ゴマメの呟き・アンモナイトの徒然草 -14ページ目

ゴマメの呟き・アンモナイトの徒然草

他所のブログを2つもっています。ぜひ遊びにきてください。

このお話はフィクションです。実在の人物、実際の事件とは全く関係ありません。




「ポニーちゃん達が、ここを引き上げていく日も、もう真近になってしまったね」

ご両親は、ここを、何時、引き払うと言ってらっしゃった」

「3日後の午後。もう明後日の朝は、家の後片付けがあるから、多分ここにはこられないと思う」

「そう、それじゃー、じゃじゃ馬ポニーちゃんに会えるのは、もう明日の朝だけということ?」

「ごめんね。それが明日の朝はもう来られないかもしれないの。

父と母がね、ここでの思い出に、淳志さんが話していた、例の、宮沢賢治の銀河鉄道の夜に出てくる、ブリオシン海岸にそっくりの場所、ほら、化石の転がっている知多半島の最先端の海岸、そこへ行く話になっているの。

だから、明日は、もし来られたとしても、ゆっくりお話しを、している時間なんかないの」

「じゃー、会えるのは、今日が最後と言う訳」

「そう、ゆっくり会えるのはね。

でも発つ前、お別れの御挨拶には伺うと思うよ。父がそのようなこといっていたから」

「そう、これでまた、この別荘地の住人は、僕一人と言う事になるのだね」

『そうよ、これにて、お邪魔虫のジャジャ馬は、退場することにいたします。嬉しい、嬉しいでしょう。お邪魔虫がいなくなって。

「心かき乱されることなく、しっかり静養なされ」という、月神様の思し召しなるぞ。

ありがたくお受けなされ』と悪戯っぽくいう久美。

でも声は少し鼻に掛かり、語尾は微かに震えております。

「ありがとうごゼエますだ、月神様。しかし私めには、そう言う小憎らしい事をのたまう、かぐや姫様が、傍にいてくださった方が、心が安らぎ,静養になるのでございますが」と冗談っぽく返す淳志。

しかし久美を見つめる目は真剣です

「無理じゃ、無理。わらわはのー、もう間もなく、去らねばならぬ。月の国からの、お迎えが、すぐそこまで、来ているのじゃからな。

そなたも、せいぜい達者でお暮らしなされよ。さらば、さらばー」とおどける久美。

しかし淳志を見つめ返す、久美の目もまた真剣で、潤んでいました。

しばらくの間、二人は言葉を交わす事もなく、ただ見つめあっておりました。

二人の間には、僅かな刺激によって、破裂しそうなほど、空気が張り詰めておりました。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」、

どれほどの時間が経ったことでしょうか。

「フーッ。これからさびしくなるなー」その張りつめた空気に耐えかねたように、淳志が大きく溜息をつきました。

「でも淳志さんも、来年春には復学出来るんでしょ。後、ほんの少しの辛抱よ。

ガンバ!

復学しさえすれば、そこには、友人との交遊も、御家族との団欒も待っているでしょ。

そうなると、私なんかの事は、思い出の中の影法師にすぎなくなってしまうにきまっているわ」

「そんな事はないよ。この夏の、久美ちゃんとの出会は、確実に、僕の青春の一ページを飾る最大の出来事だもの。それも黄金色に輝くね」声は鼻声で、やや掠れて(かすれて)おります

