核廃棄物の海洋投棄戦略 | tokaiama20のブログ

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 現在、日本が原子力発電によって蓄積した、通常処理不可能な核廃棄物の総量は、2010年版ATOMICAによれば以下のとおりだが、フクイチ事故前のデータなので、現在は数百倍に膨れ上がっていると思われる。
  https://atomica.jaea.go.jp/data/pdf/ATOMICA_11-02-05-01.pdf.zip

 1. 高レベル放射性廃棄物
 東海再処理工場で生じた高レベル放射性廃液は、同工場内の貯蔵タンクに厳重かつ安全に保管管理され、その保管量は平成21年度末時点において380立方メートルである。また、固体廃棄物(ガラス固化体)の保管量は、平成21年度末時点において、日本原子力研究開発機構に247本、日本原燃(株)に1,445本となっている。

 一方、NDAやAREVA NCに委託した使用済燃料の再処理に伴って発生する高レベル放射性廃棄物は、ガラス固化して安定な形態とされた後、日本の電気事業者に返還されることになっており、平成7年以降、平成22年末までにガラス固化体約1,340本が返還された。
 なお、AREVA NCからの返還(1,310本)は平成19年3月をもって終了している。NDAからは今後10数年間にわたり、年1~2回の割合で約850本が返還される予定となっている。

 2.低レベル放射性廃棄物
 低レベル放射性廃棄物には、(1)原子力発電所の運転及び解体に伴う発電所廃棄物、(2)再処理施設及びMOX燃料加工施設から発生するTRU核種(超ウラン元素、ウランより元素番号の大きい元素の総称)を含む廃棄物、(3)ウランの転換・成型加工・濃縮等に伴うウラン廃棄物、
 そして(4)試験研究炉及び核燃料物質等使用施設をもつ研究所、放射性同位元素の使用施設等から発生するRI・研究所等廃棄物がある。

 (1)発電所廃棄物
 原子力発電所の運転及び定期点検等において発生する低レベル放射性廃棄物(以下、「発電所廃棄物」という)の処理は、各事業者が各発電所内で行い、このうち液体の放射性廃棄物は蒸発濃縮した後、セメント等を用いてドラム缶内に固化し、また、紙・布等の可燃物は焼却した後、ドラム缶に保管している。さらに、プラスチック・金属等の難燃物及び不燃物は、圧縮減容等した後、ドラム缶に保管している。

 これらの発電所廃棄物は、発電所敷地内の貯蔵庫に安全に保管した後、放射能レベルの比較的低いものについては日本原燃六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターに移送して埋設処分される。平成21年度末時点における発電所廃棄物の保管量(200リットルドラム缶換算量)は、約65万本である。

 発電所廃棄物のうち、気体状の放射性廃棄物及び放射能レベルの極めて低い液体の放射性廃棄物は、ろ過等の適切な処理を施し、法令で定められた放出基準値を下回るように厳重な管理を行い、施設外の大気、海洋に放出するなど安全な管理が行われている。今後ともこれらの放出量の低減化に努めていく必要がある。

 (2)TRU核種を含む廃棄物(超ウラン元素、マイナーアクチノイドのような超危険核種)
 TRU核種を含む廃棄物は再処理工場やMOX燃料加工工場で発生するが、日本では、日本原子力研究開発機構及び日本原燃(株)において発生している。平成20年度末時点においての発生量(200リットルドラム缶換算量)は、約145,000本である。

 (3)ウラン廃棄物
 民間のウラン燃料加工事業所、日本原子力研究開発機構のウラン濃縮・加工施設等において生するウラン廃棄物の処理は、各事業所において安全に処理し貯蔵している。平成21年度末時点においての保管量(200リットルドラム缶換算量)は、民間加工業者において約47,000本である

