皆さん,こんにちは。

「還暦の東海道新幹線」,第4回目をお届け致します。

今回は「モデル線」と試作車両、速度試験について述べていきたいと思います。

 

【モデル線の概要】

 東海道新幹線のモデル線は神奈川県小田原市鴨宮と綾瀬市の間に建設されました。モデル線の基地は鴨宮に設置されました。

 モデル線は全長37kmで,新幹線と同規格で後の本線となる部分を先行開通させるための区間です。

 そのため,直線や曲線はもちろんのこと,トンネル,橋梁も同区間に含まれました。この区間に含まれる大きな橋梁は相模川橋梁で,寒川町と平塚市に跨がるところです。寒川町側は相模線の上を交差しています。現在は,新幹線の上を圏央道(首都圏中央連絡自動車道)が交差しています。

 モデル線で実施された試験の結果,指摘された問題点は分析・検討のうえ,設計変更等に直ちに反映されました。

 

【試験車両】

 東海道新幹線のモデル線を走行した試験車は「1000形」という名前で、A編成とB編成の2編成が配備されました。

 ① A編成

 昭和37年に登場した車両で,1001号車と1002号車の2両編成です。国内初の新幹線用交流電車です。基本的な形状は「0系」と似ていますが,デザインは異なる部分がありました。

 車体側面の帯が上下2本に分かれて塗装されていること,スカート(排障器)の塗り分けが異なっていました。

 試験車両の役割を終えた後は,救援車に改造されました。

 ② B編成

 A編成と同じ昭和37年に登場した車両で,1003~1006号車の4両編成です。モデル線における最高速度(256km/h)を記録したのは,本編成です。

 試験車両としての役割を終えた後,開業後は電気試験車として活躍し,昭和47年に引退しました。

 

【速度試験】

 先述の2編成を用いて走行試験が繰り返し実施されてきました。

 昭和38年3月,250km/hを目指した速度試験が実施されました。

この試験で電車による世界最高速度(256km/h)が記録され,東海道新幹線開業に向けて大きな弾みとなりました。

 モデル線における「1000形」の走行距離はA編成・B編成の合計で,約250万kmとなりました。

 

〔参照〕

須田寛・福原俊一『東海道新幹線50年の軌跡』(JTBパブリッシング・2014年10月)

レイルウェイズ グラフィック『国鉄プロトタイプ車両ビジュアルガイド』(グラフィック社・2024年1月)