皆様 こんにちは。日頃からマーケットをウォッチしながら、投資活動も行っている身として、「にいがた経済新聞」さんにコラムを書かせて頂きました。ぜひご覧ください。
今後もこうした分野でも積極的に意見を発信して参ります。

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「億り人」ならぬ「岸り人」が急増。歴代3位の月間下落率「岸田ショック」の爪痕。

年初から世界的に株式市場が暴落に見舞われている。昨年末以来、米国はじめ主要国が金融正常化、すなわち「テーパリング」によって、政策金利の引き上げと中銀の資産縮小の見通しを示していることが根本的な原因ではある。

しかしながら、日本は他国と少し違った要因も加わって、東証マザーズ市場では歴代3位の月間下落率を記録した。すなわち、「岸田ショック」と呼ばれる岸田政権の打ち出している「新しい資本主義」が世界中の市場関係者の強烈なマイナスのインパクトを与えているという第二の要因である。

あの東日本大震災から、まもなく11年を迎えるが、あの時は民主党政権末期と重なり、株式市場も震災後に暴落した。それでも、月間下落率はー8.15%。震災直後にはー31.6%を記録したが、2011年3月末までにはある程度持ち直した。
ところが、今回の「岸田ショック」はこの年明け1月の下落率はー23.3%。最大下落率はー27.2%となった。2月に入っても、特に「グロース株」を中心に株価の持ち直しは見えていない。

東証マザーズ市場の過去最大の下落幅を記録したのは、2008年10月のリーマンショック。最大-36.6%を記録した。その次が2013年6月のバーナンキショック。最大-36.4%を記録した。

今回の「岸田ショック」は、政権発足以来、マーケットのみならず国民にもなかなかその真意が伝えきれていない看板政策の「新しい資本主義」が、「資本主義」の中核的なシステムである金融市場に対して、厳しいスタンスを取るものではないかと受け止められているからである。

これには、度々岸田首相が、施政方針演説など国会審議の場で、「企業の四半期決算の見直し」や「金融取引」などへの増税など、世界の潮流と逆行する方針を示していることも悪評判をサポートする形となっている。

そもそも、改革色の強くない岸田政権が発足した直後、とある世界的なヘッジファンド関係者は「日本売り」を示した。そこにこうした資本主義の見直し、計画経済まで行かずとも、国家がその自由な市場を規制するのではないかと受け止められる政策を打ち出したことで、日本売りに拍車をかけている。

特に、「東証マザーズ市場」は、バリュー株と異なりグロース株が多い市場である。すなわち、年齢が比較的若い創業者がいて、成長著しい新しい分野・ニッチ分野を開拓する新興企業が多く上場をしている。投資家も、配当利回りというよりも、PERなどの期待値やトータルの成長性の高さを見て、リスクを取って投資をしているが、信用倍率という信用取引での売買動向などのデータを見ても、グロース株投資中心の投資家達は相当の損失を抱えたまま2月に突入している。かつてはひと財産築き「億り人」となった投資家も、今では多額の損失を抱えて「岸り人」と自嘲して呼び合っているようだ。投資はしていないが、コロナで失業をしたり、所得が減っている人達も「岸り人」と呼んでいるケースもある。

折しも、コロナ禍以降、株式投資がネット証券口座開設の気楽さと相まって個人投資家が増えた。ビットコインの盛り上がりなどで、「億り人」を目指す個人が増えた。今回の岸田ショックで、損切りできずに塩漬けのまましばらく株式市場から遠ざかる投資家が増えることは、新興企業への資金流入も抑え、日本がただでさえユニコーンなどの企業が育だたない現状に拍車をかけてしまうリスクもある。

今後も原油高をはじめとするインフレ圧力や、金利高、ウクライナ情勢など市場を取り巻く環境は大変不透明だ。こうした中、日本の政権がこうした不透明感に拍車をかける政策を取り続ける政治リスクが高いということを念頭に置きつつ、個人個人でマーケットの情報をきちんと踏まえ、「岸り人」にならないようにする資産防衛を始めた方が良いだろう。

そして、野党も、日本が再び失われた時代に戻らないよう、岸田政権の経済金融政策に対してきちんとした対案を示す力が問われている。

今年は、夏に参院選が実施されるが、経済状況によっては一波乱もあるだろう。その中心のエネルギーになるのは、間違いなく「岸り人」達のマグマのような怒りと不安だろう。

元衆議院議員 個人投資家 石崎徹