(4)RI・研究所等廃棄物
医療機関及び研究機関等の放射性同位元素(RI)の使用施設等から発生する放射性廃棄物(以下、「RI廃棄物」という)のうち、可燃物、不燃物、無機液体等のRI廃棄物は、(社)日本アイソトープ協会及び日本原子力研究開発機構で焼却処理や圧縮減容処理を行い施設内の貯蔵庫に安全に保管している。平成21年度末時点においてのRI廃棄物の保管量(200リットルドラム缶換算量)は、日本アイソトープ協会において約138,500本である。

 また、日本原子力研究開発機構、大学等の試験研究炉を設置している事業所、核燃料物質使用施設を設置している事業所からも放射性廃棄物(以下、研究所等廃棄物)が発生している。大部分の研究所等廃棄物は、発生した事業所において種々の処理をした後、施設内で安全に保管している。主な発生事業者である日本原子力研究開発機構における保管量(200リットルドラム缶換算量)は、平成21年度末時点において約352,000本である(表2参照)。
**********************************************************
 引用以上

 総量に関して、わかりやすい比喩が困難なので、14年前のATOMICA=PDFを抜粋引用した。この数年の最新データは検索しても出てこない。
 要は、我々の想像をはるかに超えた、もの凄い量の、超危険な放射能廃棄物が生成されているということだ。それは、もしかしたら数十平方キロの大都市にも匹敵する隔離地が必要なレベルかもしれない。

 これらの核廃棄物の処理方法は、核開発が始まった80数年前から、まったく進歩していない。ただ、施設に隔離して、漏洩しないよう保管することだけしかできない。
 核開発には「トイレが存在しない」のである。
 原発も核兵器も、トイレが存在しないまま、未来の科学技術の進歩を期待して「なんとかなるだろう」という根拠のない超甘い見通しで強行された。

 もちろん日本だけではない。世界中の核開発、原発が同じ問題を抱えている。とりわけ原発先進国であるフランスやイギリスは深刻である。アメリカのような広い領土を持たないので、以前は、アフリカの旧植民地に送りこんでいた。
 現在は、人道上の批判によって、国内に処分場を建設している。
 https://www.asahi.com/articles/ASQ4B4QW5Q43UHBI012.html

 何度も書いてきたが、原子力発電における核廃棄物は、励起された核燃料が崩壊を続けているため、原子炉から外した後、地上施設で、数十年~数百年の冷却保管をしてから、100度以下の安定冷温(冷却水が沸騰しない温度)になってから地中の埋設処分場に移動して、そこで10万年以上の保管が必要になる。
 ちなみに、プルトニウム239の半減期は約2万年だが、ほぼ1000分の1に減衰するには20万年以上が必要になる。

 恒久処分場で、環境放射能と同レベルまで減衰させるには10~100万年の冷温保管が必要になる。
 だが、地球上に10万年単位の安定した地殻は存在しないといわれる。必ず大地震や彗星衝突、戦争などで、激しい変動を受けるのだが、それは一切考慮されていない。

 なお、現在、日本の再稼働原発は、すべてプルトニウムMOX燃料を使用している。広瀬隆氏らが、MOXの場合は、崩壊熱が巨大なので、安定冷温に達するのに500年かかると指摘していた。
 私も311後、ツイッターでそれを書いたところ、自称原発技術者と称する人物が、「500年なんてありえない」と文句をつけてきたが、九州電力が、自社原発の案内文のなかで500年必要と書いてしまっている。
 https://www.kyuden.co.jp/nuclear_pluthermal_answer_12.html

 なぜ500年かかるかといえば、MOX燃料が20%台しか利用できないからだ。それ以上使用すると、白金族が生成され、再処理で溶解できず、再生プルトニウム239を取り出すことができなくなる。
 さらに長期使用すると、プルトニウム240という物質が生成され、これが激しい「自発核分裂」を行って中性子を出すため、MOX核燃料にフクイチ3号機のような小さな核爆発を引き起こすリスクが出てくる。