「久美ちゃんこそ、関田村(のちの春日井市)に戻ったら、もう僕の事なんか、蜃気楼のような存在にすぎなくなってしまわないかな」

「酷い!(ひどい)、そんな言い方。私にとって、この夏が、どんな意味をもった一夏だったか、知らないわけでもないないでしょうに。

大きな、大きな思い出が、一杯詰まっているこの一夏の出来事を、忘れるはずがないでしょ。

中でも、特別な存在だった、バイオリン奏者の事は、特にね。

私、あの土曜日のお別れ会で、淳志さんに、教えてもらいながら、皆で歌った“湖畔の宿”、あの歌の事、一生に忘れないと思うな。

寂しい時や、悲しい時、辛い時と言った、心が沈んで耐えられなくなった時には、知らないうちに、あの歌を口ずさんでいるに違いないと思うわ。

だって、あの歌のリズム、壊れたオルゴールのように、繰り返し、繰り返し頭の中で、鳴っているもの」

「僕、久美ちゃんの家へ、手紙出しても良いかなー」

「駄目よ、そんな事。

だって、男性と文通している事なんかが、学校に知られようものなら、大変、下手すると退学、軽くて停学になってしまうもの。

それにね、うちのお祖母ちゃん、これがまた頑固一徹な昔気質の人で、私のような未成年の男女交際については、とても煩い人なの。

だから淳志さんが手紙を下さったとしても、男名の封書は多分没収。私の手元までは届かないでしょうね。

仮に届いたとしても、私から、お返事を返すことはできないわ。

文通なんかしている事がお祖母ちゃんに知られようものなら、私、家に居られなくなってしまうから。

そう言う訳で、私が女学生である間は手紙をくださるのは駄目。絶対に止めてね」

「それじゃ、ポニーちゃんの家に会いにいくのは」

「そんなの、もっと駄目。そんな事をしたら、お祖母ちゃんは、貴女の事を、不良少年と勘違いして、家の敷居を二度と跨がせてくれなくなってしまうから。

もし、淳志さんが、大学へ進学された後もなお、私の事を、覚えていて、会いたいと思って下さったら、その時はお手紙くださるなり、訪ねて来るなりしてよ。

その頃は私も、もう学校を卒業しているから、堂々とお祖母ちゃんにも打ち明けられるし、紹介する事も出来るから」

「冷たいんだなー、ポニーちゃんって。でも、その時は久美ちゃんは、もう結婚が決まっているじゃないの?

一般にこの地方の良家の子女って、女学校を卒業すると、すぐにお見合いさせられ、婚約、そして結婚というコースを歩まされるのが普通だから」

「大丈夫よ。私、お婆ちゃんから何と言われようと、それだけは譲らないから。

絶対待っている」


続く


「ねー、お父ちゃん、ここを引き払う前に、一度くらい、知多半島の先端、師崎まで、足を延ばそうよ。お母ちゃんもいいでしょ」。

「良いけど、遠いよ、あそこまでは。電車も常滑までしか通っていないしね。そこに何かがあるの?」

「それがね、淳志さんの言うには、そこの突き出た崖下には、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」の中に出てくる、ブリオシン海岸を想わせるような化石の見つかる石の海岸があるのだって。

切り立つ崖下にある、その石の海岸に立って、太平洋に連なる真っ青な海を見ていると、いつの間にか自分も、あのジョバンニのように、銀河鉄道に乗って、無数の星屑の光っている、大空のブリオシン海岸にやってきたような気分になれるというの」

「良いよ。でも、すぐ別れなければならない私達には、それって、ちょっと酷い(むごい)かもしれないねー。

3人とも辛くなるといけないから、心の奥深くに抱え込んで、お互いに、触れないようにしている、別れの辛さや、悲しみが、そんな所へ行けば、ジョバンニの別れの悲しみや、孤独の辛さと交錯して、一気に吹き出して来そうな気がするけど、それでも良い?

お母ちゃん、貴女はどう思う?」

『私、 私は別にかまわないわよ。そんなロマンチックな場所なら、是非行ってみたいわ。

どうせ、毎日、毎日別れの辛さに脅えながら過ごしているのですもの。今更そこへ行ったからって、どうと言う事もないわ。

それよりお父ちゃんこそ、耐えられないのでは?

