自然農法と農業共同体 | tokaiama20のブログ

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 「自然農法」とは何か? とりあえずウィキの説明を引用しておく。
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E7%84%B6%E8%BE%B2%E6%B3%95

 日本で代表的に知られているのは以下の四人だ。
 世界救世教の教祖、岡田茂吉
 無農薬・無肥料・無耕起・無除草・粘土団子農法で知られる福岡正信
 奈良県で、無農薬有機栽培の元祖として知られる桜井市の川口由一。
 無農薬リンゴ栽培で知られる青森の木村秋則。

 岡田茂吉
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B2%A1%E7%94%B0%E8%8C%82%E5%90%89

 世界救世教の教祖である岡田が1935年に「無肥料栽培」の思想を説く。1936年から東京都世田谷区上野毛の邸宅にて実験的に作物を作り始め、1942年からは水稲にも取り組む。1950年(昭和25年)から「自然農法」へと改称し、1953年には「自然農法普及会」を発足。
 耕起は肯定する。施肥は肯定するが、落葉や草を自家で発酵させた「自然堆肥」のみとする。病害虫防除は肯定する。人力による除草は肯定する。
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 世界救世教団は、出口王仁三郎の大本教から派生した、たくさんの新興宗教の一つである。日本の戦後新興宗教団体の大半が大本教から生まれている。
神道天行居、生長の家、世界救世教、三五教、璽宇教、PL教団など多士済々だ。
 その多くが、「自然農法」に関心を示しているが、もっとも強力に実践している筆頭が世界救世教である。

 三重県に自然農法の本拠地を持ち、動物性肥料は使わず、もっぱら枯草堆肥を多用する。除草・農薬・耕起・自然堆肥を利用するので、福岡式農法とは路線が本質的に違う。
 何度か食べたことがあるが、作物の自然な特性が引き出され、香りが強い。
 http://www.izunome.jp/action/food/

 EM菌の発明者、比嘉照男が加入していて、EMモルト売り上げの相当部分が世界救世教の資金に転用されていると噂されている。
 EM菌常用者である私は、常々、世界救世教がなければEMモルトの価格が半額以下になるのにと愚痴をこぼしてきた。教団は微生物、酵素の利用に関心が深い。

 福岡正信
1937年に実験的に自然農法を始める。高知県農業試験場勤務を経て、1947年から自然農法の活動に専念する。栽培形態が最も自然に近い独創的な農法を実践、普及。多様な植物の種子を百種類以上集め、粘土と共に混合・団子状にした粘土団子を作ったことでも知られる。粘土団子による自然成長のみを肯定し、耕起、施肥、除草、病害虫防除を全て否定する。

 すでに何度も紹介している真の自然農法の開祖、世界中で支持者を拡大しているが、相当な知性と情熱がなければ、福岡式を実践するのはハードルが高い。福岡さんの信奉者にとって、彼は、すでにソクラテスやプラトンの領域である。
 その理論は難解で精緻。私もミーハー的に追いかけたことがあるが、とうてい及ぶところではなく、人を寄せ付けぬ孤高の高峰に挑むが如くであった。

 川口由一
1939年生まれ、奈良県桜井市在住。農薬を用いた農業で体を壊し、1970年代より無農薬、無肥料、不耕の「自然農」を起こす。
耕起、施肥、病害虫防除は否定する。人力による除草は肯定する。

 私は川口さんについて少ししか知らないが、彼はコンパニオンプランツの開祖のような人で、「生物農薬」としてのマリーゴールドなどを普及させている。
 川口さんの農産物は、多くの消費者から神格化されていて、簡単には手に入らなくなっている。 https://akameshizennoujuku.jimdofree.com/%E5%B7%9D%E5%8F%A3%E7%94%B1%E4%B8%80%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%AE%E7%B4%B9%E4%BB%8B/

 木村秋則
青森県弘前市岩木町で、1978年(昭和53年)より無農薬りんご栽培を試み10年間の無収穫期間を経て自然栽培(無農薬・無肥料栽培)を確立。

 これも、知る人ぞ知る。知らない人は知らないが、木村さんのリンゴが入手できたなら宝くじに当たったようなものだ。超高級スイーツ店が独占している状態だ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%A8%E6%9D%91%E7%A7%8B%E5%89%87

 http://www.r-yamazaki.com/?mode=f9

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 以上の四人は、すでに神の領域にいるので、我々が真似するどころか、その味を確かめることさえ困難だ。ニーズが殺到しているので、新規参入者として定期購入するのも事実上不可能な状態である。
 日本中の「自然農法マニア」が、上の四人を目標にして、日々研鑽を積んでいる。

 研鑽といえば、同じ自然農法を目指すヤマギシ会だが、こちらは、アナーキスト山岸巳代蔵の思想から、大自然の循環を原理とする社会を作り出そうとし、食生活も同じ循環の思想のなかにある。
 私は、若い頃ヤマギシ会にかかわったが、巳代蔵とて完璧ではなく、一種の「優性主義」から抜け出せず、明治生まれらしく、人に序列をつける思想を捨てることができなかったために、ヤマギシ会内部での序列の葛藤を目撃した。