 核燃料が核分裂を始めるには、中性子濃度が一定以上あればよいのだが、プルトニウム240は、簡単に核分裂を始めてしまうので、これが一定上あると、例えばメルトダウン事故などで水蒸気爆発が起こり、核燃料が爆発圧力で圧縮されると、中性子濃度が高まって簡単に核爆発を起こすのである。

 このため、核兵器は、プルトニウム240の濃度を低く抑え、プルトニウム239の純度を93%以上に上げておかないと、先行核爆発を起こして失敗することになる。
 MOX燃料は、事故時に簡単に核爆発が起こりやすいので、世界各国は、MOX利用から手を引き、現在、MOXを原発燃料として使用しているのは日本だけになっている。
 MOX原発は、運用が不安定で、いつでも核爆発のリスクがあることを覚えておく必要がある。

 通常のウラン235核燃料の場合でも、数十年の励起崩壊熱の鎮熱期間が必要で、地上プールの水に沈めて、30~50年間強制冷却を続ける必要がある。
 それから安定地殻(理論的に存在しないが)の地下深くで10万年眠らせて放射能を減衰させる必要がある。

 そもそもMOX地上冷却期間の500年ですら、安定した社会が持続した歴史は存在しない。世界最長の安定政権は江戸幕府の264年間にすぎないのだ。
 政権、政府が代われば、それまでの施政が見直され、財政合理化のため、使用済み核燃料の強制冷却が否定される可能性だって十分にある。
 https://hirukawamura.livedoor.blog/archives/5827227.html

 冷却が放棄され、あるいは戦争などで冷却機能を失った核廃棄物は、燃料キャスクにひび割れなど劣化が生じ、内部の希ガスが環境に噴出する。長寿命核であるクリプトン85やトリチウムが噴出し、その後、セシウム137やストロンチウム90、アクチノイド、TRU核種が噴き出してきて、環境を大規模に汚染する。

 だから、まともに子供たちの未来、国の未来を安全なものにしようと考える人なら、原子力発電、核開発による核廃棄物のリスクが、子供たちの未来を閉ざす可能性があることが容易に理解でき、「核開発に手を出してはならない」という常識的理解に至るのである。

 ところが、冒頭に書いたように、世界全体で、核兵器開発と原発推進競争が続いた結果、莫大な核廃棄物が生成されてしまっている。
 この処理方法は「隔離」以外、存在しないのだ。

 とりわけ、核開発先進国である欧米で、深刻な問題になっていて、IAEAやICRPも、もう八方塞がりで、解決策が見いだせなくなっていた。
 そこに、2011年、福島第一原発問題が起きた。これによって、日本の核廃棄物の総量は、たぶん、それまでの数百倍に膨れ上がった。

 フクイチ事故の処理期間は、間違いなく、今後数百年にわたるだろうし、費用も発表されている約30兆円の数十倍に膨れ上がるだろう。
 https://www.tokyo-np.co.jp/article/312473#:~:text=23%E5%85%86%E5%86%86%E2%80%A6-,2023%E5%B9%B4%E6%9C%AB%E3%81%AB2%E5%85%86%E5%86%86%E5%BC%95%E3%81%8D%E4%B8%8A%E3%81%92%20%E5%8F%8E%E6%9D%9F%E3%81%AE,%E8%A6%8B%E3%81%88%E3%81%9A%E3%80%81%E3%81%95%E3%82%89%E3%81%AB%E8%86%A8%E3%82%89%E3%82%80%E6%81%90%E3%82%8C

 とりわけ、構内のタンク群に保管している放射能汚染水の量は桁外れで、解決方法が見つからなかった。
 もしも、賢明な識者が提案したような、巨大タンカーを貸し切って100年間保管すれば、東電が汚染水の主成分と主張しているトリチウムは消えてしまうのだが、残念ながらセシウム137やストロンチウム90、マイナーアクチノイドは桁の違う長期保管が必要となり、トリチウム汚染水がウソだったことがばれてしまう。

