東日本大震災から8年目を迎える今日、政府主催の追悼式が国立劇場で行われた後、夕方に児童虐待罪勉強会を開催しました。

 

有識者ヒアリングの第3回目です。

 

今回は、信州大学大学院法曹法務研究科教授の三枝 有 先生と専修大学名誉教授の岩井 宜子 先生のお二人の講師にお越し頂きました。

 

岩井先生からは、『立法論としての「児童虐待罪」』と題してお話頂き、児童虐待は世界的な病理であるとした上で、日本の法制と児童虐待行為に対する刑事規制とそのあり方、また「虐待傷害罪」や「虐待致死罪」を加重類型として設ける必要性と妥当性についてのお考えを伺いました。

 

三枝先生から、『児童虐待罪創設・厳罰化に向けての刑事法制のあり方』についてお話頂き、厳罰化の意義と厳罰化の効果から児童虐待罪の創設は非常に有効であること、その立法化における構成要件の注意点、また虐待後の親子関係の修復などを中心にお考えを伺いました。

 

今日の講演の質疑応答の後、緊急提言案をご参加の先生方にお諮りし、被害の実態把握や被害者支援などをはじめ、様々なご意見を頂きました。

 

主なやり取りは以下のとおり

 

・結局、傷害致死罪しか適用されない。保護されるべき親から虐待を受ける子どもの苦しみ。重大な法益侵害。

 子どもが立ち上がれないほどの虐待は、死は予見されていたため殺人罪が適用されても良いのではないか。

判決を見ると、傷害致死罪が多い。殺意を立証するのが難しい。重大な法益侵害、継続的な虐待については、新たな類型を設けても良いのではないか。子どもの無念さ。

傷害致死罪の最高刑を無期懲役に引き上げることも検討すべきでは

・厳罰化は刑罰の適正化。国民の意識も高まっている。「法と感情」というカリキュラムが米国の大学にはある。国民の虐待への嫌悪感は十分立法理由がある。

・しつけと言われると児童虐待は軽くても良いのではないか、というのは逆。どれを保護法益にするかは非常に重要。

長野県には淫行条例があるが、今まで処罰されていない。作った構成要件次第で、処罰されなかった事例もある。検事側の方が起訴を躊躇う。折角作った法規が活用されないのは意味がない。

・ドイツ刑法のように、規範意識形成機能。国民の中に倫理観を植え付けよう。環境も刑法の保護法益もある。

野田市も、いじめではなく、わるふざけ、という論理と同じ。しつけと言われたら、しつけは目的が正しくても、手段が間違っているということが問題。被害者は被害者ではなく、自分は正しい、という犯罪者は自分を正当化してしまう。

・虐待をずっと受け続けた子どもにおいては、苦痛と感じなくなる。

・立件することに繋がる立証し易い規定を。米国は特別な意思はいらない。虐待というものを認識すれば認めている。

・児童相談所では間接罰しかない。行政処分を出していく。あくまで刑法規定に一本化すべき。

・被害者学的観点も重要。修復的手法の場合、自分は悪いことをやったんだとハッキリと認識させるべき。分離する人が児相で、統合する人が児相の人で同じだと信頼関係を被害児と作れないのではないか。分けるべきはないか。

イギリス。緊急介入。警官が入って分離する。警官の方が適しているのではないか。ポリスプロテクションも重要。

・刑事の視点で考えると、警察が動きやすい方向にすべき。児童虐待の悲惨さ。あくまで刑法に入れないと安心できない。

・刑法の感銘力。「制裁」だけでなく、「修復」のためには、警察・児相が両方間に入るべき。完全に修復的手法にするということでもなく、また制裁だけを主眼に置いて大理論の転換ということでもなく、虐待の重度化になる前に気付かせるために制裁と修復が重要。

・社会が児童虐待罪について、感銘力を持つ可能性が高い。罰則と間接罰を入れて欲しい。間接罰というのは、児相で禁止命令違反・接近行為違反を簡単に貸すことが出来るようにすること。軽いものになるが。淫行条例で出てくるのは、深夜連れて歩くだけで、簡単に処罰できる。簡単な罰金刑。行政行為に実効性を持たせるべき。

