちが元気いっぱい迎えてくれた。
次々覗き込んだお店で、昼間なのにお酒を頂いたり、旧知の友達みたいに話し込んだり…
美味しいものを頂き、笑顔に出会う嬉しい時間。
こんなことでいいのかしら、と申し訳なく思っていた気持ちを一気に引き締められたのは、「リアス・アーク美術館」。
震災から二年、この4月から開かれている「東日本大震災の記録と津波の災害史」の常設展を見た。

震災のその日から、記録を残そうと写真を撮り、被災物を集めた学芸員の苦闘の結晶!
自分自身の住んでいた建物のゆがんだ鉄骨から、どれほどの力が加えられたかと驚くほど変形したクルマの車体、焼けたドラム缶、そして、家族の暮らしが伝わる、ぬいぐるみや、電気釜や、本など、たくさんの物が胸に飛び込んでくる。
「これらのものは決して瓦礫じゃない、被災した物なんです」と学芸員の山内宏泰さんは言う。

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<写真:学芸員の山内宏泰さん>

「津波避難所からやっと自分の家のあったところに戻って見たら、もうなんにも残っていなかった、という人もいます。それは本当にショックですよ。見るのが辛いという人もありますが、僕は、出来るだけキチンと向き合い記憶に残していくべきだ、と。それが僕らの責任だ、と思います。」

彼の強い言葉に悲しみの深さと、これからの未来に向かうものとしての覚悟を感じた。
震災から2年、地元の人たちも、改めて向き合おうという人たちが増えてきているという。これまで行けなかった方で、被災地を見ておきたいという方は、ぜひ見に行ってください。みんなで心を寄せ、共有して行きましょう。
次の日はフェリーに乗って気仙沼大島に渡った。
ここにも満開の椿と美しい海、そして、元気いっぱいの女の人たち。
この島の年寄りたちも、この椿油を髪につけていたので、髪が黒々して、女っぷりが昔から飛び切りだったそうだ。

震災の時、亀山に火が回り、恐ろしいほどの火災になり、一時は孤絶の島になったことで、大きなニュースになっていた。実際、3ヶ月もの間、電気が来なかった。電気がないと、水もないというのも悲しい話。
それでも女の人たちはじっとはしていない。雨の水を集め、湧き水を探し、洗濯をし、ご飯を炊いてきた。その大変な中で生まれたのが大切なコミュニティだ!

着物の端布を使った手芸を皆でしている「おぢゃのみ工房」にたくさんの女性達が集まってくれた。工夫を凝らした可愛いグッズにもひとつひとつ、願いが込められている。

3日目には大谷海岸の日門漁港で、「大漁唄い込み」を聞かせたもらい、私も加わって歌った。定置網漁の盛んなこの漁港、今は再開がいつになるのか、全くわからない辛い状況。みんなの気持ちをひとつにするために、と昔のままの大漁旗を染め、道具を作り直し、この唄い込みを再開したそうだ。

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海の中には陸から流された膨大なものが沈んでいて、定置網をかけることができない。港から少しずつ船は出ているし、わかめ漁や牡蠣の養殖は始まっているけれど、定置網はまだまだのようだ。
それでも精一杯歌う人たちの表情は輝いて、これこそが歌の力だ、と胸の熱くなる想いだった。

最後は、唐桑半島の「燦さん館」で私のミニ・コンサートを開いた。
去年の夏、「わせねでや」を一緒にレコーディングした「みちの空」との共演。
太鼓グループの「閃雷」の5人、気仙沼出身のシンガーソングライター熊谷育美さん、ベースの黒瀬寛幸、ギターの斎藤洋介、そして「わせねでや」を作曲したヒザシくん。この大所帯での凄いライブになった。

勢ぞろいの「百万本のバラ」で幕を開け、「閃雷」と熊谷郁美さん、それぞれのソロ。そして、私のギターの弾き語りで「今どこにいますか」「知床旅情」。震災からの思い出が一気に蘇り、胸に迫ってくる。
ここから後は、新しい歌を聞いて頂いた。
ラジオ深夜便の歌として、今流れている「過ぎし日のラブレター」と、「青いこいのぼりと白いカーネーション」。

この歌は震災で父親、母親を亡くした少年のエピソードを歌っている。
会場からすすり泣く声が聞こえ、慟哭が伝わってくる。
辛いことを忘れたい人もあるかもしれないが、悲しみに寄り添う歌でその心を支えたいと思う。

沈んだ空気を跳ね返すように、そこから最後までは、「みちの空」との共演だ。
笛の音色が心に沁みる「命結-ぬちゆい」、一気に盛り上がる「わせねでや」。そしてとどめの「風歌」。
「みちの空」と歌う「風歌」は本当に胸がすくようで、地の底から力が湧いてくる。民謡の強さと、ロック的な勢いの合体の魅力だ。
「閃雷」のメンバーとの共演、「みちの空」の可能性が、またぐっと広がったライブだった。

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自然の大きな力を目の当たりにしたこの震災の経験を、私たち自身の力に変えて行くためにも、奮起して生きていかなくちゃね!
コンサート後に見送ってくれた人たちの、熱い想いを、大切にしたいと思う。
5月16日(木)の放送(NHK BSプレミアム19:30~20:00)を楽しみにしていて下さい。

さて、来週の月曜日、テレビ朝日で人気のクイズ番組「Qさま!!プレッシャーSTUDY」に登場します。京都育ちということで、関西組で出演。東京組と対決しました!火曜日にはTBSテレビの「火曜曲」に生出演します。
ぜひお見逃しなく!

登紀子