 結局、東電首脳は株価と自分たちの退職金確保を考えて、海洋投棄という、もっとも安易な道を選択した。
 自民党議員をはじめ、東電の株を大量保有し、株価の恩恵を受けている権力者たちも、こぞって株価を下げないで済む安価な解決方法に賛成した。
 これは、IAEAの主役であるフランスの核推進派(主にアレバ社)にとっても、もっとも安価で安易な、核廃棄物の処理方法を世界的に確立するための良策だった。

 そこで、国連IAEAは、「国連科学委」と称する原発推進勢力だけから選ばれた者たちを日本に送り込んで、放射能汚染水の海洋投棄が安全であるというデマを、日本のメディアに大宣伝した。
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/hairo_osensui/shirou_alps/reports/02/

福島事故の被ばく影響なし?「国連科学委員会」報告に異論相次ぐ。伊藤和子弁護士、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ副理事長 2013/10/27
  https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/dd6007eb3ffa50ba751754738488e97e17c07e2d

 ■ 国連科学委員会の報告
 10月25日、国連科学委員会は、現在開催中の68会期国連総会に、福島第一原発による放射線被ばくの程度と影響に関する調査報告を提出した。
 実は、この調査報告書、300ページ以上の別添資料を提出する予定だったが、汚染水問題その他、日本側の情報隠しがあったうえ、内部でとりまとめができず、別添資料の提出は見送られ、本文自体はとても短い。
 しかし、とても短い本文についても、問題が多いのである。

 一番おかしいと思うのは、以下の部分だ。
・ 「一般市民への被ばく量は、最初の1年目の被ばく量でも生涯被ばく量推計値でも、一般的に低いか、または非常に低い。被ばくした一般市民やその子孫において、放射線由来の健康影響の発症の識別し得る増加は予期されない。」(39パラグラフ)、

・ 「委員会は、福島県の成人の平均生涯実効被ばく線量は10 mSv以下であり、最初の1年の被ばく量はその半分か3分の1であると推定する。
 リスクモデルによる推定は癌リスクの増加を示唆するが、放射線誘発性の癌は、現時点では、他の癌と区別がつかない。ゆえに、この集団における、事故による放射線被ばくのせいである癌発症率の識別し得る増加は予期されない。
 特に、甲状腺癌リスクの増加は、乳児と小児において推測される。」(40パラグラフ)。

 こんなことを言っている「国連科学委員会」とは何だろうか。
 正式には、「原子放射線の影響に関する」科学委員会、という非常に限定された調査を行っている機関で、世界の一握りの科学者によって構成されている。
 原子力推進の科学者が多く名前を連ねていて、世界の民意を必ずしも正確に反映している民主的な機関とはいいがたい。ところが、その報告は、国連総会に提出され、国連総会で承認されると国際的コンセンサスのような扱われるので注意が必要である。

 というのも、日本政府は、福島原発事故の「被ばく影響がほとんどない」とたびたび主張するのだが、その拠り所としてこれまでも、国連科学委員会に依拠してきたのだ。
 10月24日に、日本の市民団体64団体は、このような調査結果が客観性・独立性・正確性において疑問があり、被ばくの過小評価が住民の保護や人権尊重に悪影響を及ぼしかねないことについて深刻な懸念を表明し、国連科学委員会と国連総会に対して、見直しを求める共同アピールを出した。

 http://hrn.or.jp/activity/topic/post-235/(日本語)
 http://hrn.or.jp/eng/activity/area/worldwide/japanese-civil-society-requests-that-the-reports-of-the-united-nations-scientific-committee-on-fukus/(英文・提出版)

 そこで、問題点をみていきたい。
 ■ 調査の独立性の欠如

 そもそも、国連科学委員会は、福島原発事故後、原発事故周辺地域に公式の事実調査に訪れたことはない。
 同委員会による放射性物質による汚染や公衆や作業員等の被ばく、健康影響について予測は、日本政府、福島県等から提供されたデータのみに基づいて行われている。

