あの日の約束をもう一度 | 雑踏水族館 -Crowd Aquarium-

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僕には大切な友達が一人いた

幼稚園の時にすごく仲が良かった


ある時、彼は引っ越してしまった

僕はとても悲しんだ


けれど、一つ約束をした

それは、手紙を書く事

お互いに手紙を書いて出そうって約束した


初めのうちはお互いに出し合っていた

けれど、僕はある日を境に出さなくなってしまった

小学校に上がった時だ

毎日が少し忙しくなったというのもあったけれど、それ以上に他の友達ができたから

出そうと思っても中々書く事が見つからなくて、結局出さずに終わってしまった


彼が頭の良い小学校に行ったと、親から聞いた

きっと彼も忙しくて、僕に手紙を出す暇なんてないだろうと、自分勝手な理由をつけた

そうする事で、約束を破ってしまった罪の意識を軽くしようとしていたのだ


中学校も、普通の中学校へ行った

勉強が僕は嫌いで、遊んでばかりいた

部活が忙しいなどと言い訳をしたこともあった

本格的に勉強しなければと思ったのは中学三年生

その時から僕は頑張って勉強するようになった


しかし、それが実を結ぶことはなかった

結僕は、あまり頭の良くない高校に行った

いつの間にか、彼のことなど忘れてしまっていた

あの出来事が起こるまでは


僕は、苛めにあった

怖くて怖くてたまらなかった


でも、僕は恵まれていた

友達が助けてくれたから

それから苛めはなくなり、苛めてきた彼らとも仲良くなれた

一度孤独という闇を知った僕は彼のことを思い出した


僕が手紙を出さなくなった時、彼は何を思っただろうか

怒っただろうか、気にしなかっただろうか、それとも


僕は勉強を重ねた

彼に会って、そして謝るために

許してもらえなくてもいい、ただ謝りたかった

約束を破ってしまったことを


そして今までの僕からは考えられない大学に入ることができた

けれど、彼はこの大学には来ないだろう

だって、彼からすれば低い大学だったから


そう思っていた時、見覚えのある姿を見た

あの日の面影が残っている、彼だ


思わず声をかけた

でも、彼は振り返ってはくれなかった

怒っているのだろうか、気付かなかっただけなのだろうか、それとも




なら、もう一度作り直そう

崩れてしまったのなら、もう一度


〝初めまして〟


僕は彼に声をかけた

彼は何故か綺麗なものを見るような目で見ていた