こんな時代に生まれた僕が | 雑踏水族館 -Crowd Aquarium-

雑踏水族館 -Crowd Aquarium-

日々の出来事や創作物を展開しています
是非、覗いていってください


手が赤く、紅く染まる

顔にも飛び散ったそれは、静かに滴る


目の前には紅の海

さっきまで熱を持っていた蒼白の塊には穴が開いている

そこから紅が流れ出した


溢れた紅には、一体どんな物語が刻まれていたのだろうか

日が見た記憶は脳と共に紅にも刻まれる


きっと、たくさんの物語があっただろう

それがもう、この塊にはない

僕に向けた殺意の目はもう感じられない

これが元々は動いていた


確かにこの目で見ていたが、今となっては信じられない

踏みつけても動かない

顔を蹴っても動かない


正直、僕にはどうでもいい話だ

初めて見た人間を殺すのは、禁忌を踏んだ気がしたけど


この塊の国は、どんな国だったのだろう

平気で人を殺すような国だったのだろうか

国のために人を殺すような国だったのだろうか



それとも、僕の国と同じように、人情に溢れていたのだろうか



人は死んだら極楽へ行けるという

けど、僕は行けないだろう

人を殺す罪を犯したから


殺人が偉い

勝てばいい

酷い時代だな、今は


いつ死ぬかも分からない世界で、いつ死ぬかも分からない人間に、今殺される人間

この塊がいい例だ


でも、もしかしたら僕が死んでいたかもれない

なら、仕方の無いことかもね


虎が鹿を襲うようなもの

でも、僕ら人間には理性がある

なのに戦って多くの犠牲を出す


意味が分からない


これが大昔の出来事になっている時は、もうこんな事が無いことを祈る

そんな事しか、出来ないから



僕はもっと、密林の奥へ行く

生きるために、死ぬために