原子力事故災害は、災害応急対策としての緊急時の避難計画のみが
集中的に扱われています。
そのほかにも、考慮すべき観点の欠落が少なくとも3つあります。
1 原子力事故災害に特有な前提条件の欠如
防災を検討する前に、
「原子力施設稼働のメリットが、原子力災害でこうむるデメリットを凌駕する」という関係住民との合意形成が基本になければなりません。
しかし「計画」にこの記載はなく、県も村もその判断を基礎に防災計画を策定してきたとは言えません。
人災と天災との違いがあいまいなまま。
2 原子力事故災害に対する積極的予防の欠如
原子力災害以外のすべての災害では、詳細な予測を基礎にして、被害を抑え込む努力がされています。
しかし原発事故では、重大事故の災害規模予測の結果を知りません。
「計画」には、科学的推定をもとに避難計画を策定すべしという方針設定がありません。
3 原子力事故災害の長期的復旧・復興策が脆弱
原子力事故災害時の廃炉・除染・立入禁止区域の設定・解除や、被災者の生活支援の見通しなど、長期にわたる復興工程や復旧については、
「計画」の中で行政的な指針が示されています。
でもこれらのビジョンは検証されたことがなく、絵空事に終わる脆弱さを持っています。
関連する経費の積算も明らかにできない現状で、確かな未来像を描けるのでしょうか。
註: 上記内容に関しては、東海村議会6月議会で取り上げる予定です。
註: かつて原発事故の被害想定はされました。
【 東海発電所 (初代) が稼働するときに政府は「原子力損害の賠償に
関する法律」の策定のために、 過酷事故の予想を原子力産業会議に
依頼した。 そこで予想された放射能の放出は福島原発事故の規模に
相当し、 賠償額は3.7兆円 (当時の国家予算の2倍) と推定してい
る。 しかし政府はこれを公開せず、予測の実施自体も否定していた
が、1999年になって国会で指摘され、明らかになった。 その後も、
2005年に朴勝俊※ により関西電力大飯3号機を事例に経済的損失
が試算されている。 主な結果として、気象条件などにより異なるが、
最大で経済被害460兆円、人的損害で急性死1万7000人等と推定
されている。 】 (※ 朴勝俊氏は関西学院大学教授)
『原子力防災の虚構』 (上岡直見 2024年2月) より
今、原子力事故の被害想定を試算すると再稼働に都合の悪い結果
が予測されるためか、 国も県も村も、被害想定については、無視し
続けています。