不意に手を握られて | 記憶の中のイメージについての回想、とクルマのことも。
渋谷の東急の地下にあるパン屋「アンデルセン」で、マカダミアナッツ&クルミ入りの星型パンを2つ買った。大好物。1個130円は安いと思う。バナナケーキとスコーンも買った。いつも切手みたいなシールをもらうけど、貯めてないのでいらない。ということはどうでも良い。

会計しようと並んでいたら、通路側にいた店員さんが高く手を上げたので、そのレジへ向かった。千円札を出したら、そのお姉さんはおつりを差し出した。もらおうと手を出すと、お姉さんは右手と左手で、僕の手を握り締めた。ぎゅっと。不意に肌と肌の強い接触があって、ドキッとした。仕事で握手する時はなんともないのに。驚いて相手の表情を伺うために目を合わせると、自分より若そうで背の低いお姉さんが、顔をくしゃっとさせて笑っていた。彼女は元気な声で「ありがとうございました」と言った。できるだけ爽やかな笑顔を返そうとしたが、どうだったか。

予想外のタイミングで予想外の人にボディタッチされると、驚く。
ドキドキする。
相手が自分の手を強く握ったぐらいで。
自分が驚いたことに、驚く自分がいる。

まじめに考えると、こうだ。コンビニでもどこでも若いレジ担当者は、ぶっきらぼうにつり銭を放り投げるようなことがよくある。サービスの良い東急でそんなことは無いだろうけど、あまりにサービスが良かったので恋に落ちてしまった、という話。まさか。そんな簡単でもないし、盲目でもない。問題はお姉さんが誰にでもそうなのか、ということ。疑心暗鬼。これって泥沼。ほら、惚れてる。うそうそ。だってもう顔を覚えてないし。手を握り締められた時、どんな心地だったかも忘れた。衝撃だけが残ってる。

そういうのは、パンを買う時に思い出すのが幸せだと思う。
でも、ぶっきらぼうにつり銭を返されてもがっかりしないこと。