 日本の市民社会や各種専門家は、日本政府の提供したデータとは異なる独立した調査や測定を実施しているが、委員会がこのような、政府から独立したデータ等を収集したり、独自の測定等を実施した形跡は認められない。これでは、日本政府から独立した客観性のある調査とは認めがたい。

 福島県が全県民を対象に初期被ばくを推測する行動調査を実施したが、回答率は20パーセント程度にとどまっており、そのようなデータで初期被ばくについて推測することは到底できないはずである。
 また、政府が公表している放射線測定データについては、実態を反映していないとの強い批判が住民から上がっており、この点については、国連「健康に対する権利」特別報告者のアナンド・グローバー氏も、福島での現地調査の結果、モニタリングポストと現実の放射線量の乖離について指摘をしている 。

 昨今の汚染水に関する事態が示す通り、日本政府の情報開示の姿勢には重大な問題があり、情報開示に関する透明性が確保されているとは認めがたい。政府のデータを信用して、被ばく影響を断じていいのだろうか? 科学委員会の調査は独立性を欠いている。

 ■ 委員会の結論が正確性を欠くこと
 (1) 国連科学委員会は「一般市民への被ばく量は、最初の1年目の被ばく量でも生涯被ばく量推計値でも、一般的に低いか、または非常に低い。」とし、「福島県の成人の平均生涯実効被ばく線量は10 mSv以下最初の1年の被ばく量はその半分か3分の1であると推定する」という。

 しかし、日本政府は、年間外部線量20mSvを下回ると判断された地域について避難指示を出していないのであり、事故後、相当数の人が既に年間で10mSvを超える外部線量に晒されてきた。委員会がいかなる根拠で上記のような推定をしたのか、根拠は今のところ示されていないが、この推定は現場の実態を正確に反映したものとは認めがたい。 

 また、実効被ばく線量の平均値を根拠として、集団全体について健康影響がないと決めつけるのは、平均より高いリスクを負う人々への影響を、予断をもって切り捨て、検討対象から外す点で不当だ。
 福島事故で放出された放射性物質は、広島型原爆の168.5倍と当初言われていたが、その後拡大を続けている。

 汚染水に関しては、今年8月20日に東電が貯蔵タンクから300トンもの汚染水漏れがあったことを報告した。漏れた水の空間放射線量は毎時300ミリシーベルトだったと発表されている。こうした深刻な実情も十分に反映されていない。

 (2) また、国連科学委員会は、乳児と小児の甲状腺がんリスクの増加を推測する一方、他のがんリスクの向上を「予期されない」とするが、これは、最近の疫学研究が低線量被ばくの健康影響を明確に指摘しているのに矛盾するものである。

 放射線影響研究所は広島・長崎の原爆被害者の1950 年から2003 年までの追跡結果をまとめた最新のLSS(寿命調査)報告(第14報、2012年) を発表している。この調査は、全ての固形がんによる過剰相対リスクは低線量でも線量に比例して直線的に増加することが指摘されている。 

カ ーディスらの行った15ヶ国60万人の原子力労働者を対象とした調査で、年平均2ミリシーベルトの被ばくをした原子力労働者にガンによる死亡率が高いことが判明している。
 BEIRをはじめとする国際的な放射線防護界は、100mSv以下の低線量被曝についても危険性があるとする「閾値なし直線モデル」(LNT)を支持しており、100mSv以下の被曝の健康影響を否定していない。

 さらに、今年になって発表された以下の2論文は、低線量被ばくの影響について重大な示唆を与えている。
 まず、オーストラリアでなされたCT スキャン検査(典型的には5~50mGy)を受けた若年患者約68万人の追跡調査の結果、白血病、脳腫瘍、甲状腺がんなどさまざまな部位のがんが増加し、すべてのがんについて、発生率が1.24倍(95%信頼区間1.20~1.29倍)増加したと報告されている。