 ヤマギシズムも、養鶏・畜産を主体として、その排泄物を堆肥化して農産物を作るという大雑把な循環を守ってはいるが、1980年代以降、現世的雑念=新自由主義に侵された参画者によって、農薬や化学肥料、ケージ飼育方式まで利用するようになったのは残念だ。それじゃ、金儲け至上の資本主義的経営しか残らない。
 だが、山岸巳代蔵の目指した「農業共同体」は、いずれ追い詰められて飢餓に陥った日本人を救う、唯一の手立てだと私は確信している。

 今回、とりわけ注目しておきたいのは、世界が向かう新しい自然農法の根幹に「微生物農法」を利用するという思想だ。

 先に紹介した、サンパウロ自然農法のSさんも、微生物と酵素が果たす役割を強く言っておられた。栽培土壌の表面を、枯葉や藁や籾殻で覆う生物マルチシステムのなかに、みかんの皮や柿の皮、果樹廃棄物を加えて、土壌の微生物傾向を、腐敗菌から乳酸菌などの発酵菌にシフトしてゆく「土づくり」が、とても大切だと言っておられた。

 そもそも、植物の栄養は微生物が有機物を分解して、植物体が根から吸収しやすくなった成分しか受け付けない。 
https://web.tuat.ac.jp/~okazaki/research.html
 つまり、微生物のいない土壌には、有機物があっても栄養がないことになる。だから、有機物を分解して植物体に送り込む土壌菌叢が、どれほど大切な原理か理解することが、自然農法の第一歩なのだ。

 このことに最初に気づいたのは、おそらく冒頭に紹介した、世界救世教、岡田茂吉だっただろう。同じ時期に生きていた宮沢賢治は、イートハーブに電線を張り巡らして放電し、空中窒素を固定する農法を提唱していた。
 岡田は、土壌菌叢を嫌気性の腐敗ではなく好気性発酵に持ってゆくことが大切と説いていて、そのなかにEM菌が含まれていた。

 「EM菌はニセ科学」という激しい罵倒を、片瀬久美子のようなニセ科学者から受けるようになっても、世界中でEM菌モルトの需要が落ちることがないのは、それが、すでに定着した農業システムであることを意味している。
 私も、EM菌で屎尿浄化を行い、処理水を畑に流すようになって20年近いが、土壌の微生物叢を構築する手段として、極めて大きな価値を知らされている。

 片瀬久美子は、EM菌を拡大培養したこともなければ、自分の屎尿を分解させたこともなく、微生物農業に関心を抱いたことも皆無だろう。EM菌は、自分で使わなければ何一つ理解できない。
 知識として知っていても、触ったことさえない愚か者がEM菌を評価すべきではない。
 https://www.d3b.jp/society/2956#:~:text=%EF%BC%A5%EF%BC%AD%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81Effective%20Microorganisms,%E9%96%8B%E7%99%BA%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

 私から言いたいのは、「世界救世教よ、EM菌モルトを安くしろ!」の一点だけだ。

  戦後、農林省や厚生省が盲従してきたアメリカ式農業が本質的に間違っている理由は、土壌微生物=菌叢に関する知見がないことで、植物と栄養素がダイレクトに結びついていると勘違いし、植物体の存立基盤が土壌菌叢にあることを理解できなかったことだ。
 もしも、農業の本質が、「単なる餌やり」ではなく、土壌菌叢を育てることだということが広く理解されるなら、日本の農業は根源的に変わり、病虫害、農薬から解放されることになる。

 だから、自然農法を考える上で、もっとも大切なアプローチは、肥料でも水やりでも農薬でもなく、土壌菌叢なのだ。
 最近では、人間の健康の根源に「腸内フローラ=お花畑」があることが明らかになっている。
 https://www.biofermin.co.jp/nyusankin/chonaiflora/aboutchoflora/

 自然農法における土壌菌叢は、腸内フローラとほとんど同じものと考えればよい。
 すなわち、土壌内の支配的バクテリアを、病虫害をもたらす嫌気腐敗ではなく、発酵をもたらす乳酸菌などに変えて、植物が栄養素を容易に吸収し、免疫を高め、毒物を排除する性質に変えることが、自然農法の核心に位置するのである。

 これからの農法は、福岡式と、土壌フローラ=菌叢。それに粘土団子方式が主体になってゆかねばならないと思う。
 この農業を生活の中核に据えた、新しい「農業共同体」こそが、人類を本質的な意味で救う救世主になるような気がしている。

 共同体については、すでにくり返し書いているが、要するに、人が多すぎない、せいぜい20名程度の集団で、農業を軸に人間(の社会的)関係を築いてゆく。
 そこには、新自由主義のような金儲けの要素は入らず、利他主義によって小さな組織が運営されてゆく。
 このビジョンについては、別の機会に詳しく語ろう。