慈雨の音 流転の海 第六部

宮本輝 著


いよいよ第六部まで来てしまった。
すでにこの長編を読み終えるのが寂しい。

昭和34年~35年。
戦後の混乱が終わり、自動車が増え、そしてあの、北朝鮮への帰還が始まる時代。

伸仁ももう思春期に入りつつある。

松坂熊吾の家族だけでなく、この長い小説に出てくる人出てくる人、みんな濃密な生活があり感情移入してしまう。
尼崎の蘭月ビルは特に凄まじい。
あのカオスの中で多感な時期を過ごした伸仁を見守り諭し支える大人たちの力量も試されるというものだ。

私が一番好きなのは、ノブちゃんの母、房江。
更年期の、自分自身のコントロールの難しい時期だからこそ応援したくなる。
働くことを厭わない彼女の、日常の小さな幸福にホッとする。
頼む、熊吾。殴らないで!絶対に!