震災に関わる俳句を高校生とともに作ることで抵抗する   中村晋先生

   【 『海原』No.36(2022/3/1発行)誌面より。 ネットで見つけて 

    転載しました。 】

 

放射能悲鳴のような(せみ)時雨(しぐれ)     服部広幹  2011年作

 

空っぽのプールに雑草フクシマは     菅野水貴  2012年作

 

被曝者として黙禱(もくとう)す原爆忌     髙橋洋平  2014年作

 

無被曝の水で被曝の墓洗う     髙橋洋平  2014年作  

 

フクシマに柿干す祖母をまた黙認     髙橋洋平  2014年作

 

放射能無知な私は深呼吸     髙橋琳子  2020年作

 

フクシマよ埋めても埋めても(ねぎ)匂う     野村モモ  2015年作

 

 

除染とは改竄(かいざん)である冬の更地     晋  2020年作

 

 

 

●すべて被曝後の福島の高校生の作品です。

最後の中村晋さんは指導した福島市の高校教諭です。

 私はとくに「葱匂う」の句がいいと思います。

 

●震災後は復旧復興ばかりが語られます。

負の部分はおもてに取り上げにくいのでしょう。

 

80年前の戦争も、悲惨さばかりが取り上げられます。

それはほぼ被害者側としての悲惨さです。

加害性について触れられることはほとんどありません。

なぜ戦争が起こったのか、どういう経緯で戦争になっていったのか、

誰が悪かったのか、もあまり触れられません。

どんなひどいことを日本はしたのか、が伏せられて、加害者としての姿を知らないまま、授業は終わります。

こどもはひととおり戦争を学んだことになります。

政府は軍事費を増大させ、 戦争の本質を知らされない若い人は

「怖いもの知らず」になっていき、 記憶を風化させられていき、 どんどん無関心な人が増えていきます。

 

自衛隊上がりのお笑いのやす子が、自衛隊ネタで笑いを取るたび、

自衛隊に対する拒否反応をいやす効果が期待できるのでしょう。

でも悲しいかな、戦争の本質とは、無差別大量殺戮です。 殺し合いです。

自衛隊は多くの人助けをしますが、本業は、戦争になったら、いかに効率よく人を殺すか、に注力する組織です。

 

せめて映画の 『フルメタルジャケット』 や 『プライベートライアン』 ぐらいは観てほしい。

 

●東電福島第一原発事故も戦争と同じ構図です。

なぜ事故が起こったのか、どういう経緯で何が足りなくて事故になったのか。 誰が悪かったのか。 誰にどんな責任があるのか。

ここをおろそかにすれば、事故はまた繰り返されるのではと不安になります。

「怖いもの知らず」の人たちが、原発を動かそうと躍起になっています。

若い人たちは、記憶を風化させられていき、どんどん無関心な人が増えていきます。

まるで戦争の風化と同じ道筋です。

 

明日は3月11日。 合掌します。