超一流の狙撃手(スナイパー)デューク東郷を主人公とする、さいとうたかを作『ゴルゴ13(サーティーン)』は、『ビッグコミック』連載56年になる人気劇画です。その傑作のひとつが、原発事故を扱った表題の作品。
これは1979年3月のスリーマイル島原発事故を契機に、1984年7月に連載されたものですが、福島第一原発事故に重なるストーリーであるため、再び注目されました。タイトルは、原子炉から排出されるプルトニウム239の半減期が2万5千年であることに由来します。
ロサンゼルス北方80キロにあるヤーマス原子力発電所で人為的なミスからトラブルが発生、技師コモン・バリーが自らの命を犠牲にして、ゴルゴ13の協力で、地域を荒野になることから救うというもの。
バリーの人間性と行動が物語の中心ですが、むしろ今注目すべきは、事故収束後の記者会見です。バリーを犯人に仕立て上げようとする経営陣への怒りと、命をかけて事故を防いだバリーに報いるため、パーマー制御部長が、クビと脅されながら勇気をもって記者団に真相を暴露するのです。
自分の仕事に対する責任感と倫理観、そして行動力をもつバリーやパーマーは、この国にだって必ずどこかに何人もいるに違いありません。
しかし現実はどうでしょう。今日まで幾多の課題は何も改善されず放置され続け、私たちは、「理論上の安全」などでは全く防ぐことのできない事故を平気で見過ごしてきました。原発マネーの威力に惑わされ、人命を軽視し、未来への責任を放棄し、バリーやパーマーを葬り、そうして今、フクシマを忘れ去ろうとしています。その責任は重いでしょう。
この話は原電の防潮堤取水口の工事不良問題を想起します。内部告発した人は仕事を辞めたそうです。
最近でも、兵庫県知事らの不正、鹿児島県警の不正、袴田さんらの冤罪事件、これまでも自民党におけるカルトとの癒着や裏金問題、モリカケサクラ問題などなど、権力の腐敗による醜悪な事件は後を絶ちません。世論のチカラで正したい。