・体罰について傷害となると刑罰が科せられるが、正座をさせた、水を浴びさせた、という場合は暴行で捕まえて傷害認定をするか。ストーカー禁止などは接近禁止だが、行政罰で積極的に活用すればエスカレートを食い止めることが出来るか。予防的間接罰を重くするやり方もある。

・2000年になって、「虐待」という行為の認識がやっとスタートしてきた。尊属殺事件でも、悲惨な虐待事件だったが、当時はそういう認識はなかった。少年院の子ども達の虐待経験の割合は所長の証言では80%。しかし、なかなか確定しづらい。

・福祉的な形で、児童虐待福祉法が出来てきたが、名前のとおり福祉。統合は無理というものが多い。

保護責任者遺棄致死罪というのは、パチンコ放置のように、「未必の故意」になりにくい。

・心理的虐待は児相が適している。性的虐待は児相では足りない。

大阪府条例。児童虐待罪は有難いこと。国民の意識も向かっているいい機会。規範意識をつくべき。

・子どもの命は将来の可能性もあるし、重い。家族殺は軽くなる傾向がある。

・異常人格の疾患のデータ、修復率のデータも集めるべき。児相のトップは医者の人が多いので、観点としてはあると思うが、性犯罪の場合、米国ではそういう欲望が出てくると、薬を打つ。警察の方で、指定機関で薬物注射を打つ。カリフォルニア州ではGPSを付ける。一定のところまで来ればコントロール出来るのでは。

・加害者は被虐待歴があるケースが多い。異常人格、覚せい剤中毒もある。責任能力もないと言われている。

・加害者は父親だから、母親は関係ないといのが多かった。が、今回の野田市では、母親は防止しなかったということで、共助。児童虐待を犯罪類型とすることで、共同正犯が成立する可能性が出てくる。集団強姦罪は無くなったが、処罰規定を上げたから消したのは、共犯を認めやすくなった。

・保護責任者遺棄罪は、パチンコで車で子どもを放置する、というのは分かっているはずだが、殺意認定はされない。これは意外と難しい。そういう状態を置くことが虐待だよ、というのは正犯にもなりやすいし、共犯にもなりやすい。

・米国のとおり、虐待が悪い、と認識されると、適用されやすくなる。重大な犯罪として処罰して良いのか、というと、警官の判断で子どもを引き取れる。元に戻すまでの期間は児相みたいな機関で検証する。どういう保護が重要か。

・児相の対応を見る、ということになる。が、警察は警察で動いてよいのではないか。

・虐待の連鎖。虐待を受けた子の支援が重要。女子少年院に入ってくる子達も虐待歴が多い。80%もいる。育て直しが必要。親に愛されないと、安心感がない。社会に敵対感情を持ちやすい。非行化した少年は少年院がある、保護された子達は児相などで対応がない。性的虐待は、精神的ダメージが大きすぎる。性的被害を受けた人は、性産業に行きやすい。子どもの保護のための医療的措置が必要。

・虐待を受けた後、虐待を受けた子達は、大人になった後に、社会の方でサポートすべきかが非常に重要。

 

 

 

これらのご意見を踏まえて修正し、明朝の会合で提言書を最終確定したいと思っております。明日から、この提言書を各所へ申し入れを行います。

 

実は、今日のWebデイリー新潮に、こんな記事が掲載されました。『「心愛さん」虐待死事件 3回逮捕の父親に下されるあまりに軽い“量刑”への疑問』「国は「児童虐待罪」を検討?」

https://www.dailyshincho.jp/article/2019/03110701/?all=1&page=2

 

近年の児童虐待「傷害致死」と「殺人罪」の判決例の表が掲載されていますが、これについて、「2つの表にある10の判決を見れば、最年少の被害者は生後3か月、最年長でも僅か9歳に過ぎない。大人による理不尽な暴力で命を奪われた、という事件ばかりだ。しかしながら、表のどこにも「死刑」の文字はない。」と記されています。

 

国民の皆さんからのこうした声にも耳をしっかりと傾けながら、提言の申し入れ後も多面的に勉強会の開催を継続し、児童虐待ゼロに向けて精力的に活動して参りたいと思います。

 

児童虐待罪創設・厳罰化に向けての超党派若手勉強会 呼びかけ人代表

衆議院議員 石崎徹