私はね、「私達は、兵隊さんのように、戦場にいくわけではない。

勤めさえ果たせば、無事に日本に帰ってきて、また会うことができる」と、自分で、自分に言い聞かせるようにしている。

そうじゃないと、耐えられないからね。

だから、今は、せめて、こちらにいる間だけでも、出来る限り、久美ちゃんの傍にいて、親子三人で過ごした時間の思い出を、残そうと思っているの。

親子離れ離れに過ごさなければならなかった、この10年余の孤独と寂寥感を、少しでも、癒すためにもね」


その23

「ただ今」

「お帰り。楽しそうな顔。今日も会ってきたみたいね」

「ウン、今日はね、この辺りで、一番アサリが獲り易い所を教えてもらったの。は-い、お土産」

「マア、こんなに沢山。久美ちゃん一人で」

「そうだよと、言いたいところだけど、ほんとうはね、淳志さんが獲った分も、はいっているの。

彼、そんなに沢山は、いらないからと言って、ほとんどくれたから」

「ほんと、あんたがせがんで、殆ど全部、貰ってきたんじゃないの?」

「フ、フ、フ・・、そんなことないもん。くれるというから、しかたなく、もらってやっただけだもん」

「それじゃ朝食にしましょうか。お父ちゃんを起こしてきてくれる」

「分かった。お父ちゃん。起きて。こらー、寝坊し過ぎだぞ。早く起きろー。起きろー、寝坊すけ。早く起きないと擽る(くすぐる)ぞー」

「分かった、わかった。降参、降参。今起きるから。

毎日、毎日、久美ちゃんに付き合って、海に山にと行かされているものだから、もう、草臥れてしまって。

それにしても久美ちゃんはすごいなー。今朝だって、もう散歩してきたんだろ」

「そうよ。私なんか、毎日、毎日お百姓仕事していて、鍛えられているから、そこら辺にいる男なんか顔負けよ」、

「お父ちゃん、この子の話、聞くのは半分で良いのよ。早起きする訳はねー、他にもあるのですからね。お父ちゃんに、ばらしちゃおうかなー」

「いやらしいわねー、お母ちゃんったら。女同士の秘密と言う事になっていたじゃないの」

「知っているよ。そんな事。いまさら教えてもらわなくても。

この時間に散歩にでると、途中、淳志君と会えるからと言う事だろ。

別にお母ちゃんから教えて貰わなくたってとっくの昔から知っているよ」

「あれ、ばれていた。おかしいな。どうしてばれたのかな?」

「そんなの、久美ちゃん見てりゃー、すぐに察しがつくよ。

何しろ久美ちゃんは、頭隠して尻隠さずだから。

何かと言うと淳志さんが、淳志さんがといって、話の中に、しょっちゅう、彼の名前が出てくるんだから」

『そうかー、お父ちゃんにまで分かってしまっていたのか-。

でも、別にお父ちゃんに隠さなければならないような、変な関係じゃないから、まあ良いか。

だって淳志さんは、何でも知っている大人だし、私は何にも知らない子供だもの。

彼から見れば、私なんか、てんでガキンチョ。女としては見てくれていないと思うなー。

なにしろあいつ、私の顔をみるといつも、「じゃじゃ馬、仔馬、仔馬のポニー」と呼んで、からかってくるくらいだから。

きっと面白いガキンチョくらいにしか、思われてないわ。

まあ、こんな真っ黒ケの、跳ねっ返りじゃー、そう思われても、しかたがないけどね。

でも、私としては、その分、気取らなくてもよいから、楽と言えば楽だけどね』

「そうかね。淳志君も見る目がないなー。久美ちゃんが、ハクチョウの子供だと言う事が分からないなんて」

(註:アンデルセン童話、みにくいあひるの子に出てくる、白鳥の子供)

「違うよ。淳志さん、私の事を、買ってはくれているのよ。

だって、これからの女性は、知識も身につけなくてはと言って、いろいろな事を話してくれるのよ。

ただ、私が、こんな真っ黒な上、幼稚なものだから、大人の女としての魅力は、感じないみたい」

「お母ちゃんも、久美ちゃんも、ベタ惚れな所を見ると、よほど好青年らしいね。で、淳志君は将来、何になる心算なの」

「お父さまの後を継いで、お医者さんになるつもりみたいよ。

だから、官立名古屋医科大学、もうすぐ名古屋帝国大学になるそうだけど、そこを狙っているんだって。

できれば、国木田独歩のように、医者をやりながら、小説を書いて、自分を訪れる人達に、身体の健康を取り戻してやるだけでなく、広く人々に、心の健康も取り戻してやれる、そんな人生を歩みたいとも言ってらっしゃったわ」

