暫くNTさんは公園で寝なかった。
どこで寝ていたのか、聞きそびれてしまった。
冬の寒い日に、福岡市総合図書館まで歩いて行った。
書棚の間を縫って歩いていたら、歴史のコーナーでNTさんが本を探していた。
昼間、図書館が開いているときは図書館で暖をとっていたのだと思う。
その日はそのまま声をかけずに図書館を出た。
しばらくたって図書館に出かけた時に、図書館内でNTさんが木のベンチに座っていた。
その日も声をかけずに、自分が探していた本を見つけて外に出ようとした。
すると後ろからちょっとちょっとと声をかけられた。
見るとNTさんで、外で話したいと言うので、外に出て話を聞いた。
自分が室見川のそばに自転車を停めて、あたりを散歩して帰ってみると、自分の衣類や寝袋を入れたバッグがなくなっていた。
急いであたりを探すが、バッグが見当たらない。
このままでは寝れないどころか、生活が成り立たない一大事だ。
途方に暮れて、図書館にたどり着いて、中に入ろうとすると、なんと椅子に自分のものと思われるバッグが置いてあるではないか。
中を見ると確かに自分の持ち物。
取りに来る人を待った。すると、気の弱そうな若い男が自分のバッグに手をかけて持っていこうとする。
なんやお前は、これは俺のバッグぞとそいつに怒鳴りつけて、一発殴ってやった、あんな気の弱そうなやつが自分のバッグを、ホームレスのバッグをとっていっとったと捲し上げられた。
自分だったら、お前にとっては大したものじゃなかろうが、これには俺の生活が掛かっとるとぞと一発どころか気のすむまで殴り続けたろうにと思った。たとえ相手が反撃しようが、この持ち物がなければ生きていけないのだから。
それだけ言うと、気が済んだのかまた図書館に入っていった。
追いかけていき、私は徳永というものですが、お名前を教えていただけないでしょうかと、思い切って尋ねた。
NTさんはちょっと立ち止まって、N、Nと言うとよと言って恥ずかしそうに図書館に入っていった。
(続く)