これまでの人生で最長の入院期間(19日間)となった今回の入院であるが、本稿では上部消化管内視鏡検査について述べていく。

 上部消化管内視鏡検査は、ファイバースコープという医療器具を用いて、咽頭、喉頭、食道、胃、十二指腸を観察し、病変の有無を調べる検査である。いわゆる「胃カメラ」である。医療現場では「GF」と呼ばれることもある。

 検査前に、以下の処置を行う。

・咽頭麻酔

 キシロカインのスプレー剤噴霧、或いはゼリー剤を喉に数分間溜めてから飲み込む。これにより、嘔吐反射の抑制を図る。

・消化管運動抑制

 ブスコパンなどの薬剤を注射して、胃の動きを弱める。

・消泡剤内服

 検査時に観察しやすいように、胃の泡を消す薬を飲む。

・鎮静剤注射

 検査に伴う苦痛や嘔気・嘔吐反射を強力に抑えるため、希望によりドルミカムなどの睡眠導入剤、ペチジンといった合成麻薬を注射する。

 今回、私が受けた体感としては「鎮静剤を入れてもらったが、よくある体験談の『寝ている間に終わった』感じではなかった」というのが実感である。

 検査日から2日後、ベッドサイドでの結果説明時に、ドクターから鎮静剤の効果について次のような話があった。

「向精神薬や睡眠薬を常用している患者さんは、内視鏡検査の時に鎮静剤が効きにくい。そのような事情を知らず『苦しい思いをした』という体験だけが強く記憶に残り,『○○病院の胃カメラは鎮静剤を入れても寝落ちしない,苦しい』と悪評されるのが怖いです。」

 批判を恐れずに私見を述べさせていただくと、「胃や食道の不調を自覚していながら、鎮静剤が効きにくくて寝落ち出来ない故をもってGFを忌避するなかれ」である。

 検査それ自体の所要時間は数分、長くても10分程度である。数分の嘔吐反射を少し辛抱して検査を受けて、胃や食道の病変を調べてもらい、不調の原因がわかるほうが有益であると考える。

 内視鏡検査の利点は、ドクターがピンポイントで病変を自分の目で見て確認できることである。

 検査を忌避し続けて、重篤な状態になってから病院を受診するのでは遅い。「手遅れだ」、「何故もっと早く受診しなかった?」とドクター

から言われるのが目に見える。