「そう、立派だねー。お父ちゃんも、一度会ってみたいなー」と父親、哲。

「良いよ。一度聞いてみるね。なんなら今度の土曜日、英子さんがまた、こちらにいらっしゃるそうだから、その時、今度は、あの人達、家へ呼んだらどうかしら。いけない?ねー、お母ちゃん」

「食事の後、皆で、一緒に、トランプ遊びだとか、百人一首取りしようよ。

そうそう、淳志さん、バイオリン弾けるといっていたから、あいつの演奏で、合唱会開いても面白いとおもうけど」

「そうね、私達も、間もなくここを、引き払っていかなければなりませんから、最後に、みんなでワイワイ、思いっきり騒ぎましょうか。

幸い、こんなご時世だから、ご近所の別荘、何処も使われていなようですから、目くじらを、立てられる心配もありませんしね。

そう言えば、お父ちゃんもハーモニカが、とても上手いのよ。お父ちゃん、ハーモニカ持ってきてなかった?」

「多分カバンの奥にあったと思うよ。たしか、久美ちゃんに、お父ちゃんのハーモニカの腕前、披露したいと思って持ってきたはずだから」

「だったら、もっと早く出してくれればよかったのに」と口をとがらす久美。

「だって、久美ちゃんに、毎日、毎日、あちらこちらと、引っぱりまわされていたから、ハーモニカなんか吹いている暇なんかなかったじゃないの」

「そうだったわね。毎日、随分歩いたものね。蝉取りにも、魚釣りにも連れて行ってもらったし、水泳も、あさり獲りも、水族館通いもしたし、普通の子供が、子供時代にお父ちゃんに遊んでもらったのなんか比べものにならないくらい、遊んでもらっちゃったもんね。

よーし、それじゃ、今度の土曜日の夜は、お正月のように、思いっきり騒いで、食べるぞ-、食べ物だって、もうこの後、何日もこちらにいないのだから、そんなに残しておく必要ないものね。

ご馳走作りなら、私も手伝うから、まかせて」と久美の弾んだ声。

「そうね、・・・でもそれより、子供たち3人には、会場作りの方、お願いするわ。

思い出に残るような雰囲気作り頼むわね。

淳志さんって、美術の方も詳しい方だから、そう言うのって、得意じゃないかしら?」

次回に続く




このお話はフィクションです。似たような,名前、事柄が出てきましても、偶然の一致で、実在の人物、実際の事件とは全く関係ありません。又、実在の地名が出てきましも、フィクションの中の一場面として利用しているだけで、実在の土地、人物、家名とは無関係です。

 

その20

「お母ちゃん、今度の土曜日、あの人、ほら、山の内淳志さん、あの人の所へ、英子さんとおっしゃる妹さんが、遊びにいらっしゃるというの。

その方、学年は一年下だけど、私と同じ、名古屋第一高等女学校の学生さんだって」

「だから三人で、夕ご飯一緒に食べないかと言われているのだけど、行っちゃ駄目?」

「久美ちゃん、貴女、タオル返しに行っただけじゃなかったの。何時の間にそう言う話になったのよ」

「こういう事になると思ったから、私は反対だったのに。

哲さんったら(久美の父親)簡単に良いというものだから。

もし病気がうつったらどうするつもりなの」

『そんな事言ったってさー、タオル渡した後、そのまま、「ハイ、さよなら」なんて言う訳にはいかないでしょ。

淳志さんが、いろいろ話しかけてこられるのに、それを無視して帰ってくるなんて、そんな失礼なことできないわ、私」

「それにさー、お母ちゃんが心配していたあの病気の事だけど、もう殆ど良くなっているのだそうよ。

何でも、来年4月には、学校に復学するつもりだと言ってらっしゃったわ。

だから行ってもいいでしょ」

「そりゃー、妹さんもいらっしゃると言うのならね。でもそれなら、一度向こうのご両親にもご挨拶しておかなければならないわね」

「またまた、ややこしい事を。何度も言うけど、別に淳志さんと、今後、ずっとお付き合いしようと言う訳じゃないのよ。たまたま、遊びに来ている先での、一時の交流にすぎないのよ。そんな形式的な事、必要ないとおもうけどなー。