 また、イギリスで行われた自然放射線レベルの被ばくを検討した症例対照研究の結果、累積被ばくガンマ線量が増加するにつれて、白血病の相対リスクが増加し、5mGy を超えると95%信頼区間の下限が1倍を超えて統計的にも有意になること、白血病を除いたがんでも、10mGy を超えるとリスク上昇がみられることが明らかになった 。

 科学委員会の見解は、低線量被ばくの影響を過小評価するものであるが、最近の疫学研究の成果は明らかにこれと反対の傾向を示している。科学委員会は最近の疫学研究を踏まえて、低線量被ばくについて、より慎重なアプローチを採用すべきであろう。 

 ■ 他の研究との整合性の欠如
 健康影響がほとんどないとする科学委員会の見解は、WHOが2013年に公表した福島原発事故の報告書の予測とも著しく異なる 。

 WHO報告書は、それ自体問題が多いと指摘されているが、それでも、「福島県で最も影響を受けたエリアは事故後一年の線量が12~25mSvのエリアだとして、白血病、乳がん、甲状腺がんとすべての固形がんについて増加が推測される。
 子どものころの被ばく影響による生涯発症リスクは男性の白血病で7%増加し、女性の乳がんで6%、女性についてのすべての固形がんで4%、女性の甲状腺がんで70%上昇すると予測される」とし、事故後一年の線量が3ないし5mSvの地域でも、その1/3ないし1/4の増加が予測される、としている。
 さらにWHO報告は、低線量被ばくに関する科学的な知見が深まれば、リスクに関する理解も変化する、と結論付けている。

 さらに、科学委員会は、今回の国連総会に対する報告で、福島原発事故の影響と並んで、子どもに関する放射線影響に関する研究( Scientific Finding B. "Effects of radiation exposure of children")を紹介している。
 この研究は、子どもに対する放射線被ばく影響については予測がつかないことから、より慎重に今後研究を進めていくとしており、評価しうるものである。ところが、子どもに関する放射線影響に関する研究についての報告に貫かれている慎重な視点は、福島原発事故に関しては全く反映されておらず、報告書の文脈は分裂している。

 科学委員会は、子どもに関する放射線被ばく影響に関する見解と統一性のあるかたちで、福島事故後の健康影響について再検討すべきではないか。

 ■ 国連人権理事会「グローバー勧告」を反映すべき
 2013年5月27日、国連「健康に対する権利」に関する特別報告者アナンド・グローバー氏は、2012年11月の福島等での現地調査の結果を踏まえ、国連人権理事会に対し、福島原発事故後の人権状況に関する事実調査ミッションの報告書を提出し、日本政府に対する詳細な勧告を提起した。

 特別報告者は、低放射線被ばくの健康影響に関する疫学研究を丁寧に指摘し、低線量被曝の影響が否定できない以上、政府は妊婦や子どもなど、最も脆弱な人々の立場に立つべきだと指摘し、「避難地域・公衆の被ばく限度に関する国としての計画を、科学的な証拠に基づき、リスク対経済効果の立場ではなく、人権に基礎をおいて策定し、公衆の被ばくを年間1mSv以下に低減するようにすること」(勧告78(a)) を勧告した。
 また、帰還について「年間被ばく線量が1mSv以下及び可能な限り低くならない限り、避難者は帰還を推奨されるべきでない」と指摘し、避難等の支援策や、詳細な健康検査は、年間1mSv以上の地域に住むすべての人に実施されるべきだと勧告した。

 同報告は、最も影響を受けやすい脆弱な立場に立つ人に十分な配慮をして、健康に対する権利の保護のための施策を求めたものであり、日本の市民社会はこれを歓迎している。
 ところが、日本政府は、国連科学委員会の見解に依拠して、グローバー勧告は「科学的でない」としてその勧告のうち多くについて受け入れを拒絶している状況にある。

