大阪うめきたに、先日9月6日にグラングリーン大阪が開業した。店舗やオフィスと言った典型的な再開発もなされてはいるものの、このグラングリーン大阪の目玉は何と言っても「うめきた公園」だ。

このグラングリーン大阪とうめきた公園に関して、吉村大阪府知事からの事前のコメントはやや過剰とも思えるものだった。「えっ?ここが梅田?位に新しい梅田が誕生します」… 何だか安物の煽り文句みたいだったのだが、蓋を開けてみるとこの言葉は決して大袈裟ではなかった。うめきた開発に相当ポジティブな期待が強い僕のような人間の想像すら大幅に超えていた。全然見通しが甘かった。とにかく良い。何より驚愕した!!… そういうケモノの鳴き声のような言葉しか出てこないのだ。


僕は11年前にグランフロント大阪が出来て以来、毎日のように通い詰める人間なのだが、このグランフロント大阪を含む建物群を公園の芝生から眺めるアングルの光景は、まさに「夢の空間」と呼ぶにふさわしいものだ。今更ながら、グランフロント大阪はこんなに美しかったのかと驚愕した。ずっと別のアングルからとは言え見続けてきたはずなのに。

場所が良ければ、そこに居る人々は即座にそれに反応する。何というか、このうめきた公園の広場にいる人達が、みんな「いい気になってる」のが見て取れるのだ … このムードの良さは何だろう??鼻歌や口笛がこんなに似合う場所はそうは無い。涙が出るほどに素晴らしい。

結局、誰もが大阪のような大都市に求めていたのは、実は「これ」だったのだ。青い空、白い雲。そして本物の緑。まさに「グラングリーン」の名にふさわしい。これこそ最高の本物だ。

間違いなく言い切れるのは、この開園したばかりの「うめきた公園」こそは、まさに梅田という街が日本経済の中心にふさわしい場所だと強烈にアピールする存在という事だ。とにかく、誰もが一瞬でそういう何かを体感してしまうのだ。だってしょうがないでしょう。感じちゃうんだから。

僕はこのグラングリーンを体感した瞬間に「大阪の未来と日本の未来とが、今日うめきたに姿をあらわした」のだと確信した。嘘だとか大袈裟だと思うのなら、うめきたに行けば事が分かる。事実は嘘をつかない。


グラングリーンを離れてうめきたの既存の街並みを歩いていると、開業したばかりのグラングリーンに関する広告がそこかしこにあった。街灯に吊るされていたのだが、そこにはこうあった。「さあ、このまちで、一歩踏み出そう。」… この煽り文句が全く嘘じゃないのだ。さらに言うとこれら街灯にはスピーカーが付いていて、街を歩く人々の〈バックミュージック〉としてちょうどいい感じのファンク調の音楽が、これまたちょうどいい感じの音量とテンション感とで流れてるのだ … 何とイカした粋な街だろう!少なくとも、日本でこんなのは見たことも聞いたことも無い。明らかにセンスが違いすぎる。この街ならば「Uptown Funk」とタメを張れる。


この「夢の空間」としか言いようが無いグラングリーンには、何も面白い特徴がある。どういうわけかみんな「なんとなく」「ふらっと」立ち寄ってしまうことだ。

そもそも、僕が初日の9月6日ににグラングリーンを訪れた時からして、そんな感じだった。オープンの情報は知ってたが特に行く予定なんて立ててなかったのに、気がつけば「なんとなく」「ふらっと」立ち寄ってしまっていたのだ。そして感動を超えて驚愕した。その時の体感は、今も僕の中で持続している。

誰にとっても「なんとなく」「ふらっと」なので、開業直後からほぼ毎日来ているような人もいるようだ。そしてそういう人たちが口を揃えるのが「全く飽きない」という事。きっとハナから飽きるとか飽きないとかいう性質のものでは無いのだろう。その意味では、グラングリーン大阪は、エンタメ施設とかテーマパークよりも文化施設に近いのだと思う。文化とは「人がそれに包まれて心地良いと感じる何か」で、そういう喜びは飽きる飽きないという〈刺激〉では無いので、長く持続しつつ人々を穏やかな多幸感で包む。何しろ都心のど真ん中にあって、老若男女が無料で楽しめて、そして明らかにリラックス出来る場所なのだから。


9月最初の金曜日に開業してから1週間が経ったグラングリーン大阪は、2度目の週末も当然ながら素晴らしい賑わいだった。最初の3日間の始まりの素晴らしさ、誰もが肌身に感じた根本的な新しさ … こうした要素が柔らかく空間を包み、そして先程書いた「もう一歩前へ」と各々が足を踏み出す世界 … やっぱり9月5日と9月6日では根本的に何かが違うのだ。グラングリーンがこの物理世界に現出したという事実は、それくらいに決定的な事なのだ。

グラングリーンは過去の再評価までも促した。僕は以前から「梅田スカイビル」にどちらかと言えばネガティブな評価をしていたのだが、グラングリーンの視点から見ることで、このスカイビルがその真価を発揮し始めた。なるほど、こことここがこう繋がるのか … まさに「点と点が繋がった」瞬間だ。

もちろんこういう「物事の捉え直し」は、ビルや建物の配置と言った物理的な話にとどまらない。何たってあらゆる事の捉え方が変わってしまうのだから、必然的かつ速やかに人々の価値観までも変えてしまう。その意味では、グラングリーンは紛れもなく〈アート〉だろう。


実際のところ。このグラングリーン開業の9月6日以降は、各所で何かが堰を切ったように流れ出したと思う。それはあまりにも多岐にわたるので、整理してあっさりと述べる事自体が難しいほどだ。

今回はここで終わる。次回はもちろん「アフター・グラングリーン」における文字通りの激変について、なるべく網羅的に書いてみようと思う。