大体ね、あそこの家、とても自由な家風で、子供のする事に、あまり親が口出しされないそうよ。

だから、お母さんが、そんな電話をしたら、かえって、びっくりされてしまうのではないかしら」

「へー、そうかねー。でもお母さんだって、淳志さんってどう言う人か、一度くらいは、見ておきたいなー。それなら、3人でのお食事会の時、お母ちゃんも、ちょっとだけ顔だしたいのだけど、駄目?」

「そんな、偵察するような事をしなくても、淳志さんって本当にいい人なのだけどなー。

お母ちゃんなんか、直接会ったら、一言、話しただけで、もう、その人柄に惹かれてしまうくらいの人よ。

何しろ大変な、物知りで、その上思慮深く、博愛精神に富んでいらっしゃるのですから。

私、淳志さんって、人間としては、宮沢賢治さんのような人だと思うわ。

ただ療養中の身だから、今の所、宮沢賢治さんのように、誰かの為に、直接手を貸すような事はされていないけど。

だから私、とても尊敬しているの」

「フーン、大変ないれこみようだけれど、そんな素晴らしい人なの。だったら余計にお会いしたいなー。

お母ちゃんが腕によりをかけて、ご馳走作ってもっていくけど、それでどう?」

「多分良いと思うよ。聞いてみるけど。でも妹さんもご馳走持っていらっしゃるそうだから、あまり沢山だと、食べきれないかも。

それに、こんな時節だから、うちだって、うちの食べる分の、食材を集めるのに四苦八苦しているような状態でしょ。それなのに、そんな無理しなくても良いのに。

もし食べ物を、作って来てくれるとしても、ちょっとだけで、良いよ」

その21

「英子さん、羨ましいなー、良いお兄さんを持って。でもお母さんも分かってくれたでしょ。淳志さんの人柄。私が言っていたとおりの人だったでしょ」翌朝、朝食の手伝いをしながら久美が切り出しました。

「そうね。よくわかったわ。確かに、真面目で、優しくて、人柄は信用できそうね。

それに物知りで、話題も豊富だから、どれだけ話をしていても、飽きない人だったわねー。

昨日は、お母ちゃんも楽しくて、つい長居してしまって、悪い事したわね。

後で、何かおっしゃっていませんでした?」と母親。

『別に、何も。それどころか、英子さんなんか、お母ちゃんの事が大好きみたいで、「今度遊びに来る時も、お母さんも連れてきてよ」、なんて言ってらっしゃったわよ』

「そう、それなら良かった。若い貴方達の邪魔をして、迷惑がられたかなと思って、少し気になっていたんだけど。

そうなの、そう言ってくださったのね。

実はね、私も英子さの事も大好きなのよ。

だって素直で、とても可愛いい人ですもの。

あんな女の子が、もう一人うちにもいたら、どんなによかったかなー、なんて、つい欲の深い事考えちゃった」

「でもこんな事言うと、また煩がられる(うるさい)かもしれないけど、あの家で、部屋に上がるのは、英子さんか、どなたか、お身内の方がいらっしゃっている時だけになさいね。

どんな良い人でも、男の人は、男の人だからね。男の一人住まいの所に、部屋に上がり込むような、はしたない〈不作法でみっともない〉真似だけは、絶対しちゃ駄目よ」

「分かっているって、心配しなくても。そう言った女の嗜み(たしなみ:心掛けとか、つつしみの意)については、おばあちゃんから、耳に胼胝が(たこ)できるほど聞かされているから」

続く