皆さん,お久しぶりです。今回は思うところあって,「東京~名古屋間の列車所要時間を調べてみた」と題して書いていきたいと思います。

 本日は1回目として明治時代の東京~名古屋間の列車にスポットを当ててみたいと思います。

 本シリーズの着眼点は,次の通りです。

・「朝一番の列車で東京を出発し,名古屋に何時に着くか?」

 参考文献や資料が許す限り,様々な年代の列車ダイヤを取り上げてみたいと思います。所要時間は途中駅での停車時間を含むものとします。

【1】明治22(1889)年4月16日

 明治5(1872)年10月の鉄道開業以来,約16年半の歳月をかけて新橋(現在の汐留地区)~長浜(現在の北陸本線「長浜」駅)間の鉄道が開業。

〔新橋駅・下り始発〕 

06:00発 長浜行き

・主要駅到着時刻

 横浜 06:40

 静岡 11:40

 浜松 13:55

 名古屋 17:50

 所要時間:11時間50分

【2】明治22(1889)年7月1日

 前回の新橋~長浜間開業から約3ヶ月後のこと,新橋~神戸間の鉄道が開業。東京から名古屋・京都・大阪・神戸を結ぶ大幹線が開通。

〔新橋駅・下り始発〕 

06:10発 京都行き

※大森・川崎・鶴見・神奈川通過

・主要駅発着時刻

 横浜 06:55

 静岡 12:14(着)・12:19(発)

 浜松 14:40(発)

 名古屋 18:10(着)

 所要時間:12時間

【3】明治25(1892)年4月16日 時刻改正

〔新橋駅・下り始発〕 06:00発 神戸行き

※大森・川崎・鶴見・蒲原・大高通過

・主要駅発着時刻 

 横浜 06:50(発)

 静岡 12:08(着)・12:25(発)

 浜松 14:37(着)・14:44(発)

 名古屋 18:10(着)

所要時間:12時間10分

【4】明治27(1894)年 時刻改正

この年は4月・5月・6月の3回,時刻改正が行われている。

〔新橋駅・下り始発〕 

06:20 神戸行き

※大森・川崎・鶴見・蒲原・大高通過

・主要駅発着時刻

 横浜 07:10(発)

 静岡 12:22(着)・12:27(発)

 浜松 14:37(着)・14:44(発)

 名古屋 17:55(着)

所要時間:11時間35分

 当時,東海道本線は国府津から松田・山北・御殿場経由で運行されていたので,それだけでも時間がかかることは容易に想像がつく。また,全区間を蒸気機関車牽引の客車列車で運行していたことを考えると,一時的にスピードダウンした年もあったが,新橋~長浜間開業の時と比べて15分のスピードアップになった。これだけを見ても各地で複線化などの各種改良工事が実施されているであろうこうとは想像に難くない。

 とはいえ,いずれの年代を見ても「名古屋へ行くだけで一日が終わる」ことは容易に想像できる。

 夏場であれば新橋駅出発時と名古屋駅到着時に日が出ているが,冬場は新橋出発・名古屋到着のいずれにおいても真っ暗な時間である。つまり,冬場は「列車の中で日の出と日の入りを迎えて名古屋入りする」というところである。

 ただ,鉄道が無かった時代のことを考えると,これだけでも大革命であることは間違いないと言える。

〔参考文献〕

曽田英夫『発掘!明治初頭の列車時刻』(交通新聞社・2016年)