 国連科学委員会の見解が低線量被ばくを過小評価する結果、被害者救済や健康に対する権利を保障する政策にマイナスに働くような結果を招来することは、本来国連の意図するところではないと考えられる。

国連科学委員会、そして国連総会は、人権の擁護という国連の根本的な目的に立ち返り(憲章1条)、人権の視点に立脚した意思形成をすべきであり、科学委員会および国連総会の意思決定は、人権の視点に立脚したグローバー勧告を十分に反映するものであるべきである。

 ■ 異論が相次ぐ。
 このような理由で、日本の市民団体は、国連科学委員会と国連総会第四委員会に対し、人権の視点に立脚し、低線量被ばくに慎重な視点に立ち、また、調査・分析の公正・中立・独立性を重視する立場から、国連科学委員会の報告内容を全面的に見直すよう要請した。

 24日には、東京でヒューマンライツ・ナウとFOE Japanの共催で記者会見をし、画像で見ていただくことが出来る。
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1662
http://www.ustream.tv/recorded/40122402

 24日、ニューヨークでは、NGO「社会的責任を果たすための医師たち」とヒューマンライツ・ナウの共催で、国際会議が開催され、参加した国連特別報告者アナンド・グローバー氏も「このようなデータだけで将来にわたる低線量被ばくの健康影響をないと決めつけることはできない」と科学委員会の姿勢に疑問を呈している。

 報道はこちら。
http://www.japantimes.co.jp/news/2013/10/25/national/human-rights-experts-rap-u-n-report-on-fukushima-radiation/#.Umob86mCiI-
 [human-rights-experts-call-for-revisions-to-un-report-on-fukushima-radiation-2538523]
 http://mainichi.jp/english/english/newsselect/news/20131025p2g00m0dm028000c.html

 また、米国、フランス、イタリア、スイス、オランダ等欧米を中心とした科学者・医師らによるNGO団体も、同報告書に対して批判的見解を明らかにしている。
 http://www.psr.org/assets/pdfs/synopsis-of-unscear-fukushima.pdf

 日本語訳 原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の国連総会への2013年10月のフクシマ報告書についての注釈付き論評
 http://fukushimavoice2.blogspot.com/2013/10/unscear201310.html

 10月25日の国連総会での議論では、ベネズエラ、アルゼンチン、中国などの政府代表が科学委員会のプレゼンテーションに疑問を呈し、もっときちんと調査すべきだという意見を述べたという。
 今後、科学委員会は別添資料を12月頃までに提出、国連総会の承認を得ようとしているようである。

 世界のどこかで、日本に関する重要な問題が、被災者や影響を受けた人々の意見を聞かないまま、当事者を排除して、一度も現地調査をしたことがない一握りの科学者によって決められ、いつのまにか国際的コンセンサスになっていく。
 その結論は、福島では、健康被害は発生しない、被ばくや放射能汚染は深刻でない、というもの。
 このままではよいはずはなく、継続的に監視し、現場から意見表明していく必要がある。
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 引用以上

 私は、IAEAが派遣した「国連科学委員会」なるグループが、福島汚染水の海洋投棄にお墨付きを与え、それをメディアが批判しないまま拡散され、ネット上でも妙佛・榊敦司・フィフィのような右傾スピーカが汚染水放出を正当化しているのを見て、被曝知識が保育園児なみしかないのに、若者たちを洗脳している現実に強く憤っている。

 また、汚染水放出をIAEAが正当化することの本当の意味は、フクイチ汚染水の海洋投棄容認を突破口として、全世界の核廃棄物を海洋に投棄する計画があるのではないかと強く疑っている。
 福島汚染水投棄問題は、世界中の海洋放射能汚染をもたらし、人類の海洋利用未来を永遠に破滅させるのではないかと強く危惧している。